初めての魔法
「あ、あわわ、どうしようこれ、誰かに怒られたり」
「大丈夫だろ、別に管理されてる土地って訳でもないだろうし」
涙目で近付いてきた月紫の頭を撫でながら言ってはみたが、確かに知らない土地にミニクレーターを作ったまま立ち去るのは気が引けるな。
物理法則がゲーム基準で反映されてるのはさっきの月紫の一撃で分かったし、今度は魔法を使ってみるか。
「分かったわかった、出来るか分からないけど直してみよう」
ゲームの魔法は画面下にある魔法欄か、ショートカットに設定していたコマンドで使用していたが、流石にそんな物はない。
だけど、なんと表現すれば良いのか、血が流れる、と言うよりは体の内を暖かい風が流れているような、そんな感覚がある。
これが魔力なら、コレを杖代わりの槍に送ってアストラルオンラインにあった魔法名に土地を付け足して唱えれば、もしかしたら。
「土地回復魔法」
唱えてすぐにそれは現象として現れた。
槍から溢れた光がクレーター周辺を包み込み、まるで時間が逆流しているかの様に元の草原へと戻っていく。
コレが魔法か、ゲームじゃない世界で、システムの反映があるとはいえ、俺、現実に魔法を使ったんだな。
「スゲえな異世界」
「凄いのは陽君だよ! 魔法使えるんだね!?」
「月紫も使えると思うけどな」
「う~ん、私魔法は一切ステータス振らなかったからなあ」
そう言えばそうだった。
月紫は魔法への抵抗力すらそこそこに全てのステータスアップ用のポイントを物理攻撃力と俊敏性、会心率に振ってたんだった。
しかし、転生してレベル1からまた強くなれる事を考えれば。
「これから使える様にポイントを振っていけば、マジックファイターなんて事も出来そうだな」
「ホントだね! 拳に炎を纏って殴ったり、風魔法で加速して殴ったり」
「うちの嫁が脳筋な件について」
「殴るよ?」
「今の月紫に殴られたら死ぬ!」
冗談が言えるようになってきた辺り、余裕が出来てきたのは良い事かもしれないな。
あとはどこか村やら町やらを探して、寝床を確保したいものだ。