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僕を拾ってくれた人

その日は雨が降っていて、とっても寒かった。


兄弟姉妹は拾われていったり外の世界に飛び出していった。


僕は拾われることもなく、外に飛び出す勇気もなかった。


一番下の妹はいつの間にか冷たくなって動かなくなってしまった。


お母さんは元気かな。


お父さんは今日もあの人たちの膝の上で寝てるのだろうか。


お腹がすいた。


寒い。


寂しい。


誰か。


誰か……助けて。


僕、ここにいるんだよ。


「伊織、猫がいる」

「猫?捨て猫?」


どこからか聞こえてきた声に閉じていた眼を開く。


「2匹いるけど、こっちの子は死んじゃってるみたい」

「俺タオルコンビニで買ってくるからそのあと病院連れてこう」


1人がどこかに走っていった。


残ったほうの男に抱えあげられた。


「家においで」


柔らかい声と手に包まれて今までの寂しかった気持ちが消えていく。


「唄!買ってきたぞー」

「ありがとう」


僕と妹は柔らかい布にくるまれて妹はこの布を持ってきた人に抱えられた。


暖かい。


そのあと僕は知らない人に体中触られたりお尻に何か刺されたり首にチクッとされたりで大変だった。


妹はその場所でお別れした。


僕は2人の家に連れてかれた。


暖かいミルクが出された。


とっても美味しかった。


ご飯もすごく久しぶりに食べた気がする。


「蒼、美味しかった?」


頭を撫でられながらそう言われた。


蒼。


「蒼、おいで」


そういわれて抱き上げられる。


蒼というのはもしかして僕の名前だろうか。


「蒼、唄」

「伊織、もう寝る?」


僕を抱えている人は唄という名前らしい。


唄を呼んだ人は伊織。


僕の飼い主たち。


「蒼、おやすみ」


暖かくて柔らかい布団に大好きな人たちと寝る。


あぁ、もう寒くない。


助けてくれてありがとう。


明日も、そのまた明日も僕の名前を呼んでくれる人がいる。


幸せだなぁ……

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