3
ハイドという店の個室でフードを深く被った1人の少年がある人物を待っていた。
「おっ!いたいた薫!」
「ちょっその名前で呼ぶな!」
「あー、ごめんごめん」
「本当に薫なんだね…」
「あぁ、久しぶりだな。瑠夏」
東道瑠夏…こいつも俺の元クラスメートだ。
「おう!」
まさか瑠夏と会えるなんて…
前世の記憶を取り戻してから俺の日常は変わった。
何も感じてこなかった魔法。それは俺らの世界じゃありえない物だし、魔物なんて今考えるとかなりおかしい。
「当たり前の日々は当たり前じゃない」
昔クラスメートの誰かが言ってた言葉。
今考えると案外あいつが言ってたことは本当だったのかもな。
「薫…これからどうするんだ?」
「あぁ、まさかこのまま平和に暮らすなんて考えどうせお前ならないんだろ?」
「おっよくわかってんじゃんるか」
「まぁな、でお前は何が望みなんだ?」
俺の望みか…
記憶を取り戻したあとよく考えた。
このまま生きてていいのか。
俺はまたクラスメートと笑いあいたい。
そのために…
「転移者を探そう」
俺は2人の目を見て言った…
2人がなんて言うかなんて分からない。
でも俺は探したい。
「いいぜ」
悠斗がそう言った。
瑠夏も…
「当たり前じゃん」
そう言った。
あぁやっぱりこいつらは最高の俺の仲間だ。
「じゃあさ、さっそくなんだけど。どう行く?」
「やっぱり問題はそこだよな…」
「俺は執事だから退職届けでも出せば済む。だがお前らは違うだろ?これでもこの国の公爵家と伯爵家の次男なんだからさ」
「修行するとかは?」
「現実的に無理じゃね?公爵家や伯爵家ならそんな事しなくても力はつくとか護衛とかがついてきそうだし…」
「だよな…」
やっぱり一番の問題はそこ。
どうやってお母様やお父様、お兄様を説得するか。
ここエーデル王国は北を征する俺らガレット公爵家。南を征するオーマクス公爵家。東を征するシュルマン公爵家。最後に西を征するマリアン公爵家が主となり構成されている。
俺はそこのガレット公爵家の次男。
そう簡単に出れる訳では無い。
それに、この先旅を続けていくといつか他の国にも、もしかしたら妖精の島や竜人の島などにも行くかもしれない。
そうなるとお母様達が許してくれる可能性は低い。
どうすることか…
「とりあえず、説得だけしてみるか?無理な気しかしねぇけど…」
「それもそうだな…」
「じゃあ俺はプランでも考えとくわ」
「よろしくな〜」
この後俺らは解散した。
俺は今とある部屋の前にいる。
大丈夫…俺なら大丈夫。
俺は自分にそう言い聞かせ扉を開けた。
「失礼します。」
「どうしたんだい?ロイ」
この方は俺のこの世界での父親だ。
剣術の達人と言われていて、この国で1番強いと言われている。
基本はこの部屋で仕事をしているため、会うことなんてないと言っても過言では無い。
そんな父が今俺の目の前にいるんだ。
「その要件なんですが…僕旅に出たいんです!」
「…旅?」
「はい、僕は前からお父様達に言っている通り公爵家を継ぐつもりはありません。なのでこの世界を旅したいんです。まだ見たことない風景や情景…何もかもが新しい事だらけだと思うんです」
これは俺の本音だ。
前世でもそうだが俺はある一定の場所に閉じこもって生きてた。
前世では日本からは出たことなんてないし…
今世では1度もこの国から出たことは無い。
この世界には竜人族や妖精族、エルフ族など様々な種族が領地を決め合い暮らしている。
だからこそ見てみたいというのが前から思っていた本音であることに変わりは無い。
「旅か…それは一人で行くのか?それとも誰か護衛でも連れて行くのか?」
「いえ、私は友人達と旅に出たいと思っています」
「友人?」
「はい、先日会ったフォンテーヌ伯爵の次男のジェーンとその執事のカインと共に旅をしたいと考えています」
「…そうか…フォンテーヌの坊ちゃんがいるなら一人旅よりかはまだ安全か」
「旅に出てもよろしいということでしょうか?」
「いや…少し待て」
「えっ?」
「1年だ。1年だけ公爵家に残ってくれ。国の外は危険だ…お前の剣術をマスタークラスまで鍛える。それが終わったら旅に出なさい」
これはいいってことだよな?
でもマスタークラスまでか…
この世界の剣術、槍術、武術など様々な戦い方がある。
その中でもマスタークラス…それは極わすがな人間にしか辿り着けない領域と言ってもいい。
マスタークラスまでいった人は特別な力を手にする。
その一つに”神の加護”というものがある。
神の加護それはどんな捧げ物よりも嬉しいものだ。
神が認めてくれたという合図なのだから。
加護によっては魔剣使いになれるかもしれない。
魔剣使いになるには魔法が必要だ。
俺は一応魔力はあるにはあるが…
あんまり使えない。
でもそこに魔法部類の神の加護が加われば魔力は上がるし、その属性の魔法も使えるようになる。
まさに、天下の代物だ。
まぁでも大体剣術者は剣の神に認められたり筋力の神とかなんだけどな。
でも1年か…
その間に俺はマスターになる。
今俺のランクはダイヤ…
マスターまではあと少しだ。
これから何が起こるか分からないが…俺は絶対に負けない。
いいと思ったらブックマーク、高評価お願いします。