↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使徒戦記  作者: タンバ
第三章 マグドリア編
PR
135/147

第三十一話 攻勢開始

間が空いてしまい、申しわけありません。

今回から更新再開です。

基本は二日に一回。調子が良ければ連続でという形だと思います。


まだ小指が完璧ではないので、またお待たせしてしまうかもしれませんが、読んでいただけると幸いです。



 ルーザー率いるマグドリア軍の攻撃は、こちらに被害を与えたが、それ以上にその存在のほうがダメージはデカい。


「狂化に耐性のある兵士とユウヤと渡り合う黒騎士か……ったく、アークレイム軍だけでも厄介だってのに」


 ルーザーたちの襲撃か一夜明けて、本格的なアークレイム軍とマグドリア軍の攻勢に備えて、俺とレイナは砦の城で話し合いをしていた。


 とはいっても、話すことはそんなにない。

 情報を共有することすれ、対策はそこまで立てられない。


 なにせ、レイナはヴォルターの相手で手一杯になることは明白だからだ。


 ルーザーとマグドリアの狂戦士たちは俺がどうにかするしかない。


「ヴォルターの神威は水だ。近くの川にはたっぷり水があるし、空気中にも水分はある。あたしが周囲の風を操れるように、向こうも似たようなことができるだろう。悪いが、手助けはできない」

「わかってる。ルーザーは俺が止める。あとは登らせないようにすれば、互角くらいには持ち込めるだろ」


 狂戦士の強さは理不尽なまでの膂力とタフネス。

 だが、いくら痛みを感じない兵士でも矢の雨を浴びれば行動不能になる。


 昨日のような奇襲ではなく、正面から来るならやりようはある。


「それでも互角か……あたしも似たようなもんだろうな。援軍が来なけりゃあたしたちはどこかで終わる」

「そのうちエルトが来るさ。一度言ったことは守る奴だ」

「できれば日数が知りたいところだな」


 レイナはため息を吐く。

 エルトが素早く来るためには、俺たちと同じ方法以外に手はない。


 リカルドから情報を聞いたと言っていたし、連絡をよこしたときにはクロスフォードにいたと思っていいだろう。


 クロスフォードからブライトフェルンまで約一日。

 遺跡に入り、五日間のワープ旅行をして、俺たちと同じ場所に到着。

 さらにそこから後方の城まで移動し、待機中の軍と合流するには二日。

 そのうえ、この砦まで移動で一日。


 となるとこちらへ援軍としてエルトが到着するのは九日から十日後といったところか。

 こちらに連絡して、すぐに移動したとしても到着は十一月の四日から五日。


 現在は二十八日だから、約一週間くらい掛かる計算か。

 これは何もかもがうまくいった場合だが。 


「今日から一週間。前後はあるかもしれないが、それくらいでエルトは後方の軍を率いてくると思う」

「一週間ねぇ……正直、厳しいな」

「ああ。承知してる」


 問題なのはレクトルじゃない。

 ヴォルターだ。

 奴の神威は水。


 加えて、横には川。

 いざとなれば、こちらを強力な水攻めにできる。

 それを防ぐにはレイナの力が必要になるが、レイナがそこに力を注ぐと軍の指揮が甘くなる。


 それを見逃すヴォルターではないだろう。

 なにより、神威は体力を消費する。

 ヴォルターのことだ。抜け目なくレイナの体力を削りにくるはず。


 レイナが力尽きたとき。そのときが砦の寿命となるだろう。


「まったく……不利な戦はしない主義だったんだけどな?」


 レイナが恨めしそうに俺をにらむ。

 その視線に俺は肩を竦めて返す。


 それを見て、レイナが面白くなさそうに顔をしかめた。


「あたしを乗せておいて、反省の色はなさそうだな?」

「悪いと思ってないからな。大体、要塞から出ても不利は覆らない。マグドリアの狂戦士とアークレイム軍による追撃が待ってた。まだ壁があるだけ、こっちのほうが有利だろ? 褒められてもいいくらいだと思うんだが?」

