川面
なし
目の前に
何かある
鼻先に
茶碗。
ひびがはいって
かけて
ひどく
よごれたちゃわんが
つきだされてた
「なんだよ
ぼうず
よんでんだから
返事くらいしろよ」
さっきから
なんども
よばれてたみたいで
おっちゃんは
ひどく
イライラして
不機嫌だった
黙って
そのまま
おっちゃんから
受けとった
うけとった
そのよごれた
茶碗の中をみて
驚いた
シェイクみたいな
どろっどろの
なんだかあわだてたような
みどりのものが
はいってた
こんなの
飲むんだろうか
これ、本当に飲めるもの
なんだろうか
いつも家のごはんのときは
サイダーのコップにはいった水で
ぼくは
お茶なんて飲んだこと
なかったし
お茶を飲む習慣なんてないけど
やっぱり
この場所だし
へんなもの
飲まされるんかな
なんかの仕返しされるんかな
って
思った
だけど
だされて
かなりの時間
ぼんやりしてたみたいで
おっちゃんも
すごく怒ってて
もう
どうでもいいや
なるようになれっと
思って
えいっと
一口でのんだ
緑で
苦いのかなって思ったけど
味が
すごくさわやかで
びっくりした
清涼感がある。
森の中を静かに流れる川
きらきらした川面
すずしくて
その川沿いにいるみたい
ぼくは
にがいって
かってに
思ってたから
すごく
あれっておもった
それをみて
ずっと
不機嫌そうな
おっちゃんが
やっと
ほっとした
「なんだよ
ぼうず
どうしちゃたんだよ。
こちとら
ぼうずが
あんまり
なんにもいわないから
さっきのオムライス
やっぱ
だめだったかと
おもっちまったぜ」
ふうっと一息ついて
「やれやれよかったぜ」
おっちゃんはすこし
考えたように
やっぱ
半生すぎたのか?
火の通しは最高の瞬間を
おさえてたように思えたが
いくら
とろとろ感でも
あそこまで
こだわるたあな
しかし
それをたべない
客も客だし
あの店の客層もだいぶ
悪くなっちまったか
まあ
ちょっと
おいらも散歩が
すぎて
その間にほっておかれた
オムライスが痛んでたか?
一歩まちがえば食中毒か?
おっちゃんが
一人
ひっそり静かに
ぶつぶつ
反省会をしているのを
聞いて
「さっきのオムライスってやっぱり・・・」
とぼくが
言いかけたのを
おちゃんはオーバーに
手をふってさえぎり
さもなにもなかったように
「そうそう
おまえに紹介しなくっちゃな
このお茶をいれてくれた
御師匠さん。
あれっ、師匠。
師匠、
どこいっちまったんだ
さっきまで
ここにいたのに」
みれば
かわべりに
くろいおかまを
あらっている
じいさんがいる
おっちゃんは
だいぶ
きょろきょろしていて
やっと
それにきづいて
おっちゃん
まぶしい太陽に
むかって
大きく手をふった
太陽が逆光で
よく見えなかったけど
よれよれの服を
きた
じいさんが
小さく
手をあげていた
なし