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ぼくのたび  作者: 玲於奈
14/16

プレスリー

なし

おっちゃんが

師匠とよぶひと


その人がゆっくり

石ころだらけの

かわらをあるき

こちらにむかって

あるいてくる


午後も中盤とはいえ

河原なので

さえぎるものもなく

ぼくは

太陽を逆光にしているので

そのお顔はよくみえない


その逆光

ゆえに

なんだか

お仏壇の

ほとけさまか

まえに

学校の図書館でみた図鑑

奈良の

だいぶつさまのような

神々しさか

ひかりがさしているのかな


ますます

土手をあがって

近づいてきた

お師匠の

その姿は

さいきん遠いものが

よくみえなかった

ぼくにも

かなり個性的にみえる


そして

ますます

ちかづくたびに

よくわかってきた

そのお着物は

最新ファッション

というか


だぶだぶなかんじで


つぶれちゃた工場の

社長さんが

若い時

好きだったっていう

アメリカの

プレスリーとか

ギターを弾くひとみたいに

ながいすだれみたいなものが

たれさがっているかんじ


よくみたら

たくさん

服の繊維が

ほどけてるんだけど


お師匠さんは

手に

くろいかまをもってる


いまの

いましがた

ついさっき

川でじゃぶじゃぶと

あらったであろう

その年季のはいった

かまには

水滴がいくつも

ついていた


おっちゃん


お師匠が近づくなり

一言


「なんだい

 かたづけするなら

 するで

 ひとこと

 おいらにも

 いってくれよ」


急にいなくなった

お師匠に

ちょっと不満そうな

おっちゃんは

いきなり

そうきりだす


お師匠さんは

だまって

おっちゃの顔を

片手で

おがむ


おがんだ手に

かまの水がついて

手から

したたりおちる

だけど

お師匠さんは

なんにもいわない


「師匠

 このぼうず

 茶、

 はじめて

 ちゃ

 のんだってよ

 すんごく

 おいしかったってさ

 さっぱりしたって

 いってたぜ」


おっちゃん

耳がとおい人に

つたえるように

やたら

茶にアクセントを

つけて

大声で

しゃべってる


お茶のお礼を

いつしようかと

思っていたぼくをほっといて

どんどん

おっちゃんは

お師匠に報告していく


「師匠にも

 そのときの

 ぼうずの顔

 見せてやりたかったなあ

 すげえ

 ぼうずいいかおしていたぜ」


すこし間をおいて


「思い出すよな

 おれっちにも

 はじめて

 お茶たててくれた

 ときのことな」


お師匠さんは

なにもいわなかった

なし

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