【第1夜㉑ ~「石」の共鳴~】
私が実戦を経験し始めてからの事をいろいろ思い出していると、
「そう言えば、『宿世石』どうした?」凱が何かに気づいたのか、突然聞いてくる。
「あっ、このままポケットに入れてた。危ない、危ない。」とポケットから取り出すと真っ赤に光っている。
「あれ?いつもこんなに光ってないのに…。なんだろう…。」と言いながら袋に入れようとする私に、
「そのままでいい。ちなみにフィン団長の石はどうなってます?」
フィンが自分の石を取り出す。すると、フィンの石も普段よりも明るく光っている。
「この石がこんなに光ってるのを見たのは、この前と今の2回だけだ。でもなんで俺たちの「石」が光っていることに気づいたんだ?凱?」フィンは不思議そうに尋ねる。
「進んでいくにつれて、この暗闇の奥の方でうっすら、いろんな色の光が見え始めたんです。さっきまでは一色だけだったんですが、僅かに…。」
「その光が「石」が発光している光の色っていうこと?」私は自分の「石」を見ながら言う。
「なるほどね~。でも、何で石が発光し始めたんだ?んっ?石同士が反応してる?」フィンは再び尋ねる。
「俺の想像にすぎませんが…、おそらくこの先に盗まれた大量の石があって、その「石」と2人の「石」が共鳴しているんじゃないかと…。仮説にすぎませんが…。ちょっと確認したいので、莉羽の石と団長の石を近づけてみてください。」
私は団長の石に、自分の石を近づけてみる。すると、2つの石は凱の言った通り、共鳴するかのように、先ほどの光り方とは比にならないくらいのまぶしい光を放つ。
「まぶしい。」そこにいる全員が、目を瞑らないと目を潰されてしまうくらいの光量で皆、目を覆う。
「予想通りです。石が共鳴しています。おそらく団長の石が、莉羽の石に干渉されて、お互いの石が力を解放しているのかもしれない。だからこの先にある「石」も、2人の「石」によってそれぞれの力を解放している可能性があります。そして、今なら団長も「力」を解放できるかもしれません。」
「力の解放って?」
「今までにない能力を使えるってことです。もし次に魔物が現れたら、試しに使ってみてください。」
「どうやって?石の使い方なんて知らないぞ…。」フィンは困惑している。
「祈るだけです。祈ればその「石」の力が自然に解放されます。」
「そんなこと…。」と言いかけたところで、不穏な気配があたりを覆い始める。
「何か来るな。皆、戦闘準備。今までのとは格が違うぞ。多分…。」フィンはそう言うと「石」をしまう余裕がなく、自分の剣のガードの部分にはめ込む。
「あっ。ピッタリ!」不穏な気配を前にしているにもかかわらず、石がはまったことに喜ぶ団長を見て、思わずほほ笑んでしまう私たち。




