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夜間タクシー

 雨の夜景がタクシーの窓を流れ、蒸れた空気が服の隙間からじっとりと肌に絡みついてくる。


「雨ね」


 あたしの呟きがワイパーの音の間に浮かぶ。


「お嫌いですか?」


 バックミラーに運転手の視線。あたしは雨に滲む街を行き交う、俯き傘に顔のない人達を見やった。


「このモザイクは嫌いじゃない。ずっと降っていて欲しいわ」


「止まない雨も悪くないですね」


 うなずく運転手の顔もきっとモザイクに消える。

 あたしの顔も明日の雨に消えろ。

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