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遠足

 今日はクラスのみんなと一緒に遠足だ。

僕たちクラスは遊園地に行くことになった。


 遊園地と言ってもただの遊園地では無い。


 僕は人間界の遊園地にしか行ったことがない。

人間界育ちの僕にとっては当たり前だがみんなは違う。

いろんな種族の人たちが集うこの学校。

もちろんこの人たちはそれぞれの世界からやって来た。

だからそれぞれの世界観が違う。

僕たちはそれぞれの世界観を理解しなければならない。


 遠足の目的地を決めるのにも一苦労だった。

だってそれぞれ行きたい場所が違うのだから。

それをまとめる委員長の泳斗えいとも大変だった。


 ちなみに泳斗は水神でいつも机に水の入ったコップを置いている。

それは飲むためでは無く精神安定剤として机に置いているのだそう。

彼は水がそばに無いと精神が不安定になるそう。

でも自分で出せるのだから不安定になることは無いと思うのだが。

そんな彼が水の入ったコップを手に持ちながら学級会を仕切っていた。

そして半ば強引に彼の地元である神界の遊園地に決まったのだ。


 そして話を戻すとその遊園地は普通の遊園地では無い。

神界の遊園地だ。

神界の行き方はもちろん普通では無い。

でもそこは特殊な神界行きのバスで行く。

そのバスは次元を繋ぐバス。

小一時間で目的地へ着いた。


 そこは人間界の遊園地とは似て非なるものだった。

何もかもが人間界の倍、いや10倍に見えた。


 実は僕、絶叫マシーンが大の苦手だ。

人間界のジェットコースターもろくに乗れない。

ましてや神界の乗り物なんて。


 でも僕の彼女はノリノリだった。

来た途端、ジェットコースターに乗りたいとはしゃぎまくっていた。

僕は仕方なく彼女の言いなりになった。

だって彼女が楽しみにしていることをふいにしたくなかったから。


 ジェットコースター乗り場に行くと係員が注意事項を説明していた。

「このジェットコースターは水神用のジェットコースターです。

ですのでジェットコースターの後半の10分は水中です。

水神で無い方や水の中で息が出来ない方はこのヘルメットを着用してください。

このヘルメットを頭にすっぽり入れると水中でも息が出来ます。

透明ですのでしっかりと資格を確保できるので安心してください。

所要時間は30分です」


 はぁ!?30分?

人間界では大体3分ぐらいだったんだけれど。

これも10倍なのかと僕は思った。


 この後、係員が僕の所にやって来て

「すいません、お隣のそれは映像ですよね。

なぜ立体映像があなたの隣にあるんですか。

後ろの人にも迷惑なのでその立体映像は決してもらいませんか?」

と言われた。

僕は

「失礼な!!

この娘は立派な生命体です。

生きているんです。

あなたは映像生命体を知らないのですか」

と僕は怒って見せた。

何せ隣で彼女がしょんぼりした顔をしていたから。

係員は慌てて

「誠に申し訳ありません。

勉強不足でした。

我々遊園地の者はあらゆる種族に平等がモットウです。

今後こういったことが無いように気をつけますと共にこのことをすぐ全係員に知らせます。

本当に申し訳ありませんでした」

と謝ってきた。

後ろに座っていた液野先生は

「しょうがないですよ。

映像生命体はあまり知られていない種族。

間違っても仕方がありません。

今後の糧にして下さい」

とフォローしていた。

係員は

「そういえばあなたは液状生命体の方ですよね。

何しれっと乗っているんですか。

あなたは水の中に入ったら死ぬんじゃなかったんですか。

しかもあなたが死んだらここ一体は誰も入れない危険区域になる。

それにあなたは今日、教師という立場でここに来ているのでしょう。

言っておきますがこれは差別ではありません。

私だって命は惜しいですから。

さぁ、早く降りてください」

と言って係員は液野先生を下ろした。

液野先生はとても悔しそうな顔をしていた。

でもそこまでして乗りたいかと僕は思った。


 そして長い長いジェットコースタは終わった。

次に乗るのはバイキングだ。

いわゆる海賊船。

それも普通の海賊船じゃない。

普通の海賊船は縦に揺れるがこれは横にも揺れる。

しかもかなりの揺れ幅。

どういった仕組みか分からないが。

そしてこの海賊船はなぜか燃えているのだ。

その火は決して消えることのない火。

炎神用の海賊船なのだそうだ。

炎耐性のないものは防火服を着て乗ることになる。

そして僕は暑さと怖さに耐えて長時間乗ることとなった。


 そしてこの二つの乗り物に乗った後、僕はグロッキーになっていた。

正直、今は何も考えられない。

とにかく僕はベンチに横になっていた。

彼女はと言うと

興奮しきりで遊園地の感想をずっと長々と言っていた。

僕はこんなにはしゃぐ嬉しそうな彼女を見のが初めてだった。

何せ普段は感情を見せないから。

僕は横になりながらそのギャップに悶えていた。


 落ち着いた頃、僕はレストランで昼食を摂った。

見たことのないメニューばっかだったがラーメンに似たものがあったので僕はそれを食べた。

それはとても美味しかった。

その際も彼女はしゃべりっぱなしだった。


 そして午後も地獄が待っている。

でも彼女の笑顔は失いたくない。

だから僕は勇気を振り絞って午後に臨もうと思う。

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