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修復できるの?

 なんとかエッチで巨乳のダークエルフを追い返しました。『都合が付いたら、また会いに来る』などと敵とは思えないようなセリフを帰り際に吐いていましたが……。

 それにしても、ゼディスさんは巨乳好きなのでしょうか? 一概にそうとは言えませんが、このパーティーには巨乳が多いような気がします。

 平均以下はドキサさんのみ。流石の私もドワーフには負けません。ですがその次が私……これでも一般女性並みだと思うのですが……。次にシンシスさん、いや、彼女とはほぼ互角! 紙一重のハズ。その次にショコさん……意外と大きいです。獣人だからでしょうか……そんなことはないですね。そしてスレンダーなはずのエルフのエイスさん……彼女はエルフの設定を無視して巨乳です。どうなっているんですか一体!納得できません。

 もし、万が一、ゼディスさんが巨乳好きだった場合はピンチじゃないですか!? その場合は王族になれることを餌に釣るしかありません。

 さらに貧乳派だった場合は、もはやドキサさんに勝つ手立ては一切ないじゃないですか!? そう、確かにこのパーティーは『勇者の力を受け継いだ者』の集まりに近いわけです。ですから、ゼディスさんの趣味とは限りません。そうなれば、貧乳派の可能性も捨てきれないわけです。


 そもそも考えがおかしくなってきています。私は『私の意志に関係なく』ゼディスさんを『好きにさせられている』わけですから、こんなことを考える時点で間違っているわけです。

 そうゼディスさんが私に尽くすべきなわけです。ですが、彼には私の姉を救っていただいて『奴隷になる』と約束してしまっているのです。その点を鑑みまして『奴隷』ではなく『妻』あたりが……。


「シルバ、なにクネクネしておるんじゃ? サッサと行くぞ」


 ついつい妄想に更け込んでしまい、ドンドランドさんに変な目で見られてしまいました。

 今は町に買い出し中。食品など買いに出たことがないので、私に買い物を教えるためにショコさんとドンドランドさんについていくことになりました。

 ちなみにゼディスさんは屋敷に閉じ込められて、ドキサさんとエイスさんにド突きまわされている最中です。シンシスさんが回復魔法をかけますから、安心ですね!


「なんで、似たようなお店があるんですか? 大きいお店を一つ作ればよろしいのに?」

「そこから説明が必要ですか……えーっとですね~」


 ショコさんに呆れられてしまいました。

 需要と供給や価格や品質の違い、経営方針など、いろいろな要素があるようです。どれもこれも自分なりにお金を稼ぐ方法らしいですが、考え方が違えばその分、お店は増えるとか……自由競争というシステムが良いものを安くしていくらしいです。


「その辺は実際に見て回った方がよかろう。じゃが、それは帰りじゃ。まずは行くところがある」


 ドワーフの足取りでズンズン進んで行きます。どうやら、商店街とは別のところ。冒険者などが増えてきているところを見ると、冒険者ギルドでしょうか? しかし、お屋敷を買ったとはいえ格安でしたのでまだ、お金はあるはずです。 

 やはり、冒険者ギルドではなかったようです。ショコさんがしきりに鼻をクンクンとさせています。


「凄い鉄の溶ける匂いですね~」

「武防具の店を探しておるからな」

「ほう、冒険者ギルドではなく武防具屋でしたか!」


 それはそれで興味があります。武器は折れてしまったとはいえ『アルスの剣』以外あり得ませんが、鎧と盾は新調したい所です。


「しかし、これだけお店があると良いお店を探すのは至難の業ではありませんか?」


 先ほど聞いたショコさんの話では、沢山のお店を見比べなければならなくなってしまう。しかし、ドンドランドさんは躊躇なく進んでいきます。

 ショコさんも戸惑っているようです。


「あ、あの~。何を基準に進んでいるんですかぁ?」

「良い店に決まっておるじゃろ」

「え~っと、どうやって、そのお店がわかるのかということなんですけど……」

「ドワーフじゃからだ」


 まったく的を射ない回答……ドワーフだと武防具の良いお店がわかる理由がわからないのですが、どうも説明してくれる気はないらしいです。


「あまりいい店が無いのぉ……ここが一番ましか……」


 かなり大きいお店で扉の前には二体のフルプレートの鎧がハルバートを持って飾られています。テレサのお屋敷にいた生きた鎧(リビングアーマー)にそっくりです。ここのお店で作られたのでしょうか?

 ドンドランドさんは両開きの扉を開け、全く気にせず入って行きます。ショコさんも私と同じことを思ったのか、注意深く鎧を見ながら中へ、そして私もそれに倣っていつ鎧が動いてもいいように気を配りながら……。


 中は豪華なシャンデリアが飾ってあり、広い空間に数多くの武防具が並べてありました。ロングソードで見た目的には同じものがズラリと……よく見ると値段が違います。刀身も値段により切れ味が増しているようです。装飾に凝ったものなども値段が高い……なるほど。お城で使っていたモノは切れ味が悪く装飾の凝ったモノだったようです。


 お店の人でしょうか? 男性がすぐにこちらにやってきて案内を買って出てくれます。確かにこれだけの数があっては探し物はすぐには見つからないでしょうから、助かります。


「どのようなご用件でしょうか?」


 ですが、言葉は丁寧ですが上から下まで嘗め回すような目つきで、私たちを確認していきます。あまり良い見た目ではなかったため、がっかりしたように見受けられます。


「えーっとですね~、ご存じかわからないのですが武防具商のエトリックさんの紹介で来たんですけれど……」


 ショコさんがお屋敷探しを手伝ってくださった武防具商人の名前を出しましたが、私の記憶ではここを紹介された覚えはないのですが……よろしいんでしょうか?

