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洞窟の中へ入ってみよう

ガシャーン!


洞窟の前にいたスケルトンをドワーフ二人が破壊していた。

スケルトン相手にソードやレイピア、槍と言った類の武器は効きづらい。

ハンマーや斧などが有効でドワーフが得意とするところだ。

もっとも二人とも斧であるが…。


「行くと決めたらさっさと行動に移した方がよかろう。」

「いや、少し待ってからの方がいいだろう。

各部屋に戻ってからの方が敵が分散している可能性が高い。各個撃破が基本だ。」


仮にもドキサが小隊長らしく判断する。

時間をずらすために簡単な保存食を口にした。

このあとは連戦になり食事がとれる機会があるかわからないからだ。

そして、その後は準備運動よろしくスケルトンを砕いていた。


「私たちの出番はありませんでしたねー。ゼディス様。」

「そういえば何で俺に『様』付けになったんだ?」

「それはワードックは主人と認めた方に忠誠を尽くし…」「そこ!イチャイチャしない!」

「なんですか!ドキサちゃん!やきもちですか!」

「違うわよ!そんなわけあるか!今は戦場なんだから!」


イライラとした様子でドキサが近づいてくる。

ムムムッと睨み付けるショコ。


「骨は何にももっとらんの。」

「いやロングソードとレザーシールドがある。」


言い争っているドキサとショコをかき分け、剣を拾い上げる。


「なんじゃ、おぬし、ロングソードも使えるのか?」

「短剣専門じゃないし、ロングソードが使えないで冒険者になんかならんだろ?」

「ならなんで、今までロングソードを使わなかったんじゃ?」

「お金がもったいないから、拾ったものでやりくりを…。」

ドムッ

「ぐはっ」


ドキサ恒例、鳩尾パンチ!


「命を守るものを最優先してお金をかけないでどうするの!?

そんなんじゃぁ戦場で真っ先に死ぬわよ!」

「まったくです。ゼディス様は自分の命を粗末にしすぎます!」


(あれ~?さっきまで争ってたのに…。)


と思いながらロングソードと盾を拾って装備する。

さすがにレザーアーマーくらいは着ている。


「それよりも洞窟に入るからランタンを用意しないと…。」


適当に話を打ち切るために、話題を変えようとした。


「ドワーフはインフラビジョンが使える。」

「私もドワーフだから使える。」

「ワードックは基本夜行性なので夜目が効きます。」

「暗闇が見えないのは俺だけかよ!」


インフラビジョン…温度の差で物質を認識できる。

熱いモノは赤く、冷たいモノは青くみえるサーモグラフィーみたいなものらしい。

「くっそー」と思いながらランタンに油を入れて火口箱で火をつけ準備万端。

洞窟の中に入ると…。


「あら、明るいわね。」

「当然じゃろ、なにせ奴らにも人間がいるんだ。洞窟内が暗くてはすすめまい。」

「あっちこっちにランタンがぶら下がってますね~。」

「無駄かよ!!」


折角つけたランタンを消すと出口においておく。

持って行ったところで邪魔だし帰りに回収すればいい。

盗まれたならその辺にかけてあるランタンを拝借すればいい。

納得いかないゼディスを尻目に気配を抑えて3人は進む。


中の様子は洞窟とは違っていた。

遺跡…と言った方が正しいだろうか…。石壁に石畳、正方形の大きい通路。

ただ、その石壁も石畳も長い年月のせいでどこもかしこも崩れ落ち、原形をとどめているところは少ない。


「なるほどね、これなら盗賊やゴブリンが暮らすにはもってこいというわけね。」


ランタンが付いているとはいえ薄暗い通路を歩きながら別れ道を進んでいく。

人の心理か魔物の心理か、安全を確保するために一番奥を占拠する。

そこから順に範囲を広げていくために、入り口側は手薄になりやすい。そのための見張りでもある。

この辺りはのんびりと進めると思うと口数も多くなる。


「罠なんかは無いんじゃろうな?」

「ショコがそのへんは何とかしてくれるから大丈夫だと思うわ。」


鼻と耳を動かしながらショコが先頭で進んでいる。

並びは先頭がショコ、ドキサ、後方がゼディス、ドンドランド。


「腐った扉なんかもあるんじゃな…。」


通路の横には一定の感覚で扉だったものが配置されている。

そこはそれぞれ部屋になっている。大きさは大抵が広く、窓だったような窪みもある。が、洞窟に埋もれてしまっていて岩や槌に阻まれている。

部屋の中は薄暗くランタンは備え付けられていない。


「中には何にもいませんね~。お宝もなさそうだし…。」

「俺たちの目的はお宝探しじゃないから、関係のない部屋はとりあえず素通りでいいんじゃないか?」

「そうじゃな、生き残れてから調べればいい。」

「縁起でもないこと言わないでちょうだい。」


鼻で前方を確認していたショコが手で全員に止まるよう合図を出す。

直線状の先に薄らと大きな扉が見える。

この遺跡のつくりからして、大部屋なのだろう。武器を構える。


「ショコ 敵は?」


当たり前のように小声でドキサがショコに尋ねる。


「人数は多数…5~10人前後じゃないかな~。スケルトン…とゴブリンだけ…だと思う。」

「匂いだけでわかるのか?」

「だいたいですけどね~。」

「まずはゴブリンを狙いましょう。私たちが潜入したことを連絡されるかもしれないわ。」

「スケルトンは連絡はせんのか?」

「わからないわ。でも、連絡出来なそうじゃない?」


確かに簡単な命令を聞くだけの創り上げられたガイコツだ。複雑な命令には反応できない。

たとえ連絡が出来たとしても、人数や種族などは喋ることが出来ないので伝えようがないだろう。

そのかわり、戦闘力はゴブリンよりも上だ。放っておくと厄介ではある。


「そんなわけでスケルトンは俺が引き受けよう。」

「どんなわけで?…それはいいわ。でも、アンタ一人でどうにかできるの?」

「なんと俺は神聖魔法が使えるのでーす。」

「…ターンアンデットね」


ターン|(回転)アンデット|(死者)

