表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

死の間際へ



「貴方には、本来全うすべき寿命と、天命があった。でも、何らかの要因で、貴方はそれを果たせなかった。貴方の次の人生を決める為には、その天命が何なのか、を探す必要がある。まず貴方が死んだ理由から、順番に探っていきましょう。」



冴子は、白い部屋の壁を見つめたまま途切れる事なくそこまで言った。

一方の棚田は、指の爪を一本一本眺めながら、『はい』と、小さく呟いただけだった。



俺は椅子を抱きかかえるようにして座り、もう一回煙草をふかした。

本当は、味なんぞしない。

そう、わかっていながら。



生きたくねえんだろうな。転生してまで。



率直に、この貧弱そうな高校生は、そうなんだろうと、俺は感じた。

しかしどうあれ、こっちも仕事だ。

仕事は、責任と意識をもって成し遂げなければならぬ、

というのが俺の信条だった。

生前からそうだったかどうかは知らない。

何しろ、俺や冴子には生前の記憶は一切なく、

俺が一体『霧島』なのかどうかすら、確実なものはなかった。

俺がここで『霧島』足り得るのは、あいつが…冴子が、俺をそう呼ぶからだ。

それ以外に、今の俺に真実はなかった。

だからな、棚田。

お前が『棚田』だったって事は、お前が知るよりもずっと、価値があるんだぜ。

…多分な。



「さて、じゃあ、始めるとするか」



その先には、棚田も知らない真実と明日があるだろう。

俺の言葉を合図に、冴子は床に手をつき、目を閉じた。



「あんまり納得は出来ねえだろうが、それをする為にも今は俺たちに付き合ってくれ。まず、自分が死んだ時の事を覚えているか?」



ゆっくりと、極力静かに、俺は口を開いた。

相手のペースと話し方に合わせる、というのは、いつからか俺が身につけた相手の意思を引き出すコミュニケーションのテクニックだ。



「…あまり、覚えていません。線路沿いの道を、歩いていた所までは、わかります」



「死んだ瞬間の事は覚えてないって事ね。まず、貴方は電車の脱線事故に巻き込まれて亡くなっているわ。死因は全身打撲。これを…見て」



冴子が床に手をついたまま、瞳を開いた瞬間、

世界は…開いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