【第1夜⑯ ~抱えられての攻撃?~】
【前回より】
私と凱は、2人の様子を見ながら幸せを共有する。
「まさか、拉致された人が操られているなんて…。でも…、よかったね。アイシャさんとピートさん。婚約しているんだもんね。」私は無意識に凱の顔を見る。
すると凱は、意識的に顔をそらして、
「ああ。離れ離れで辛かっただろうな…。」ぼそっと言う。
何となく気まずくなりそうな雰囲気に私は話題を変える。
「凱、ところでさっき私を抱えたまま攻撃入ったじゃない?」
「ああ。」
「なんで?」私はなぜ、わざわざ小脇に抱えられて、攻撃に入ったのか疑問だった。すると凱は苦笑いしながら、
「ああ、突然だったもんな。ごめん。あれは、『宿世石』持ったお前の加護が必要だったんだ。『宿世石』だけじゃだめだし、お前だけでもダメなんだ。」
「?」私は意味が分からず、きょとんとしていると、
「さっきの状況は、あくまで『宿世石』を持ったお前が、あの娘と接触することでしか、彼女にかかった邪心を払うことができなかったってこと。「宿世石」を持ったお前じゃないと、あの子の石は外せなかった。あのまま時間が経てば、こちらの被害が大きくなるのが分かって、でもそれを説明している時間がなくて…、抱えた。」私は最後の言葉に思わずプッと吹き出す。
「抱えたって…。突然だったからびっくりしたよ。」と私。
「悪かったよ。」凱は、ばつが悪そうに言う。
「今回はアイシャさんの事を助けられたからいいけど…、これからまた突然抱えられるって可能性があるの?」
「ああ。そういうことだな。」苦笑いしながら話す凱に、私は笑いながら、
「りょーかい。でもお手柔らかにね。」と背中を叩く。
でも、なんだかんだ言って、ちょっと嬉しいことに変わりはなかった。




