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桃の花

 桃の花を髪に揺らし、きちりと着付けた和装姿で楚楚と歩く彼女の横顔を目で追うと、不意にその視線が交わった。


「あら、お兄様。どうされました?」


 私が答えに淀むと、彼女は口を押さえて小さく笑った。


「桃が咲いていたから髪に飾ってみたけれど、やっぱりおかしいかしら?」


 彼女は花を外すと「差し上げますわ」と、私の手に握らせた。


「ではお兄様、ご機嫌よう」


 桃の花言葉は“虜”であるという。

 桃の香が甘く手のひらに残った。

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