【第1夜⑭ ~黄色の石を持つ、黄色の瞳の少女~】
【前回より】
「もし私たちの力が、敵の持つ石の力で封じられているとしたら、魔法も神術も使えないってこと?」能力を使えない不安が私を襲う。
「石の力を全て把握していない状況だから…、そういった覚悟はしておいた方がいいな。」
「わかった…。」私の不安が顔に出てしまっていたのだろう。
「大丈夫。フィン団長の地獄の訓練を思い出せ。俺たちはあらゆる戦闘シミュレーションを実践してきた。自分を信じろ。」そう言って私の肩をポンポンと叩く凱。
「うん…。わかった。」
私は抱えた不安を飲み込む。
そう答えるや否や、木の陰から私と同い年くらいの少女が、宙に浮いた状態で、目の前に現れる。真っ黒の衣服を身にまとった少女は、私よりも身長がかなり高く、瞳は黄色く光り、胸のブローチには瞳と同じ黄色の石が埋め込まれ、不気味に光っている。
皆一斉に下がって、
「敵だよな?」
「宙に浮いているし…、それっぽいな…。」団員たちが騒ぎ立てる。
すると、その少女は高度を保ったまま、片腕をゆっくりと上げ、素早く振り下ろす。その瞬間、空気が鋭い刃物のようになって団員たちを襲う。団員の何人かの体が真っ二つに裂け、その後ろの木々さえも切り倒した。その場にいた他の団員たちは、その光景にこの上ない恐怖を覚え、隊列を乱し、その場から逃げ出すものもいた。
「なっ、なんだ今のは…。」
「これも魔法ってやつか?」
「あんなの逃げきれやしない。」
「どうすりゃいいんだよ…。」団員たちは、まさに今、感じた恐怖を言葉にし、皆と共有することで気持ちを落ち着かせようとしている。
そんな中、
「あの娘、どこかで見たことがあるんだよな…。」ある団員が話しているのが聞こえる。
「誰だよ?思い出してみろよ。」
「そう言われてもすぐには…、あれ?隣村のアイシャじゃないか?」
「アイシャって、ピートの婚約者のか?」
「ああ、そうだよ。間違いない。あの口もとのほくろはアイシャだ。俺、ピート呼んでくる。」その団員は慌てて後方に向かって馬を走らせる。
団員のやり取りを聞いていたフィンが加わる。
「今の話、本当か?」
「団長!あっ、はい、おそらく…。」
「ピートの婚約者は、最近連れ去られていた?」
「はい。少し前に。ピートはその報告が来て、かなり落ち込んでいました。」
「そうか…。皆、話は聞いたな?彼女はアイシャさんかもしれない。どうにか無傷で確保したいが…。」
「ああ、しかし、どうする?捕らえるといっても、さっきの攻撃を繰り返されたら捕らえるどころか俺たちがやられてしまう。」マグヌスが言う。
私たちがこうやって話す間にも、アイシャは次の攻撃を仕掛けてこようと腕を上げ始めている。
すると突然凱が私に、
「『宿世石』出して!」と切羽詰まった表情で言う。




