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短い夢に似た珈琲

 この珈琲店で頼んだ珈琲の味は、短い夜に見た夢に似ていた。


「どういうことだい?」


 向かいに座る彼が、珈琲に砂糖を入れながらあたしに訊く。


「そういうこと」


 彼の珈琲を指差して答えると、彼は笑いながら珈琲に口をつけた。


「砂糖を入れれば苦い夢も甘くなる」


「苦さに醒める夜が良いこともあるわ」


 舌に触れる苦味を味わうと、あたしは伝票を手に立ち上がった。


「バイバイ」


 驚く彼と冷めた珈琲を置いて、あたしは悠然と店を出た。

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