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【第1夜㉙ ~「神」の目的と招集命令~】


麓に降りた時にはすでに日が沈みかけていた。夕日にあたる灰色の雲が、オレンジに染まり、とても幻想的な日没を迎える。


「ここらへんで野営しよう。準備を頼む。」そしてフィンは、各隊の隊長と私、凱、マグヌス、アラベル、ピートとアイシャを集め、これからの作戦について話を詰める。


「団長。」アイシャがフィンに話しかける。


「どうした?」


「実は…、思い出したことがあるんです。」訴えるような眼で話すアイシャ。


「なんだ?」


「はい、私がこの山に連れてこられてからの事…。あの洞窟の中で、あの女と男たちが話していたこと…、だいぶ思い出しました。」


「なんだって!やったな。話してくれ、アイシャ。」フィンの目は好奇心旺盛な子供のようだ。


「はい。まず私がここに連れてこられた時、私の他に数百人があの洞窟に入れられました。そしてたくさん並べられている石を順番に持たされ、石との適合が見られる人は、その列からまた別の場所に連れていかれていました。

 適合しなかった人は、何かガラスのような透明なケースに入れられて…、それからどうなったかは分かりません。ただ戻る場所は抜くなという黒ローブの男の声が聞えていました。だから私は何をされるのか分からず、不安と恐怖の中でそこに並んでいたんです。


 私が石を持つ順番になって、黄色の石を持ったんですが…、その石が突然光り出して…。私はそれからまた別の小さな部屋に連れていかれました。そして、石も私も特別なケースに入れられ…、そこから先は何も覚えてません。ただ、そこにいたのは、あの頭のおかしな男女と…、もう1人いました…。顔を見たはずなんですが、そこだけ思い出せなくて…。」アイシャは顔をしかめて苦しそうに話す。


「いや、すごい情報だ。ありがとう。これでだいぶクリアになった。また、何か思い出したら言ってくれ。」フィンは穏やかに言う。


「はい。」フィンのその表情に少し安心したのか、先ほどまで緊張し続けていたアイシャの表情も柔らかくなる。


「凱の読み通り、あの前騎士団邸は実験場だったんだな…。あれだけの広さだ…。想像以上の人たちが連れてこられた…。この星の人だけじゃなく、他の星の人も…。」フィンが真面目な顔で話し始める。


「そうだな。あのファータとかいう星の人間のように…。」マグヌスも続ける。


「だとすると大規模ですね。5つの星の人たちを片っ端から確認して…。」ピートは怖くなって、アイシャの手を握る。


「それにしても…。そこはもぬけの殻だったんだろう?拉致された人たちはどこに行ったんだ?それほどの人数を一気に移動なんてさせられないだろう…。」マグヌスは眉間にしわを寄せて言う。


「確かにそうです。私が見た限り何千、何万?という人達がいたと思います。確かに一昨日まではいたのを私も見ました。」アイシャが言う。


「石の力?魔法?神術?どれかを使えば可能なんだろうか?」フィンは凱に聞く。


「すみません、はっきりとは分からないですが…。ただ、俺とか、莉羽位の能力があれば可能かもしれないです…。」


「だとすると、とてつもない力を持つものが敵にいるということになるな…。」フィンは少し声を落とす。


「恐ろしいですね…。莉羽や凱レベルの敵…。考えただけでも鳥肌が立つ。」マグヌスは私と凱の方を見て、少し笑いながら言う。


「人を化け物みたいに言わないでくださいよ。」私は頬を膨らませながら言う。続けて、


「適合しなかった人に関してですが、何をしようというんでしょうね?適合しなかった人が戻される…、戻された人に共通しているのは、帰る場所以外に記憶がない。ん?待ってください!さっき記憶を抜くって言いましたが…、記憶を吸い取るという風にも考えられますか?」私は言いながらまたもや自分の発言に驚く。


「記憶を吸い取る?」フィンは驚く。


「人々の記憶に何かあるとしたら、その情報が欲しいとか?」凱が続ける。


「だとしたら、何の情報が欲しいのかしら?5星全ての人の共通の記憶?」アラベルはそう言って考え込む。


「凱の言う通り、その「神」という人の目的が人々の記憶、情報だとしたら、この先ずっと拉致事件は続いていくのかもしれないのか…。」マグヌスは久しく剃ってない伸びたあごひげ触りながら話す。


「もしそれが目的だとすると…、人々の記憶と石の適合者を見つけ出すことで、何がしたいんだろう…。」私は自然に小声になる。


「とにかく、国王に会って話がしたい。偵察を…。マグヌス、お願いできるか?」フィンが尋ねる。


「顔が割れてるのでなかなか厳しいけれど、行ってくる。」マグヌスがちょっと不安げに言うとフィンが、


「大丈夫!その伸び切った髭ぼうぼうの顔は、誰にも気づかれないよ!頼んだよ。」と笑って言うのを、仲間たちがこっそり笑って見ていたのは言うまでもない。


すると遠くから、

「団長、団長!」近づいてくる団員の声が聞こえる。


「どうした?」


「先ほどこの辺りを見回っていた国王の私兵をとらえたところ、国王からの招集命令が私たちに出されたとのことです。」


「なんだって?それは正式なものか?」


「はい、国璽が…。」と言ってその文書をフィンに渡す。フィンはそれを読んで驚きの表情を見せる。


私たちの中に緊張が走る。そして、読み終わった文書を置き、一言。


「わかった。ここにみんなを集めよう。」


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