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ぼくのたび  作者: 玲於奈
4/16

コンサートの指揮者

なし

「食うか?」


おっちゃんが手に持っていた


おりづめをほうりなげる

格子模様の紙に包まれた

折詰


みたことない物体


紙を乱暴にやぶって

あけてみれば

中身は

寿司だった


お刺身の

下のお米がかがやいている


腹がへって

なにもいえない


「先代からは味が

 おちたなあ


 仕入れをかえちまったのもだめだわ


 2代目はいいやつなんだけどなあ」


おっちゃんはぶつぶつぶつ・・・


と川に向かって何か言っている


寿司おりの

寿司なんて食べたことなくて

話半分に聞きながら

むちゅうで食べる


「まあ、いってみりゃあ

 このへんは

 おれっちの庭だなあ」


おもしろいことに

おっちゃんの話のおわりと


寿司おりの8つの寿司を

食べ終えたのが同時。


コンサートで指揮者が

合図したかのよう


おっちゃんは

だれにでも

言っている話なのか


話と同時に

ぴったり食べ終わった

ぼくを見て

あきれたようにおっちゃん

顔をちかづけて


「はらへってたんか」


ぽつりと一言


なにもこたえないぼく


なんかよくわかんない鳥が

頭上を川にむかって

飛んでいく


電車が鉄橋をわたっていく


おっちゃんのかおは

よごれている


寿司に気をとられて

気が付かなかったが


くさい。


なんだかよくわからないけど

へんな匂いがする。


かつては

かっこよかったであろう。

落ち武者。

平家の末裔。


「おっちゃん、かおう

 近づけて

 なんやねん」


「おれか、おれは自由人」


会話になってない。


一呼吸おいて


「自由にいきているやつさあ」


また、鉄橋を電車がわたる


なぜか、肩の力がぬけた

寿司おりがおちる





なし

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