【第1夜㉖ ~秘密の階段~】
【前回より】
「あっ、はい、何となく…。ここら辺に地下への階段があったように…。」と言いながら進んでいくと、私たちのいる通路の床が抜けて、全員真っ逆さまに落ちてしまった。
しかし、誰1人怪我をせず、それに驚いたフィンが、
「今、上から落ちたのに、なんで普通に立ってるんだ?俺たち…。」気付くと、全員が地に足をつけて立っている。
私は凱を見る。凱は私の視線に気づき、頷く。
「魔法で?」私が聞くと、
「ああ。」凱は答える。
「えっ?今のも凱が助けてくれたのか?」フィンが驚いていると、仲間たちが感嘆の声を上げる。
「頼もしいな、凱。ありがとう。」無邪気に笑うフィンだが、自分の力が覚醒した自信に満ち溢れているせいか、普段なら大騒ぎするはずのイレギュラーな事態にも、意外にも落ち着いている。
※※※
私たちの落ちた場所は、倉庫なのか様々なものが置いてあった。1つ1つ見回すが、これと言って手がかりになるようなものはなかった。フィンは棚の上に置いてある置物を指さして、
「こういうシチュエーションってよくあるよな?この置物をずらすとか、棚を動かすと階段が現れるとか…。」フィンは、楽しそうにその部屋のあちこちを見て回る。
私はフィンのそんな様子を見ながら床に落ちていた真っ黒な石を拾い、机の上にある天秤の片方にその石を置く。すると、その天秤がゆっくりと傾き、そのスピードと同じ速さで床の一部分がスライドし、地下への階段が姿を現す。
「へっ?」私は腰を抜かして間抜けな声を出す。
「莉羽、やるな!」フィンが少し悔しそうに言う。するとアイシャが、
「この下に巨大な洞窟があるはずです。」
「この奥にか?」フィンが聞く。
「そうです。とてつもなく大きな洞窟です…。」そう言うと、アイシャが突然頭を抱える。心配したピートが駆け寄りアイシャに話しかける。
「どうした?アイシャ。」
頭を抱えながら、
「今、記憶が…、思い出せそうなんですが…。」苦しむアイシャを囲みながらも、何もできない私たち。
「さっき話していたんですが、操られていた間の記憶が、さっきのお姉男の衝撃で少し取り戻せたそうなんです。でもまだ思い出せない部分があるようで…。その記憶が戻りつつあるのかもしれません。」ピートがアイシャを抱き寄せながら、皆に説明する。
すると苦しんでいたアイシャが一言。
「人がたくさん…。うっ。」そう言って、また苦しみだすアイシャ。
「アイシャさん?」
「ごめんなさい、大丈夫です。でも…、もう少しで思い出せそう…。」彼女は苦しみながらそう言うと、再び頭を抱える。
「そうか…。無理はしないで大丈夫だ。でも…、人がたくさん?まさか拉致された人がいるというのか?とりあえず急ごう!」
私たちは奥へ奥へと進んでいく。