神聖魔法の一つ…アンデットを追い返す呪文。

成功すれば追い返せるが失敗すると何にも起こらない。

レベルの高いターンアンデットなら成功すれば破壊することも可能である。


「便利じゃのう。ワシもどっかの神様の信者になろうかの…。」

「ずいぶん罰当たりな発想ね…。とりあえず、スケルトンは任せるわ。

作戦はスケルトンはゼディス任せ…私たちはゴブリンを他の部屋に移動させないように撃破!」


4人は頷くと扉を蹴り開け踊り込んだ。


中の広さは舞踏会が開けそうなほどの部屋で上に続いていただろう柱や階段が完全に壊れている。

ゴブリン3匹、スケルトン4匹。

ゴブリンの人数は丁度いい。一人に一匹で当たっていく。


「不浄なるものよ!この場より立ち去れ!ターンアンデット!」


ゼディスの掲げたロングソードが光る!

スケルトンたちは…一体も壊れもしなければ追い返されもしない。


「うぉおおい!何してんの!?」

「失敗した!!」


スケルトンは一斉にゼディスに襲い掛かる。

彼らの武器は一様にロングソードとレザーシールド。

ゼディスと同じ装備で剣と盾がガキン!ガキン!と混じり合い火花を散らす。


呆れた3人だったが、目の前のゴブリンを数回切り合っただけで屠ると援護に駆けつける。

それぞれがスケルトンと一対一の形をとる。

ゴブリンより強いとはいえ初級冒険者レベルの相手である。

苦戦を強いられることなくそれそれを破壊できる。


「ふぅー…恐ろしい敵だった!」

「恐ろしいのはアンタだよ!こんなバカに任せるべきじゃなかった…。」


ドキサはつかれたように肩を落としうなだれる。

ショコもドキサと慰めるように肩を叩いて苦笑いしている。


「神様なんて当てにならんもんじゃなぁ…。入信は考え直した方が良さそうじゃ。」

「待て待て、ドンドランド。傷なら確実に治せるぞ!」

「今回は誰も傷ついてないですけどね~。ゼディス様が引きつけてくださったおかげで…。」

「…とりあえず、この部屋を探索しましょう…。」


一回の戦闘で想像以上の疲労を強いられたドキサがみんなに手分けするように促す。

広い部屋だ。とてもではないが4人で捜索できることは限られている。

といっても、相手もこんな広い部屋に仕掛けや、宝物などを隠すわけもない。

探すものは、ゴブリンが何か持っているかと、扉。

扉は入ってきた以外に3つある。扉の確認はショコが担当する。


彼女は今迄からもわかるように盗賊技能を有している。

「盗賊技能」であって「盗賊」ではないことを理解しておいてもらいたい。

盗賊技能は敵の感知や罠の確認、解除、扉の鍵を開けたり高い壁を登ったりと重宝される。


ゼディスは3人が探索している間、考え事をしていた。

(もしかして…ここが当たり(・・・)か?)


「所詮、ゴブリンに大事なモノなんて持たせないか…。」

「こっちも同じじゃな。スケルトンは武防具だけじゃ。」

「全部の扉は罠はないみたい。どうする?」

「そうね…。優先するのはローブの男かしら?」

「エルフはどうするんじゃ?」

「どっかに監禁されてるでしょ。それなら鍵は…」

「ローブの男よね~。」


なら、まっすぐの扉だろうっという結論に達する。

わざわざ移動しづらい場所に陣取ることはないだろう。

この場所が散策されているとも知らない。

おそらく目的であるエルフを手に入れて逃げるだけであろうから、できるだけ簡単に移動できる場所を選んでいる可能性が高いだろう、という結論。

陣形を元に戻し進んでいく。


何度か多少大きな部屋にいるゴブリンに遭遇したが、問題なく片付けていく。

見過ごしていくと背後を取られて厄介だから、確実に潰しておくのが万全の策だろう。

それにしても人間系の敵と遭遇していない。


「やっこさん達、固まっているみたいだな。」

「人間同士がバラバラにいる利点がありませんものね~」


そうすると相手は大人数だ…傭兵3人、盗賊1人、神官1人、ワータイガー1人、ローブのヤツ。

それにオーガがいてスケルトンも操る。

人数を確認していることに気づいたのかショコがさらに敵の人数を足していく。


「表にいた連中だけじゃありません。おそらく中にも防備の為にゴブリンやスケルトンを配置していたみたいです。」


確かに外から来た人数だけだと、中にいる人数が合わない。


「そうなると、最終目的地の人数は不確定ね…。」

「ゴブリンやスケルトンだけで終わらせてくれればいいんじゃが…。」


そんな話の中 いくつかの別れ道でスケルトンやゴブリンに遭遇。

撃破していったが、洞窟が広いせいか援軍が来ることはない。


一休みした後、ショコが扉の前で再び止める。

ゴブリンやスケルトンには慣れてきていたから、小声で合図するだけだったが中にいるのは別のモノだったらしい。


「どうやら この部屋の門番はオーガ2体みたいです。」


大柄の魔物と対峙しなければ先へは進め無さそうだった。

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