【第1夜㉕ ~からくり~】
「まず、私が攻撃した時、お姉ミカは、あの肉体をすでに幻影のようにイメージ化していました。だから実際には死んでいない。でも凱は、ミカは死んだのだと思い込んでいる事をミカにアピールするために、あえて幻影のミカにとどめを刺しました。
実際のミカは、私が最初の呪文を唱えている時に、すでにウィンダンさんを標的にしていたのですが、その時点で私はウィンダンさんをその場でイメージ化して肉体は闇に隠しました。だから一見、ウィンダンさんは、消えてしまったように見えたと思います。まんまと奴らは、それに気づかず、ウィンダンさんは死んだと思っていた。
そのあと女が私に向けて弓を射るときに、私のイメージの中に、ウィンダンさんを攻撃した直後拘束した本物のミカを閉じ込めたので、彼は結果的にサンドラの弓矢で殺されたというわけです。」
「ああ、そうなのか…。なんだか難しいな…。みんな、分かったか?」フィンが仲間に聞くが、「?」な顔をしている団員に安心したフィンが、
「まっ、結局は敵を倒したってことだよな?」理解していないことを笑ってごまかす。
「はい。」私は笑いながら答える。そして振り返って、
「それより…。莉奈!なんであなたここにいるの?」私は何事もなかったかのように、その場になじんでいる莉奈に話しかける。
「私にも分からないの。なんでここにいるのか。家で寝ていて起きたらここにいて…。しかもゲームでも夢でもない本物の戦いの真っ只中…、死ぬかと思った。でも凱君が助けてくれた。ありがとう、凱君。」そして凱に寄り添う莉奈。私は少しイラっとするが、怒りを鎮めてミカの持っていた石を観察する。それを見た団員が、
「この石…。石の所有者自身は肉体のイメージを残して、そこから実体が抜け出し、その実体は他人に入り込んで、その人を支配する力があるんですね。」石の力に驚いている。
「そう、その通りです。でも莉羽は、もっと高度なことができる。肉体から出たミカを異空間で拘束して、自分のイメージに封じ込めたんです。」凱が付け足すと、
「莉羽さんはもしかして…、この世に存在する全ての石の力を使えるんですか?」団員が目をキラキラさせて聞く。私には分からないので、凱に助けを求めると、
「おそらくそうだと思います。そして莉羽が一度手に取れば、その石の邪悪な力は祓われ、さらに石自身の力を増す。さっきの黄色の石のステータスもかなり上がりました。」凱は全員に伝える。名実共に最強の私が、自分たちを守ってくれるという精神的な支えは、どんな術や魔法よりも士気を高めてくれる。
「ほんとにすごいな…。」
「奇跡のような力だ。」
「最強ってかっこいいな。」
誉め言葉の嵐に私は少しくすぐったくなって、話題を変える。
「ところで…、団長。もしかして、覚醒しましたか?」私はさっきのフィンの戦いの様子から尋ねる。
「さっきのは、やっぱりそういうことか…、自分の中からとてつもないパワーが放出されているような気はしたんだけど…。実は怒りに我を忘れて覚えてない…。」フィンは照れくさそうに、でも戸惑いながら話す。
「えっ?そうなんですか?あんな早い攻撃見たことないですよ。もう最後の方は剣の動きが速すぎて何も見えないくらいでした!」団員が誇らしげに話す姿を見て、フィンもどや顔で、
「この先の敵はこのフィン様に任せろ!」満面の笑みで続け、
「先を急ぐぞ。外の様子はどうだ。凱?」と意気揚々と話す。
「今のところ、変化はないようです。」
「そうか、じゃあこの先行き止まりだけど…。アイシャさん、何か覚えてる?この先どうなってるか。」フィンが尋ねる。
「あっ、はい、何となく…。ここら辺に地下への階段があったように…。」と言いながら進んでいくと、私たちのいる通路の床が抜けて、全員真っ逆さまに落ちてしまった。