「あたしならやれた」


 唇を尖らせながら、レイナはそんな負け惜しみを口にする。

 なら、そっちを選べばよかったじゃないかと言いたいが、いえば機嫌をさらに損ねるだけだろうし、胸にしまっておこう。


「はいはい」

「……あたしが籠城を選んだのはユウヤを信じたからだ。わかってるな? 約束は守れよ?」

「わかってるよ。しっかり守るさ。まぁ、当分は砦の反対側だし、無理だけど」

「それでも約束は約束だ。あたしが死んだら、殺す」

「とんでもない発言だな。それなら敵を殺してくれ」


 死んだら殺すとか、意味不明にもほどがある。

 そんな軽口を叩いていると、外が騒がしくなった。


 どうやら敵さんが動き出したらしい。


「さて、敵さんの歓迎と行くか。出迎えなしじゃ可哀そうだしな」

「確かに。けど、あんまり飛ばすなよ? これは長期戦だからな」

「わかってるよ。ほどほどにやるさ。最初のうちはな。ユウヤも無茶はするなよ? そのルーザーって奴が強いなら無茶して倒す必要はない」

「わかってる。適当に相手をして時間を稼ぐさ」


 そんな言葉を掛け合いながら、俺もレイナもそんな甘い相手じゃないことは理解している。

 適当にやって時間が稼げるなら苦労しない。


 全力でやって一週間稼げるかどうか。

 そういう戦いだ。


 まぁ序盤から本気は敵も出してこないだろう。

 アークレイム軍にとっては、所詮他国の戦。兵の損耗は避けたいはず。


 マグドリアにしても、ここまでレイナによってかなりの損害を与えられてきた。

 兵を消耗する無理攻めは避けたいところだろう。


 そういう向こうの心理がどこまで働くか。

 それによって、こちらの対応も定まってくる。


「さて……やるか」


 レイナと別れて、マグドリア軍方面に向かいながら、俺は左右の腰に差した剣を触る。

 せめてブルースピネルがあれば、ルーザーとの戦いも楽なんだが。


 そんなない物ねだりを考えつつ、俺は雄たけびを上げるマグドリア軍と相対するために城壁へと登った。




◇◇◇




 その日の戦いは終始、様子見だった。

 レクトルも後方からの指揮に留め、奇襲で姿を現した狂戦士も出てこない。


 普通のマグドリア兵による攻城戦。

 それに対して、こちらも普通に籠城戦で対抗した。


 被害は向こうのほうが上だ。

 ただし、こちらにも被害は出た。


 ごくごく少数の人的被害と、兵の過剰な自信だ。


 さすがにレイナ直属の騎士たちはそんなことはないが、そうではない兵士たちは自分たちに手も足もでない敵を見て、大いに自信をつけてしまった。


 これはやがて慢心へと変わるだろう。

 予断が許さない状況なのに、自分たちが強いのではという錯覚は油断につながる。


 問題は敵がどのタイミングでそれを突いてくるか。


「厄介な手を使ってくるもんだ……」


 アルシオンでの戦いのとき、レクトルは強力な敵として立ちはだかったが、神威に頼る傾向があり、付け入る隙が十分にあった。


 しかし、今回はそうもいかないようだ。

 自陣で策を練り、決定的な場面で神威を使ってくる策士へと変貌している。


 要塞から打って出るにしても、レクトルの居場所がわからなければ奇襲のしようもない。

 ルーザーから俺がいることも聞いているだろうに、出てくる素振りもないし、人間的にも武将としても成長しているということだ。


「仕留めそこなった代償か……」


 隙らしい隙が見えず、整然と布陣しているマグドリア軍を見つめながら、俺は呟く。

 要塞からは適度な距離を保ち、動いている兵士たちも統率が取れている。


 レクトルを狙わず、敵の攪乱目的で突撃したとしても、なかなか思うようにはやらせてはもらえないだろう。


「使徒は死に瀕する度に強くなる」


 どこぞの戦闘民族的な設定だが、実際そうなのだから仕方ない。


 アルシオンに攻め込んできたとき、レクトルは半人前の使徒だった。

 そして今、一人前の使徒して俺の前に陣取っている。


 だが、それは俺も同じこと。

 俺だって死線を潜った。


 長期戦というなら望むところだ。

 まだ自軍強化は使えないが、これから先、共に戦っていけば兵士の信頼も勝ち取れる。


 そうなればレクトルの狂戦士にも対応は可能だ。


「今度こそ息の根を止めてやる」


 あの日、テオドールに阻まれた一撃を。

 今度こそ、奴の首に叩き込んでやる。


 報いは受けさせなきゃいけない。


 罪には罰だ。


 因果応報って言葉を奴には思い知らせなくちゃいけない。

 そうでなければ、俺の気が済まない。


 心に湧いた憎悪の火をそっと奥にしまい込む。

 まだそのときじゃない。


 この憎悪を解き放つのは、もっと決定的なときだ。

 少なくとも、そのときまで砦の防衛を考えなければいけない。


 レイナを守るという約束もある。

 感情に流されるわけにはいかない。


 そう自分に言い聞かせて、俺はマグドリア軍の陣から視線を外した。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。