プロローグ
遠くから、何かが切り裂かれているような、そんな音がする。
男が音のする方を見てみると、そこにはクレーターのような大穴があり、中に半径1kmほどの丸い繭のようなものが鎮座していた。
高名な探検家である彼は、はるばるこれの調査に来たのであった。
と、同時に彼は大きな白い鷹のような、しかし瞳と嘴がなく顔がのっぺりしている、何か恐ろしい生き物が飛んでいるのを見た。全長は30mを、優に超えているだろうか。
あれに襲われたらひとたまりもないなと、彼はしゃがみながら繭に近づいていく。
彼はここが、世界でも屈指の危険地帯であることを知りながら足を踏み入れた。あの程度の怪物が、彼の足を止める理由にはならない。
・・・そうして繭に近づく途中、彼は見てしまった。
その鳥が繭に触れるとともに、赤くバラバラになって、墜落していった。
さらに、彼は気づいた。
よく見るとそれは繭などではなく、隙間すらないほどの無数の刃が高速で蠢きながら、繭の表面のようなものを形作っているだけなのだと。
それに気づいた瞬間、彼は恐ろしくなって脱兎の如く逃げ出していた。あんなものに、近づいていられるかと。あれはおおよそ、この世のモノであってはならないと。
果たして彼の選択は、正解だったのであろう。
すぐに逃げたしたがゆえに、幸運にも彼は見ることがなかったのだ。
・・・何を?
クレーターの内側、白い布を身に纏った白髪の少女が悠然と、その繭の中へと歩を進めていた。
―――そして彼女が入るとき、確かに繭の隙間から、黒い瞳がこちら側を見つめていた。黒く黒く、虚無のように・・・。




