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千年前・・・

魔王は崩れた城の王の間で椅子に座り頬杖をついていた。


全身…骨、いわゆるスケルトンで真っ黒のローブといくつもの指輪。

玉座には飾りのついた大きな鎌が立てかけられて8人の勇者を暇そうに眺めている


剣神アルス、賢者ローロット、大神官ゼティーナ、暗黒斧ドギニ、

獣神ジャンガード、エルフの王エリス、破壊王バーキュ、魔族レレガント


一人は魔族で勇者として名を残すことはなかった…。

女は神官だけだった。


魔王は8人に囲まれても立ち上がろうともしなかった。


「レレガント…7魔将のお前が私を裏切るとはな…」


レレガントに声をかける。怒りの感情は声にはない。

ただ単になぜ裏切ったかだけに興味があっただけだった。


「悪いが俺は人間側に着く…こいつらに助けられた。

あのままココにいたら俺は愛とか友情などの大切さを」「もう いい!」


つまらない説教を聞いたというようにレレガントの話を玉座を叩き砕き打ち切る。


「立て、魔王!

さすがに座ったまま死ぬのも嫌だろう?!」


アルスの声が響く。

その声で8人の勇者はそれそれの戦闘態勢に入る。

一部の隙もない。


「くっくっく…かまわん。俺の前までこれたんだ。ハンディーをやろう。」


全く立ち上がろうとしない魔王に全力で襲い掛かる。

魔王が油断していることは百も承知だった。

それでもこの時の勇者たちは誰一人として魔王に勝てる気がしなかった。

ローロットは全員の武器に最大級の魔法で強化をするし、ゼティーナは防御魔法を全員かける。

力を温存していたアルスの剣が青白く光り魔王を突き刺す、逆に黒い閃光の斧をドギニが振り下ろす。

強力な精霊魔法が城ごと破壊しそうなほどの威力で魔王に襲い掛かる。

だが、声を上げたのは獣神ジャンガードだった。


「レレガントが!!ゼティーナ!!」


血を吐きゆっくりと倒れる。

魔王は無傷で片手をあげレレガントを指さすようにしていた。

それっだけで膝を付き崩れている。


「攻撃の手を緩めるな!アイツの指先に気を付けろ!」


ゼティーナはすぐにレレガントに回復魔法をかける。辛うじて息をしている。

放っておくわけにはいかず、彼女たちを守るためにバーキュが壁となる。



全く歯が立たなかった。

死人は誰も出ていないが魔王は立ち上がることも鎌を持つこともなく未だ頬杖をついて座っている。

それに比べて勇者たちは満身創痍、額から血は流れ骨も何本も折れている。

立っている者などいない。片膝…両膝をついて倒れている。

魔王は座ったまま 指先から放つ魔法だけで勇者たちを片付けていた。


「こ…こんなに…。」


力の差を見せつけられた。

7魔将と互角にわたり、仲間にも引き入れ、魔王と互角の戦力だと思っていた。

蓋を開けてみればなんということはない、勇者や魔将軍など何人いようと関係ないのだ。


重い腰を持ち上げる…。


「さて勇者諸君、裏切り者をこちらに渡していただけるならお前たちを見逃してやろう。」

「そんなことできるわけあるか!最後までオレたちは諦めない!」

「魔族を庇ってここで全滅をするなど、馬鹿らしいとは思わないか…

というか、思わないから魔族を味方に引き入れたんだろうな。

どちらにしろ、お前たちに選択権はない。俺が勝手にレレガントを連れていく。

次は千年後に遊びに来てやる。それまで裏切り者で憂さ晴らしをしていてやる。」


魔王はレレガントに向かい歩いていく。

勇者たちは最後の力を振り絞って、その歩みを止めようとしたが無駄だった。

レレガントの頭を骨だけの手で鷲掴みにすると、その場からスーッと魔王と一緒に姿を消した。


魔将大戦の結末は魔王が引いたことにより終結を迎えた。

長い年月の間に湾曲した話が7人の勇者が魔王を倒したということになってしまっていた。








林の中にその洞窟はあった。100m強、離れたその場所で準備を整えていた。

あまり近くに馬車を止めるとゴブリン達に気づかれてしまう。

出来るだけ気配を消して4人は洞窟を目指して進む。100mなんてすぐな距離だ。

木陰から洞窟入口の様子を伺う。


「!?」


4人は呆気にとられる。

見張りがいる。それもスケルトンの…。

ゴブリンは頭があまりよろしくない。見張りを立てるという習慣はないが

ゴブリンキングやゴブリンシャーマンといったちょっと賢いヤツになるとゴブリンを見張りに立てる。

だが、今回の見張りはスケルトンである。

死人使い(ネクロマンサー)のゴブリンがいるという話は聞かない。


「一体どういうこと?」


ドキサが首を傾げる。

スケルトンは一体だから倒すのはわけないが、その後のことを考えているのだろう。


「魔法使いがゴブリンとスケルトンを操っておるんじゃないか?」

「どーでしょーねー。ひょっとしたら魔族かもしれませんよ?」

「どうも、悪い方向に話が転がっていっているみたいね…。」