 よろしいか、よろしくないかは置いておきまして、その効果は大きかったようです。


「エトリック様の!? す、すみません、ただ今お呼びいたします」

「え?」


 ショコさんがキョトンとなされていますが、ドンドランドさんは全く気にする様子もなく、その辺の武器を見て回っています。手にとっては振り回し……それは、物凄い高級品のようですが、大丈夫ですか?


 先ほどのお店の人が太っている方を連れてまいりました……というか、エトリックさんご本人?


「どなたかと思ったら、ゼディス様たちのお仲間の方々でしたか! この店のことを聞き及んでいたとは有り難い限りです。どの武器も一級品ばかり取り揃えております。もちろん、見やすいようにするために昼間でもシャンデリアを付けているんですよ」


 なるほど、日が高いのにシャンデリアの明かりがついているのはそういうわけでしたか。配慮が行き届いているようです。


「すまんが、武器工房があるじゃろ? 見せてもらえんか?」


 エトリックさんの話にまったく興味無さそうなドンドランドさんが話を進めていきます。


「申し訳ありませんが、企業秘密……というモノがありまして……」

「この工房である剣の修復を頼めるかどうか、この目で見んことには頼めん!」

「では、その剣をこちらにお出し下さい。こちらで判断いたします」

「悪いが修復出来ると判断できなければ見せられん」

「まさか……盗品ではないんでしょうね」


 どうやら『アルスの剣』を直せるか、ということをドンドランドさんは考えていてくれたようです。確かにおいそれとは人に見せられるモノではありません。エトリックさんを信用していないわけではないですが、国宝ともいえる代物です。街の話題に登れば大変なことになるのは必至!

 そこからショコさんに交渉が変わっていきます。


「盗品ではありませんが、信用のおけるものでなければなりません。そちらが企業秘密なら、こちらは国家秘密といっても過言ではないモノとでも言っておきます。もし、こちらのお店で受けられないようでしたら、腕の良い鍛冶師の紹介をお願いします。時間も場所も値段も問いません。すべて、そちらの条件を満たす覚悟がこちらにはあります」

「それはまた、ずいぶん大きく出ましたね……国家秘密ですか……話半分にしても商人としては魅力的なお話ですね~。それで私を頼ってきたわけですね」


 明らかに偶然だと思うのですが、ショコさんは無言でうなずいています。交渉というのはこういうことでよろしいんでしょうか? とにかく『アルスの剣』が直るならそれに越したことはありません。


「わかりました。奥の部屋にどうぞ。工房長を呼びましょう」


 エトリックさんは何人かの店員に話をし、先に私たちだけが部屋の応接室に通されました。

 応接室といっても、少し普通の応接室とは異なっているように見受けられます。とくにテーブルが頑丈に作られており、真ん中は柔らかいクッションのようなものが置かれています。机の横には白手袋も置いてあります。

 この場で武防具の鑑定が出来るようにしてあるのかもしれません。


 五分~十分するとエトリックさんとドワーフのおそらく工房長さんが入室してきます。工房長のドワーフさんはよく見ればわかりますが、一目見ただけではドンドランドさんと区別がつきづらいです。どちらも小柄で髭が沢山……目つきがドンドランドさんの方が厳しい感じですか。あとは鼻の形とかも少々違うようです。


 エトリックさんが口を開く前に、ショコさんがいくつかの注意を先に話します。


「まずは、このことは他言無用です。もし、他に漏れた場合はそれなりの覚悟をお願いします。お嫌でしたら、この場で断っていただいてもよろしいですが?」

「……ここまで来たら、引き下がる気はありません。もちろん他言は致しません」


 口約束だが、ショコさんはそれで納得する。書類を作らせるわけには絶対に行かない、そして相手もそれは分かっているらしい。

 『それなりの覚悟』はお店が潰されるか、命を奪われるか……までの、可能性があるという含みがあることは私からでも感じられました。

 ショコさんが心配しているのはエトリックさんだけで、ドワーフの口の堅さは筋金入りだから問題はないと思っているようです。しかし二人に確認を取ることは忘れていません。工房長さんも無言でうなずきます。


「では、順を追って説明します。こちらにおわすお方はラー王国第二王女シルバーニ・デ・ブロッケム様です。そしてシルバーニ様ご愛用の剣『アルスの剣』が7魔将の一人に折られてしまい、その修復をお願いしたいのです」

「……」


 二人の目の前に折れた『アルスの剣』を差し出します。

 エトリックさんも工房長さんも目を見開いたまま、口をポカンと空け今言ったことが何なのか反芻しているようでした。

 ショコさんはその状況になることをわかっていたのでしょう。深くソファーに腰を掛けてから、改めて彼らに問いかけます。


「さて、この剣は修復可能なのですか?」

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