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魔王の視力は闇属性

 魔王城の地下深くの祭壇で、魔王は魔神から新たな力を授かる儀式をしていた。


「魔神様、貴方は魔王である私に最強の力を下さると言いましたね」

 魔神から闇の力を受け取った魔王は、魔神に話しかける。

<<あぁ>>

「漆黒の闇に包まれし魔力、漆黒の闇に包まれし腕力、漆黒の闇に包まれし知力。これらは中々に良かったです」

<<そうか>>

「でも漆黒の闇に包まれし視力だけは殺意湧きました。あからさまに失明ですよね、これ」

<<違う。漆黒の闇に包まれし視力だ。こっちの方が格好良くてありがたみがあるだろう?>>

「障害者を障がい者って書くような不要なありがたみです。いいから視力返してください」

<<ククク……この闇の力は永遠に貴様の力になるであろう。せいぜい勇者を倒せるといいな……?>>

「そんなカッコいい言い方しても『残念ですが貴方の視力はもう治りません』と同義語ですからね?」

<<ふははははっ! 力を与えてやったと言うのに、贅沢な奴め! だがな、我に勝てる奴などいない。むしろ視力と言う価値のない物を捨てれたことに感謝するのだなっ!>>

「じゃあ裁判所で戦いますか。『病弱な体を治す手術をしたら、意図しない失明が発生した』って言えば、賠償求める裁判もできると思いますよ。あ、あと今までの会話は録音してるんで証拠も残ってます」

<<え。や、やめてくださいよ魔王さん。ここは穏便に話し合いで解決するのが一番ですって>>

「権力見せたとたん腰が低くなったな」

 

 その時、扉から若い男が祭壇へとやって来た。魔王を倒すとされている、人間国の勇者だ。

「魔王っ! ここにいるなっ!」

「ゆ、勇者か!? くそっ、視力を無くした今この場に来るだなんて……」

 見えぬ勇者に、魔王は焦る。だがそれをみた魔神は静かに笑った。

<<ククク、我が手先である魔王よ。今こそ聖戦の時だ、命を燃やすがいい。どうせ貴様など、代わりのいる我の駒なのだからなっ!>>

「今の発言、パワハラと見て役所に提出していいですか?」

<<あ、ごめんなさい。やっぱり適当に頑張る程度で十分です>>

 魔神は役所に弱かった。


「ふっ。魔王、お前は漆黒の力を得たようだな。だが俺はそれに対抗する、聖なる力を込めた純白の力を手に入れたのだっ!」

 勇者は自慢げに魔王に話す。魔王は聞き覚えのあるその力に、戸惑いの表情を浮かべた。

「じゅ、純白の力だと!? もしや聖天使から授かると言うあの力か!?」

「その通り! まず聖なる力を込めた純白の心。俺はどんな悪にも染まらない! 魔王を倒す事だけを使命にしている!」

「洗脳は聞かないって事か……」

「そして聖なる力を込めた純白の魔力。貴様の魔力を打ち消すこの力は、お前では勝てない!」

「くっ。確かに私の力は聖なる力に弱いっ……!」

「最後に聖なる力を込めた純白の知力……。これによってテスト用紙は聖なる白に染め上がるのだっ! ……ところで純白ってなんて意味だ!?」

「あ、ひょっとすると勝てるかも知れんぞこの戦い」


 ……その年の魔王対勇者の戦いは、魔王の「あっちの山にもっとすごい魔王が飴ちゃんもって待ってたぞー」の一言で終わったと記されたそうだ。

お題:漆黒の闇に包まれし視力 必須要素:ギャグ

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