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守りたい

唄に初めて会ったのは小学生の時だったか。


小学生のわりに大人びていて、でも年相応の子供っぽさもあった。


勉強はそんなにできるほうではなかったが馬鹿ではない。


馬鹿のフリをしているというかなんというか。


不思議な雰囲気の子だった。


それを友達にいっても誰もそうは思っていなかった。


俺だけが気が付いている。


ちょっと優越感?


そっから気になって話しかけたのが始まり。


話せば話すほど興味が湧いた。


中学に上がってからも俺と唄は一緒にいた。


その頃の歌は小学生の頃よりも不安定だった。


いつも通りに笑ってるかと思えばいきなり泣き出しそうな表情をしたり。


急に不機嫌になったり。


これが思春期というものなのだろうかと悩んだものだ。


高校に入るとそれも少し落ち着いたがそれでもやっぱり不安定だった。


「伊織、今日は何する?」

「カラオケいこーぜー」


にこにこと笑っているのに。


なぜか悲しい色をしているんだ。


助けてと言われている気がするけど、いったい何から助ければいいのか。


いや、たぶん何からでもないんだ。


きっと本人も何におびえているのか、何から助けてほしいのかわかっていない。


「唄、もし何かあったら俺が守ってやるから安心しろ」


俺がそういえば驚いたように目を見開き唇を震わせた唄を今でも覚えている。


「ずっとこの先一生守ってやる」

「プロポーズみたいだ」


一筋涙を流してから多分今まで見てきた中で一番の笑顔も俺は一生忘れない。


「伊織」


俺の名前を呼ぶ声が好きだ。


「伊織?」


俺を見上げてくる顔が好きだ。


「伊織ー」


抱きしめてくる腕が好きだ。


「唄、一緒に住もう」

「……うん!」


色々な事から守る為に、なるべく唄と離れないように家でできる仕事をすることにした。


孤独や寂しさ、飢えや貧しさ。


そういうのからも守ってあげたいなと思う。


「愛してるよ」

「!!俺も」


願わくばこの愛しい笑顔が俺の隣で続くように。

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