最終話 ハーレムの数はもう増えない
魔王レレガントを含め、全員、聞いていた。
「なにか、付け加えることは?」
ゼディスがレレガントに確認する。
レレガントの目的は神魔になることは間違いない。当時、ゼディスを裏切った理由とかは別の理由があるかもしれないと、確認を取る。
「だいたい問題はない。お前が腑抜けだったために、俺が代りに魔王となろうと思っただけだ。お前ほどの力があれば魔界統一も出来たのに、俺はいつもイライラさせられていた」
「それは、勘違いだ。他の魔王を甘く見過ぎじゃないか?」
「一番強い魔王だろ!」
「わずかな差だ。かならず勝つとは限らないし、痛いのとかヤじゃん?」
レレガントが歯軋りをしている。仮にも『苦痛の王』と呼ばれた男が何を言っているのだと。しかし、すぐに冷静さを取り戻す。
「まぁいい。どちらにしろ、もう終わりだ。いまさらお前が半分の魔力を回復したところで、勇者と7魔将の能力を手に入れた俺に勝つ方法があると思うか?」
「そう言っている奴が、だいたい負けるんだぜ? それに目玉は昔から剥き出し……つまり、魔王のままだぞ」
「それがどうした?」
レレガントは今さら自分が得た能力をゼディスが修得しようとしても、もう遅いだろうと考えていた。修得までには時間がかかる。その前に完全に消滅させようと考えているのだ。
ゼディスは勇者と7魔将に指示を出す。
「俺がレレガントを抑える。全ての能力を合わせた全力の攻撃を叩き込め」
「いまさら、魔王に言われてもね~。アンタの言いなりになるのは面白くないけど他に方法は無いしね。それで倒せんの?」
「俺を信じろ!」
「いままで、騙していましたけどね!」
と、ドキサと短い会話を交わし、あらゆる能力有しているレレガントの足止めを開始する。
それを見送ってから、全員で相談する。
最初に口を開いたのはグファート。
「どうする~? 騙されてたわけだし?」
「そうですね。私たちを利用する方法としては、あまり趣味のいい方法とは思えません。ですが……」
「シルバの言う通りだ。私たちに選択肢はない」
「とりあえず魔王レレガントを倒すことが先決ということだな、テト?」
エイスの言葉にテトが頷く。
そのあと、ゼディスの処分を考えればいい。ここでレレガントを撃ち漏らすようなことがあれば、地上にいる生物は全滅確定だ。
ゼディスの言葉をどこまで信じるか……と言うことになるが、いまさら疑っても仕方がない。
エイスは全員の魔力を具現化し、シルバが能力を一か所に集めていく『魔力破壊』や『魔力吸収』『能力強化』『無限再生』『多重実体』……その他もろもろが一か所に集まっていく。
白いランスと黒いランスが出来上がり、捻じれて一本のランスとなる。
さらに、そのランスに、ありったけの魔力を送って行く。時間がかかりそうだ。
それまでにゼディスがレレガントを抑えこめるか……。
「でも、このランスで魔王レレガントに効くのかしら?」
ブロッサム以外もみんな疑問に思っている。少なくとも魔王レレガントは『魔力反射』を持っている。こんなモノが反射されたら、勇者と7魔将は全滅だ。
ゼディスとレレガントが組んでいたとしたら……次々と浮かぶ疑問。しかし、その可能性を全員、すぐさま捨てた。ただ、ゼディスを信じる。
レレガントはゼディスの意外な動きに戸惑っていた。まるで先読みするような素早い動き。
「どうなっている!?」
「彼女たちが全力で戦っていたと思っていたのか?」
「手加減していたというのか? 死んでまで!?」
「俺が復活させるのを信じてたんだろ。だからお前に『セニードランドロー』が通用している」
ゼディスの目が魔力で包まれている。
魔王レレガントはすぐには『セニードランドロー』は使えない。一旦見た後、解析し、修得するまでに時間がかかる。
そのことはゼディスが一番よくわかっている。
だから、レレガントはすぐに勇者や7魔将の能力を使わなかった、いや、使えなかった。
『呪壁の指輪』で魔王の後ろに出るとゼディスは羽交い絞めにする。
「こんなことで俺を抑えたつもりか!! ……!?」
振り払おうとしたが動けない。オーラを使用し力を上げている。
そして、ゼディスがみんなに叫ぶ!
