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乗合舟

 乗合舟で隣になった女は、大層な美人であった。


「お一人でどちらまで?」


「永代橋まで。夫がいますの」


 なんだ旦那がいるのかと、少し残念に思いながら話を続ける。


「『永代と かけたる橋は 落ちにけり きょうは祭礼 あすは葬礼』と、あの橋も落ちて久しいですな」


 話すうちに永代橋が見えてきた。大きな橋だが中央辺りに穴がある。落橋の跡だ。


「あそこから夫と落ちたのです」


「え?」


 気が付くと女の姿はなく、川面に波紋が浮いていた。

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