ゴブリン退治なら冒険者ランクD~Cだが、魔法使いや魔族がかかわってくると普通はBランク以上だ。


「イヤな仕事を受けちまったな…。」


ゼディスがぼやく。


「仕方ないじゃろ、受けちまったもんは…。」


キャンセルもできるがその後しばらくは冒険者ギルドではDランク以外の仕事はできなくなる。

要するに貧乏生活決定である。受けた以上はやらざるを得ない。


「正規兵が同行人になるような仕事だよな…。」

「運が悪かったと思って諦めてちょうだい。」

「!?…誰か来ます!?」


ショコが鼻をピクピクさせたかと思うと、警戒をみんなに促した。

指示した方向はゼディス達と反対側の街道に近い茂みの方だった。

かなりの人数の足音だ。…ざっと10人前後か?


茂みから何人かの男が出てくる。

初めに姿を現したのは盗賊風の男とゴブリンだった。


「こんなに上手くいくとは思いもしなかったぜ。さすが旦那だ!」

「ゴブゴブ!」

「夜襲をかければ軍と言えど大したことはないからな。」


当たり前だというような雰囲気で、ワータイガーの男が出てくる。

いでたちはハードレザーアーマーに大型の斧。返り血を浴びたらしく赤く染まっている。

そのあとにオーガが現れる。身長は2mほどで知能は低く怪力の怪物だ。

魔法で言うことを聞かせることができるが、いうほど簡単ではない。

ゴブリンやエルフを食べるという話すらある。

そしてそのオーガがエルフを担いでいる。食糧…と言うわけではないだろう。

鎧を着て 気を失っているらしく全く動かない。


(本当かよ…エイス…じゃないか…)


ゼディスは呆気にとられる。

たしかにエルフなんてそうそういるわけでもないから、もしかしたらと思ったら案の定エイスである。

だが、話がややこしくなるといけないので、声には出さないで置いた。


「エルフか…なんでアイツらはすぐに問題を起こすんじゃ。」

「あの~別に問題を起こしたかどうかはわからないんじゃ…。」

「いや、問題を起こすでしょ。エルフだもん。」


ドワーフの観点ではエルフ=問題を起こすらしい。

ショコのフォローは何の役にも立たなかった。


まだ、行進は続く。

ゴブリンが数匹、周りを気にしながら出てくる。

それは敵を警戒してではない。味方(・・)を警戒してだ。

ゴブリンの合い間を縫うようにスケルトンもぞろぞろと歩いている。

その様子にゴブリン達は落ち着かない様子である。

さらにもう一匹オーガが続く…その後ろに傭兵っぽい一団がいる。

戦士風の男が3人、神官風の男が1人、ローブを深く被った人物が1人…。


ゼディス達は息を殺す。

彼らがゴブリンやスケルトン、オーガと違いレベルの高い気配を醸し出していたからだ。


幸い気づかれることはなかった。

見張りにいるスケルトン以外は全員、洞窟の中へと入っていった。


「厄介過ぎるじゃろ!」


開口一番、ドンドランドが小声で叫んだ。


「まさかあんな連中が巣食っていたなんて予想外でした。」

「それにいまいち、目的がはっきりしないわね」

「エルフじゃろ?奴隷にすれば高値で売れるらしいじゃないか。ワシは絶対お断りじゃがな。」

「それにしてはこの規模は多すぎないか?しかも軍を襲ってまで狙う獲物とは思えない」

「軍にエルフがいるのも気になりますね…」


エルフが人間社会とかかわらないことを考えてショコが疑問を提示する。


「あれがユニクス王国のエイス将軍…か?」


ドンドランドが思い出したように口を開く。

その言葉は重かった。

夜襲とはいえ軍を襲い、敵の将軍を捕えるほどの力があるということになる。


「残念だけど…この仕事は降りた方がいいかもね。私も中隊長に進言しておくわ。」


普通に考えれば妥当な判断である。

わずか4人でどうにかなる相手だとは考えづらい。

洞窟内なら小分けで戦闘が可能だろうが、連戦になることは必至で休む暇がない。

相手には魔法使いもいる。


「本当にこんな仕事受けるんじゃなかった…。」


ゼディスがため息を吐く。


「それじゃぁ馬車に戻りま」「いや、このままゴブリン退治+盗賊退治をしよう。」

「正気か!」

「無理じゃありませんかね~?」

「無理強いはしないが、俺一人でもやる」

「なんでそんなにエルフがいいわけ!?女なんて山ほどいるでしょ!」


ドムッ

ドキサがゼディスの鳩尾にパンチする。


「ぐはっ!」

「そうですよ。たとえば私とか!」

「ショコは黙ってなさい!」

ドムッ

「ぐはっ!」


ショコがうずくまる。


「確かにエルフとはいえ見殺しにするのは後味が悪いからの。」


ドンドランドがヤレヤレと言った感じで「若いから見逃せないか」と付け足した。

もっと漠然とした不安がゼディスにはあった。

エイスが何かの儀式に使われるのではないかという…。

ここで遅れると取り返しのつかないことになりそうな気がしていた。

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