「いいぞ、俺ごとソイツで撃ち抜け!」
「な!? 何を言っている? 俺には『無限再生』なり『打撃無効』なり色々あるんだぞ!?」
「人間も魔族も、千年間、遊んでなかったんだぜ? それらの能力は彼らが千年かけて得たモノだ。それなら魔王である俺が遊んでいるわけにいかないだろ? 最強の能力を手に入れておいてやったさ、お前の為に……『能力無効』だ」
「能力……無……効だ……と」
「安心しろ。対象は俺と俺が触れている者だけだ」
「待て、待て、待て!! お前も死ぬぞ!!」
「いかんせん、苦痛に堪えすぎたせいか死に対して無頓着でな」
魔王レレガントは大暴れをする。能力が使えないだけで魔力は使えるのでゼディスに魔法を撃ち込むが、そもそも痛みが魔力に変わるゼディスを引き剥がすには至らない。
ただ、勇者と7魔将が戸惑っている。
「ちょっと、ちょっと、ちょっと、ちょっと~。そんなの聞いてない、聞いてない、聞いてないわよ!!」
「早く、そのランスを撃ち込んでくれ。俺も能力が使えないんだから、ずっと、押さえているのは難しい」
「そんなこと言われましても……」
ゼティーナⅡ世が戸惑う……いや全員、戸惑う。さすがにそんな予定ではなかった。
「どっちにしろ『好意の魔力』は解けてるんだろ。だったら俺に遠慮するな! それに、俺は魔王だし倒すべき相手だった……そうだろ?」
「私たちは……違う!」
「ルリアス、どっちにしろ、俺はお前たちが仕えていた魔王ではない。敵の魔王となるだろ? 問題ない」
切り出したのはシルバ。
「そうですね。関係ありません。相手は魔王です。しかも二人も魔王を倒せるのです。何か問題がありますか?」
「あんた!? ……くっ、そうね、問題ない」
スアックがシルバに掴みかかったが、シルバの拳が血が出るほど握られている。
他に方法などないのだ。あったとしても時間が無い。むしろ、急がなければ全てが無駄になる。
シルバが切り捨てるように言わなければ、わかりきったことすら決められなかったのだ。
だが、魔王レレガントは中止するよう叫び続けた。
「ヤメろ! お前たち! お前たちに力を与えたのは私だぞ! そうだ、7魔将は殺すのはやめてやる!いや、勇者たちも……なんだ何が望みだ!! 分かった、もう地上に来ない、これならどうだ!!
なんでもする! ヤメてくれ! 死にたくない、死にたくない、死にたくないっぃいい!!」
だが、白と黒の捻じれた魔力のランスが放たれる。
光の速さだった。
気が付いた時には魔王レレガントとゼディスを貫いていた。
二人の体を白と黒の捻じれたランスが突き刺さったままになり、体を破壊していく。ランスは、ゼディスの背骨を貫いているが魔力で辛うじて上半身と下半身は繋がっているように見える。
泣き叫ぶ魔王に対し、ゼディスはゆっくりと呪文を唱える。復活の呪文……。
レレガントはゼディスが自分だけ生き残ろうとしているのだと思ったが、その考えは違った。レレガントの魔力を使い、この戦いで死んだものに復活の呪文を唱えているのだ。
魔王の魔力量を使用すればおそらく、全員、蘇る。
ラー王国の第一王子をはじめ、ゴルラ中隊長やユニクス王国の兵士達、エールーン王国近辺の国々など……供物はレレガントの肉体! いや、骨までも捧げる!
「貴様っぁあっぁ!! 俺を二度と復活させないつもりかっぁあっぁ!!」
レレガントが苦痛に顔を歪ませる。
通常、他人の肉体を供物として復活呪文は使えない。だが、魔力が統一化されているため、レレガントの肉体でありながら、ゼディスの呪文で『怠惰の神』に捧げることが出来る。
初めから復活呪文をレレガントに使用することは出来なかった。距離を取られては使えないし、『魔力反射』などの能力もある。
彼女たちの作ったランスで二人を突き刺した状態で逃げられなくし、ゼディスの『能力無効』の状態で復活呪文を使わざるを得なかった。
「いやだっぁあっぁ、消滅したくないっぃい。最強の能力を手に入れ、神魔にもなれるんだぞっぉ!! なんで、なんで、なんでっぇえぇ、俺様がぁあっぁこんなところでっぇ」
全身の肉が毟り取られ血が噴き出し、蒸発していく。
ゼディスはこの激痛に耐えたのかとレレガントは思った。
途中までは死にたくないと思っていたのに、今はこの苦痛から逃れられるなら死にたいとすら思える。神にならなくてもいい。早く殺してくれと……。
その時間は、レレガントにとって無限にも近い時間に感じられた。
レレガントの肉体も骨も消滅する……全てが……神に捧げられた。
「魔王が消滅したのか?」
ゼロフォーが呆然とする。
全ての能力を会得した魔王が跡形もなく消滅した。
そのことにより空から徐々に刺しこんでくる光が差し込んでくる。
「終わったのかしら?」
「これで、終わってなかったら詐欺でしょ?」
ブロッサムの問いにスアックが答える。
「まぁ、拙者はゼディス殿がやってくれると思っていたでござるよ」
「調子のいいことを!」
葉弓とルリアスがゼディスに駆け寄っていく。
それにつられるように、みんなが、ゼディスに向かって走り寄る。
スケルトンでありながらゼディスが笑っているように見える。
「たくっ! スケルトンが笑っても気持ち悪いってーの!!」
みんなが手を伸ばした。
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が、触れる前にゼディスの骨の体は光の粒子となって消えた。
「え?」
何が起こったのかわからない。
「魔界に戻った?」
「違うだろう……。おそらく……この戦いの死者を全員蘇らせるには魔王の魔力が必要だと言っていた気がする」
「魔王レレガントだけじゃなく……ご主人様自身のことも言っていた……ってこと? そんなの!!」
空を覆っていた黒い雲は一切なくなって、綺麗な晴れ模様となっていた。
町はアンデットがいなくなり、魔王が倒されたのだと確信した人々が歓喜の声を上げていた。
勇者と7魔将が倒してくれたのだと……。
表に出なかった面倒臭がりの男がいたことを町の人たちは知らないまま第二次魔将大戦は幕を閉じた。
エピローグがあるため
もうちょっとだけ続くんじゃ!




