第6話〜現実は小説より奇なり。とは言うものの、まさか自分がって言葉はもっと言われてる
…………。
ーーーパンッパン!パン!
「ようこそ、A君。私たちは君を歓迎するよ」
ええと、これはどういう事だろう…?
あまり使われてない第三美術室にやって来て、覚悟を決めて入ってみたら…
なぜか誕生日でも鳴らされたことのないクラッカーと、今時そこまでする?と思うくらいの飾り付けが僕を出迎えてくれた。
え、ほんとになんで?
もしかして誰かのサプライズパーティーに間が悪く乱入しちゃったのかな?
でも僕の名前を呼んでた、よね?
「どうした、A君。入り口で呆けてないで椅子に座りたまえ。冷蔵庫に入れておいたケーキはともかく、駅前から作り立てを運んできてもらったクレープはもたもたしていると味が落ちてしまう」
そう言ったのは部屋の奥、入り口から一番遠い位置にある席に座っている女子生徒。
先輩、かな?
制服は女性用だけど、なんというか雰囲気が男前というか、イケメンな感じだ。
例えるなら、そう、塚だ。
他には3人、部屋の思い思いの場所に座っている。
その内の1人が、彼だった。
どこを見てるのか分からない瞳で、こちらの方を見ていた。
「おしゃべりは後でもできるが、今この瞬間にしかできないことをしよう。食べ時を逃すのは罪だ」
とまぁよく分からないうちに、僕は椅子に座らせられて、クレープとケーキをご馳走になることになってしまった。
…………。
(き、気まずい…)
このよく分からないパーティー?に半ば強制的に参加させられたわけだけど、喋ってるのは最初に声をかけてきた女の先輩だけ。
自己紹介とかもないし、彼を除けば後の2人はたまに僕のことを観察するみたいにみてくるだけ。
その視線もなんだか、警戒されてるような…?
「いやぁ、今年はある意味で豊作だね。こんなにたくさんの新入部員が集まるなんて。人数が人数だし、正直手が足りなくて困っていた所なんだ。始末しなきゃいけない相手はいくらでもいるからね。人手は多いに越したことはない」
え、新入部員?
僕、新入部員と間違われてる?
それになんか物騒な話をしだした…!?
「す、すいません…!」
変な誤解とかだったら面倒だし、話が拗れる前に否定しておかないと。
「僕は、入部するために来たわけじゃないんです、けど…」
「おや、Kから何も……聞いていないのかい?」
K?
ああ、彼のことか。
「あのKが貴重な蘇生薬を使用してまで¨生き返らせた¨って聞いたから、てっきり余程貴重な才能か適性を持っているのか、それとも…」
蘇生薬?
もしかして、あの致命傷を治したのはその蘇生薬?
というか、もしかして、とんでもないことに巻き込まれてるような…。
その予感は的中していた。
「どうしたものかな。私の早とちりとはいえ、君は少しばかし後戻りできない場所へと踏み込んでしまったね」
「いやいや、なんのことやら!大丈夫ですよ!まだたぶん引き返せるポジションだと思います!」
大丈夫、まだ蘇生薬やら始末やら、ちょっと物騒なRPGの単語程度しか書いてない。
彼の言動も合わせて、なんとなか物騒な想像はしたけど、そんなのあり得ないし。
「今、君には3つの選択肢、だと正しくないか。道が示されている」
けど、この先輩たちは僕の事を見逃してはくれないみたいだった。
「一つ、知りすぎた君は始末される。今時の若者らしく、何かしらの理由があってか失踪、行方不明、そして彼はいなくなった…」
知りすぎたも何もまだほとんど何も知らない!
「二つ、全てを忘れて一から始める。これは文字通り、記憶の一切合切を物理的な手術で失い、空っぽな状態から改めましてこんにちは。精神的な消失だね」
物騒を通り越してマッドだ。
「三つ、この際だから君もこちら側にならないか?最悪でも物理的にか精神的に死ぬだけだし。失う物はある意味何もない、とも言い切れないが、まぁ命あっての物種とはよく言うだろう?」
ニヤニヤしながらそんな提案をされる。
もしかして、初めから嵌められて…?
つまり選択の余地はないってことかなぁ。
「さぁ、どうしようね?」