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渡れなかった踏み切りで

 毎朝同じ時間の踏み切りで、ボクは彼女に出会う。

 彼女はいつも遠い目で踏み切りのむこうを見つめながら、電車が過ぎるのを待っていた。ボクはそんな彼女の横顔を好きになってしまったのだ。

 でもボクは、そんな彼女に声をかける勇気がなかったんだ。

 ある日、踏み切りで事故があった。彼女は閉じる遮断機のむこうに踏み込んで行ったのだ。

 ボクに勇気があったなら、なにかがボクにできたのだろうか?

 踏み切りがカンカンと鳴っていた。

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