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"紫電隊"のキセキ  作者: ぺい督
 
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異動命令

(´ω`) < 俺です。

「エヴァンス中佐、このタイプライターは?」

「あぁ、そっちのテントに置いてくれ。」

 俺はクソ不味い煙草を咥えたまま、上機嫌に陣地設営の指揮を執る。

「……機嫌がよさそうだな、エヴァンス。」

声を掛けられ、軍帽を脱いで敬礼する。

くたびれたおっさん、その表現が似合いそうなトマス少将が立っていた。

「これはこれはトマス少将!遂にここまで上り詰めたんです。機嫌が悪いわけがないでしょう?」

 自分でも分かるほどのにこやかな笑みを浮かべながら、少将に向けて煙草の箱を差し出す。

少将が1本抜き取り、俺が差し出した火に煙草を差し出す。

「おまえが軍に入隊して、もう7年か?」

少将が、鉄条網を積んだ二輪車が通り過ぎていくのを見ながら口を開いた。

「まだ5年ですよ。40歳を過ぎて遂にボケ始めました?」

一つ大きく吸い込み、紫煙を吐き出しながら軽口をたたく。

「馬鹿いえ。まだまだ現役だ。」

少将が背中をばしばしと叩いてくる。


 少将が、自分の無精ひげを撫でて続けた。

「……近く、また戦火が吹き荒れるやもしれん。それが終わるまでは現役でいるつもりさ。」

少将の声に、俺の背筋が伸びる。

もしも戦争となったら、俺たちの部隊も前線に出るだろう。死ぬのだけは避けたい。

そんな思いから、やや大げさに神妙な面持ちを作って問いただす。

「というと、ライヒと1戦交えるのでしょうか?」

少将がひょいと肩を竦め、からからと笑いながら答えた。

「さぁな。俺も又聞きだから詳しくは知らん。」

俺はひざからがくっと崩れ落ち、呟いた。

「なんだ、緊張して損した…」

その様子を見た少将が続ける。

「まぁ、気にしておいて損は無いだろう。それと…だ。これが本題だった。」

少将が改めてこっちを向いて立つ。ついさっきまでの緩い調子とは全く違う雰囲気に、背筋がまた伸びる。


「オースティン・ルイス・エヴァンス中佐。来週付で貴官を第74機甲師団配属とする。」


「……へ?」

少将から告げられた事実に、俺は持っていた軍帽を落としてしまった。

「お言葉ですが!私は歩兵部隊の指揮しか能がありません。」

俺は、軍帽を拾うよりも先に口を開いた。

5年も陸軍に所属して、やっとこの地位を掴んだんだ!

この安定した地位を手放したくない一心だった。

「私はこの大隊を指揮することが役目だと認識しています!それを…」

「これは南方大陸方面軍司令部としての決定だ!馬鹿なことをするんじゃないぞ。」

少将が声を荒げ、懇願するようにこっちを見る。

「俺の手を汚させないでくれ、頼むから……」

左手に愛用の回転式拳銃(リボルバー)が握られていた。

「…あぁクソ。分かりました。その決定受け入れましょう。」

半ばヤケクソ気味に、俺はそれを受け入れた。

少将がほっとしたように、回転式拳銃(リボルバー)をホルスターに収めた。

「ちなみに、機甲大隊への配備予定だとさ。」

少将が煙草を放り捨て、靴で潰しながら言った。


俺は半ば絶望しながら、配備予定の大隊について言及する。

「はぁ…機甲ってアレですよね?重くて鈍重で鈍い、所詮ただの水運搬車(タンク)でしょう。」

俺の質問に、少将が呆れたような顔をする。

少し間があったのち、少将が疑問を口にした。

「…最期に見たのはいつだい?」

俺は考え込んで、最期に見た時期を口にする。

「確か……入隊してすぐに。それっきりですね。そもそも機甲部隊と演習したことなんてありませんし。」

少将がものすごく申し訳なさそうな顔を浮かべて、すぐにニヤリと笑った。

「そうか……そうか!じゃあ都合がいいかもしれないな。おい!そこの君!」

そう言って、少将が丁度目の前を通った二等兵を呼び寄せた。

「エヴァンス中佐を借りていく。規定通りに指揮を引き継いでやるようにトマス少将より指示が出た。そう伝えてくれ。」

二等兵がびしっと敬礼をして、ぱたぱたと司令部のテントへ入っていく。

「……よし。これでいいな。行くぞ」

少将が手で着いて来るようにジェスチャーし、すぐに歩き出す。

「行くと言っても、どこへ……?」

俺の問いに、少将は答えた。


「最新鋭の "戦車(タンク)" を見せてやる。」


(´ω`) < 最後まで読んでくれてありがとうございます。

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