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"紫電隊"のキセキ  作者: ぺい督
 
2/12

二式伝令車

(´ω`) < わしよ。

突然、トマス少将に着いて来るように言われて。

やや茜差し始めた砂埃が立つあぜ道を進みながら、少将に問いを投げかける。

「……これ、どこ向かってるんですか?」

少将が歩みを緩めることなく答える。

機甲師団(おれたち)の演習場さ。」

そう言って、俺にヘルメットを渡してくる。

「……これは?」

怪訝そうに、旧式のヘルメットを眺めて、被る。

頭がずんと重くなる。ひもを締め直していると、ふと訓練生時代の気分が湧き上がってくる。

「気持ち的には…被っておいた方がいいだろ。」

懐かしいなぁ、そう呟く前に少将が苦笑いしながら呟いた。

「どうして――」

俺の問いが少将に届く前に、聞きなれた轟音が、ずっと遠くから耳に飛び込んできた。

砲撃の音だ。そう考える前に少将のほうに駆け出して、こう叫んでいた。

「砲撃だ、伏せて!」

手早くヘルメットの紐を外し、乱雑に少将に被せる。

「落ち着け、エヴァンス。あれは味方の砲撃だ。」

少将を引き倒そうとした手が止まる。

2回目の砲声が聞こえて、飛んでこない砲弾になるほど確かにと納得してヘルメットを少将から外す。

「すみません、つい……」

ぺこりと頭を下げて、少将に謝罪をする。

「…まぁ、適切な対応だしな…不問にしよう。」

頭を上げ、ヘルメットを被り直す。少将にまた質問を投げる。

「ところで。あの砲声が件の機甲師団で?」

軍帽をはたいて被り直した少将が、笑みを浮かべて答える。

「あぁ、自慢の奴らだ……そら、お迎えが来たぞ。」

少将が今来た道の向こうを指差す。

夕暮れの太陽を背にして、四輪の装甲車らしい車輛が一台、此方に走ってくるのが見えた。

「……何ですか?あれ。」

少将が信じられないような目でこっちを見てくる。見たことも無いモノを知ってる訳も無いでしょう、そう言いかけたところで少将が答えてくれた。

「……二式伝令車(ランナー)。最近配備され始めた新兵器の一つさ。」

がたごとと音を立てて伝令車が目の前に止まり、側面ハッチから1人の兵士が顔を出す。

トマス少将が俺にそう言って、ハッチから顔を出した兵士に近寄っていく。

「やぁザクセン特技兵!どこへ向かうんだい?」

うげぇ、と言わんばかりの顔をして兵士が答える。

「連隊司令部に補給物資の要請をしに行った帰りっスよ、少将殿…」

少将が、わざと大げさに驚いたようなそぶりを見せてつづけた。

「そりゃ都合がいい!ついでに載せてって貰えないか?」

ザクセン特技兵が困惑したように内部に戻り、十秒もしないうちにまた顔を出す。

「中は書類と雑具で一杯なんスよ。車輛上でもいいですか?」

車輛の上につけられた手すりを指さして、困惑気味の表情でそうトマス少将に告げる。

少将がこっちを向いて、手招きしてくる。

「歩くよりはマシだと思うし。」

タイヤを足場にひょいと上に駆け上がる少将を見上げ、俺も従う。

「……ちょっと待って、歩いて行くつもりだったんスか?」

ハッチを閉めようとした特技兵が、再び押し開けて俺たちに聞いてくる。

伝令車の上で丁度いいポジションを探している少将に替わって、俺が応えた。

「まぁ、そうなるな。」

特技兵が呆れたようなため息をついて、頭を振ってから口を開く。

「こっから演習場まで10kmはありますよ。さ、揺れに注意してください。」

ハッチが閉めて、すぐにがたがたと車輛が揺れ始める。

速度が上がっているのか、ちょっとずつ受ける風が強く感じる。

「どうだいエヴァンス中佐、車輛の上ってのもいいだろう?」

風を受けて目を細めているトマス少将が聞いてくる。

俺はこくりと頷き、ヘルメットの顎紐を結び直す。

「えぇ。これはこれで……いいものですね。」

(´ω`) < ありがとね。

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