強制イベントは回避出来ない
メニュー画面を開き、マップで周囲を探索していると、おあつらえ向きに小さな村を見つけた陽と月紫の二人。
二人は寝床を求めてその村を目指し、歩き出した。
道中、草陰からスライムや、木に擬態したトレント等が襲ってきたが、歯牙にもかけないとはこの事か、二人は無人の野を行くがごとく襲ってくるモンスター達を陽は槍で、月紫は拳で圧倒しながら村へと着々と歩を進めていった。
「やっぱりステータスの差だろうなあ、戦いにすらならないとはなあ」
「張り合いがない、っていうか弱い者いじめみたいで気が引けるんだけど」
二人は気まずそうに言いながら歩いていると、小高い丘に差し掛かった。
転がってる岩に腰掛け、一息つくついでに勝手にインベントリに収納されたモンスターの素材を整理するつもりでメニューを開いた陽は、マップに映った村のアイコンに近付いていく別のアイコンを見つける。
「赤いアイコンが村の方に、もしかしてモンスターが村を……いや、盗賊とかの可能性もあるか」
「何々? どうしたの?」
横に腰掛けていた月紫が陽のメニュー画面をのぞき込む。
その時だった。
村のある方角から爆発音が響いた。
次いで、重金属をこすり合わせるような悲鳴にも似た咆哮が二人の耳に届く。
「マズいだろこれは」
「さっきのって――」
陽はマップに表示された赤いアイコンをタップした。
こうすることでアイコンが何を指しているのか、詳細な情報が表示されるようになっている、というのがアストラルオンラインの仕様だった。
そして、それはこの世界でも同じであった。
陽が想定した中で、最も最悪な存在の名称がマップ上に表示され、陽は開いていたメニュー画面を閉じると、槍を手に丘を駆け上がった。
月紫も遅れること無く陽の横に並び、丘の上から村の方角を凝視する。
さっきの爆発音と咆哮の主は、村の中央広場で自らの翼を広げ、天に向かって再び咆哮していた。
「陽君あれって――」
「ああ……ドラゴンだ」