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夢やぶれて
テキストポイ「200文字小説コンテスト」参加作品
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歌手である妹が五年ぶりに戻ってきた。俺は妹を墓参りへ誘った。
夏の墓地は蝉時雨に包まれている。陽射しに焼けた両親の墓は、白く眩しかった。
水を撒き、二人で墓を磨く。そして花を生けて線香を焚き、手を合わせる。
「夢やぶれて……か」
目を開けた妹は、立ち昇る線香の煙を見ながら呟いた。
「そんなことを言いに帰ってきたのか?」
妹が俺を見る。
「親父もお袋も俺も、ずっとお前のファンだぞ」
泣く妹。俺はその肩を軽く叩いた。




