梅雨
季節が過ぎ梅雨の季節になってきた。
毎日、雨が降っている今日この頃です。
この時期になると調子づいてくる奴がいる。
水神の釣流 泳斗だ。
奴は神族であることを誇りに思っている。
そしてことあるごとにその事について僕に説いてくるのだ。
「いいか、神族というものはいついかなる時でも人の役に立たなくてはならない。
神族というものは人間よりも優れているのだから人間を守らなければならいないのだ」
と僕にいつも言ってくる。
正直、僕は彼の説諭には何の興味もない。
ていうか、僕以外の他に友達はいないのかといつも僕に連んでくる彼を心配したりもしている。
彼は常に水がないと精神的に不安になるそう。
いつも紙コップに水を入れて携帯している。
その水はけして飲むことのない水。
彼にとっては神聖な水だ。
その紙コップに触ろうとしようものなら彼は烈火のごとく怒る。
その恐ろしさたるやいなや。
まさに2つの意味で触らぬ神(紙)に祟りなしなのだ。
さて、最近の彼はというと紙コップを携帯していない。
それは雨が降っているから。
彼は身近に水があれば心が落ち着く。
それが雨でも良いのだそう。
厳密に言えば濡れたものがそこにあれば良い。
だから彼は雨合羽を着たまま授業を受けている。
それも濡れた状態で。
ちょっと迷惑ではあるが誰も注意できない状態だ。
担任も半ば諦めている。
「種族にもいろいろな癖がありますのでみなさんもその癖に慣れてくださいね」
と僕らに呼びかけているほど。
しかし、担任は水が苦手。
最近の彼に対する態度はいつもおどおどしている。
えいともそれなりに担任には気を遣っているみたいだ。
担任に接する時は雨合羽を脱ぎ体を一生懸命拭いてから接している。
種族的には水と油だがお互いになんとかコミュニケーションを取ろうと努力しているようだ。
それにしても最近のえいとは気分が高揚しているようだ。
段々ハイになっているような。
少し彼を心配し始めていた。
彼には犬猿の仲の人物がいる。
涼井 極だ。
彼は魔族の出身で属性は氷。
いわゆる氷魔だ。
えいとときわめはいつも喧嘩している。
ただの人間同士の喧嘩なら何の問題もない。
神族と魔族の喧嘩は周りを危険に巻き込む。
もともときわめは氷魔であることを隠していた。
普段からモノをしゃべらない無口なタイプでもあった。
だからクラスのみんなも彼を氷魔だと知るものは誰1人いなかった。
僕を除いて。
僕がなぜ彼を氷魔だと気づいたのかというときっかけは5月のある日でした。
僕は誰よりも早く登校しているのですがその日は誰よりも早く彼がいました。
そして彼は
「助かった」
と一言。
僕は
「どうしたの?」と聞くと
彼は
「最近、ちょっと肌寒かったじゃん。
それも季節外れなぐらいに。
僕は寒いと魔力が上がるんだ。
ちょっとテンションが高くなったんだ気なんだけどそのおかげで机とイスと体と床がくっついちゃって身動きが出来ないんだ。
ルームメイトも全然気づいてくれないし、本当に参っていたんだ
助けてくれないか」
僕が彼の体を見てみると全身と机と椅子が床から出てきた氷に纏われている。
顔だけを除いて。
僕は慌てて天使の副担任を呼び問題を解決した。
天使は全属性なので神族、魔族の起こした問題は何の障害もなく解決できる。
それが澄んでから彼は急いでトイレに行き、なぜかその後、僕も含めて説教されたが。
そんな事件がクラスに知れ渡るのには時間がかからなかった。
まぁ、副担任が先のことを注意したからだが。
それからえいとはきわめにつっかかるようになった。
最初は何で能力を隠していたとかとにかく説教臭いものだった。
そして時が過ぎ事件は起きた。
えいとときわめの暴走だ。
梅雨の時期になりえいとは段々ハイになっていた。
きわめはきわめでえいとの説教にはうんざりしていた。
この日は様子2人とも様子がおかしかった。
きっかけはえいとだった。
きわめに対し
「君は魔族としてのプライドはないのか。
大体、能力を隠すなんて恥知らずも良いとこ」
それにきわめがプッツンした。
「じゃぁ、僕の能力を教えていたら君はあのとき助けてくれたのか。
大体、ルームメイトが一晩いなかったんだぞ。
なぜ探しもしなかったんだ」
と反論した。
えいとは
「あのときのことはすまなかったと何度も謝っただろうが。
大体、僕たちは高校生だ。
一晩ぐらいいなくてもなんとも思わないに決まっているだろうが」
と言い返した。
僕は2人の言い合いにオロオロするばかり。
次第に教室の中に雨が降り出した。
えいとの能力だ。
そして時間が経つと雪も降り出した
これはきわめの能力。
教室の半分は豪雨、そしてもう半分は豪雪。
一種異様な光景だ。
こんな状況になると誰も手を付けられない。
クラスを巻き込んでの大げんかに僕たちはなす術もなかった。
しばらくすると副担任で天使の西極 優陽先生が教室にやって来た。
「あなたたち何をやっているの?」
それは静かだけど悪魔のような声だった。(天使だけど)
教室の空気が一瞬で凍り喧嘩もピタッと止まった。
副担任は
「あなたたちのおかげで担任の先生は教室に入ることも出来ません。
担任の先生は水が弱点ですからね。
なぜこのような状況になったのか誰か説明してくれるかしら」
この後、えいとときわめはこってり副担任に絞られた。
言っておくけど普段のえいとときわめはめちゃくちゃ仲良し。
それはBLを疑われるほど仲が良い。
クラスの腐女子の間では2人がイケメンと言うこともあってめちゃくちゃモテている。
(見守っていたいという意味で)
もちろん本人たちは否定していますが。