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【第1夜⑮ ~操られた少女~】

【前回より】

「ああ、しかし、どうする?捕らえるといっても、さっきの攻撃を繰り返されたら捕らえるどころか俺たちがやられてしまう。」マグヌスが言う。


私たちがこうやって話す間にも、アイシャは次の攻撃を仕掛けてこようと腕を上げ始めている。


すると突然凱が私に、


「『宿世石』出して!」と切羽詰まった表情で言う。


 私がその声に、


「えっ?」と答える間に凱は、一瞬にして私の傍に来て、


「加護を!」と一言発し、私を抱え地面を蹴り、アイシャの懐に入り、胸の黄色のブローチを奪い取る。


 その時にはもうすでに腕は振り下ろされ、私のマントの右側部分がきれいに切り取られてしまっていた。


 ブローチを取られたせいか、その少女はその場に倒れ、体から完全に力が抜けて微動だにしない。そこにピートと思われる男が来て、婚約者の姿を確認する。


「アイシャ、アイシャ。」泣きながら抱きしめるピート。


「大丈夫、アイシャさんは傷つけていないから…。」凱は息を切らしながら話し、ゆっくりと抱えていた私を下す。そして、奪った石を私の手のひらに置き、


「しばらく持ってて。」と言う。私は言われた通り、その石を手のひらに乗せ、様子を見ていると、その石は次第に赤く染まり、そしてまた元の黄色に戻っていく。私は驚き、凱の顔を見ると凱はニヤッと笑う。


「これは?」


「この石は何らかの方法で何者かの邪心が込められていた。でも、それをお前が触れたことで、穢れが消え去り、清い状態に戻ったんだ。ちょっと、アイシャさんの頭に手を当ててみて。」


「うん。」私はアイシャさんの頭に手を置く。


「今度は魔法。おそらくアイシャさんは石の力に操られ、動かされていたから…。アイシャさんの心層は押し込められて、なかなか帰ってこられないはず。呼び戻すから、力貸して。」


「わかった。」


「ああ。いくぞ。」凱の声に合わせて、私たちは、


「召喚魔法クラスⅦ『コーレル』」と声を合わせて唱える。すると今までどんなに呼んでも微動だにしなかったアイシャの瞼が、少しずつ動き出す。


「アイシャ!」ピートは必死に呼びかける。その声に反応したアイシャの口から、


「ピート?」と声が漏れる。そして徐々に目を開け、婚約者の姿を確認して抱きつく。


「アイシャ。」ピートは喜びで顔をくしゃくしゃにして、その嬉しさのあまりアイシャを抱きしめる腕に力が入る。


「いっ、痛いよ、ピート。」たくさんのギャラリーの中、否が応でも注目されている状況に照れながらも嬉しそうに、アイシャもピートを強く抱きしめる。


私と凱は、2人の様子を見ながら幸せを共有する。


「まさか、拉致された人が操られているなんて…。でも…、よかったね。アイシャさんとピートさん。婚約しているんだもんね。」私は無意識に凱の顔を見る。


 すると凱は、意識的に顔をそらして、


「ああ。離れ離れで辛かっただろうな…。」ぼそっと言う。



※心層~能力を持つ者同士が心を通わせることが出来る、精神の一番深い部分

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