目覚めた場所
高校を卒業し、就職して収入も安定した頃。
俺は幼馴染みだった彼女と結婚する事になった。
結婚生活は周りから見れば順風満帆と、間違いなく言えるものだったろうし、俺もそう思っていた。
嫁とは趣味も共通していたのもあって激しく口論をしたりはしたことが無い。
何よりも、何か引けない案件、例えば休日の過ごし方とかは良くその趣味で勝負して決めていたりした。
まあそんな俺達夫婦二人なのだが、今、俺達は異世界に来ている。
正直、自分でも何を言っているのか、と思っているわけだが。
きっかけは恐らく、いや間違いなく、俺達夫婦の趣味、VRMMORPGだ。
正確には普通のMMORPGだったその作品、アストラルオンラインと言うのだが、そのアストラルオンラインが今年の超大型アップデートからVRMMORPGへと新生したわけだ。
そのアップデートが終わってしばらく、夫婦共に昔馴染みのギルドメンバー達と遊んでいたある日のこと。
先にレベルの上限を迎えていた俺に、遂に嫁のキャラのレベルが追いつき、上限を迎えた。
この度のアップデートからVRの他にも、レベル上限のキャラを転生させ、ストーリーは初期化されるが、ステータスを引き継いで更なる高みを目指すシステム。
いわゆる家庭用ゲーム機に存在する、強くてNEWゲームのようなシステムが実装された。
この転生システムを二人で試すのを楽しみにしていた俺達はいったんギルドメンバー達と別れ、嬉々として始まりの町へとキャラを移動させ転生するための神殿へと向かった。
二人揃って祭壇の前に仰向けに寝転がり、NPCの神官の祈りの言葉を聞く。
その時だ、急な眠気に襲われ、目の前が真っ暗になったのは。
後になって嫁もこの時急に眠気に襲われたと言っていたから間違いないだろう。
目を覚ました俺達夫婦が見たのは、青い空。
見渡せば、全く知らない草原の丘の上。
その丘に一本しか生えてない、木の根元で俺達夫婦は目をさました。