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ベルモットとシェリー

 空港のバーで会った行きずりの男は、明日戦地へむかうと言う。


「家族は?」


「だから軍人なんてやってるのさ」


 ドライ・マティーニを口に含んで吐かれた彼の言葉には、ベルモットの匂いが微かに香った。


「シェリーを」


 私の注文に驚く彼。私は甘いシェリーを口に含む。


「餞別」


 そして彼のベルモットの唇を塞いだ。


「なぜ?」


 わずかに唇を離して問う彼に、私は吐息をかけて答える。


「待つ人が欲しいから」


 そしてもう一度、唇を塞いだ。

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