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夜の底の二人
夜の底に風が吹いた。
ひどく暗い闇だ。ビルの隙間にあるこの場所には、街の灯りも届かない。この嫌に生あたたかい風だけが、この澱んだ暗闇の中で感じられる唯一の感覚だった。
「後悔してる?」
僕の横で彼女が言う。
「ううん」
僕が否定すると、彼女は僕の手に触れた。
「ありがとう」
手を握り締める。あの時、僕が差し出した手を取った、彼女の手の感触を思い出す。
ビルの隙間の細い空が次第に紫色へと変わっていく。
夜明けは近い。
夜の底に風が吹いた。
ひどく暗い闇だ。ビルの隙間にあるこの場所には、街の灯りも届かない。この嫌に生あたたかい風だけが、この澱んだ暗闇の中で感じられる唯一の感覚だった。
「後悔してる?」
僕の横で彼女が言う。
「ううん」
僕が否定すると、彼女は僕の手に触れた。
「ありがとう」
手を握り締める。あの時、僕が差し出した手を取った、彼女の手の感触を思い出す。
ビルの隙間の細い空が次第に紫色へと変わっていく。
夜明けは近い。
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