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力ずくで説得を・・・

 食堂に集まる一同。一番奥の逃げられない場所にゼディス、対面の一番関係ない場所にドンドランド(高みの見物)、ゼディスの周りに女性陣、しかも7魔将・ルリアス含む、ゼディスの後の暖炉の上の絵画にテレサが椅子を用意し座ってワクワク・ドキドキの修羅場を見学。

 ワクワク・ドキドキといったが、ルリアスが怖くないわけではない。ただ、今の状況なら危害が及ぶ可能性が高いのはゼディスである。


「えーっと、何から話せばいいんでしょかね~」

「ゼディスさん、まずは皆さんに何をしているか、話されればよろしいんじゃないですか?」


 シンシスの言葉で自分たちがゼディスに『好意』を持っているのは『何かされているからだ』ということがわかる。こうなれば、もはやゼディスがとぼけても、ほとんど意味をなさなくなる。

 『はぁ~』と、ため息を吐きながら諦める。


「さて、みんなもご存じの通り、少なからず俺に好意を抱いているはずだ。もちろん疑問や違和感を覚えながらも……不思議ですね……」

「ようするに、何をした?」


 ドキサの目が怖い……いや、ショコもシルバもエイスも……その目つきだけで人が殺せそうだ……具体的にはゼディスが死にそうだ!


「ようするにですね……俺の魔力を『視た』ことはあるね、みなさん」

「確かゼディス様の魔力はピンク色でしたね。何か違和感はありました」

「その魔力は異性を引きつける……もっと言えば『俺の事を好きになる』魔力なんですわ」


 だんだん開き直っていくゼディス。ってーか、開き直る以外ないじゃん、こんなの?結果どうなるかなんて知らんよ!


「その魔力を目的の女性の魔力と混ぜれば、俺への好感度が上がるわけさ。それが身体の奥に近ければ近いほど、魔力量が多ければ多いほど、俺に対する『恋愛感情の依存度』は増していくって代物だ!」


 バキーン!! とぶっとばされる。まぁ当然だが……渾身の一撃だった。泡を吹いて倒れるゼディス。完全に気を失っている。


「まさか、そんなことをしていたとは……」

「見損ないました、ゼディス様!」

「なら、この前のキセイオンの魅了魔法(チャーム)が効かなくなるというのは、すでにゼディスさんの魔力で魅了されているから……ということですか!」

「初めて遭った時から違和感はあったが、そういうことか……」


 四者四様、だが、当たり前だが全員、怒っている。ドキサの手が真っ先に出たため、他が出遅れただけと言った感じだ。

 とりあえず、ぶっとばされて倒れているゼディスを放っておいてエイスがシンシスに重要なことを尋ねる。


「ゼディスの魔力を切り離す方法はあるのか?」


 全員の注目はゼディスからシンシスに移る。確かにこんな男をいつまでも好きでいることはない。できれば、すぐにでも魔力を取り除いてほしい。


「今現在はありません」

「そんな馬鹿な! 勇者の力をもってしても取り除けないのですか!?」


 シルバは焦るが、シンシスはさも当然という態度だ。


「そもそも、敵意や悪意のあるものでもなければ、魔法でもないモノなんですよ。人が惹かれあう切っ掛けの一つとも言えます。只の恋愛感情ですので、それを取り除くことは基本的にはできません」

「なるほど『基本敵には』か、なら『応用的には』できるわけだ」

「それも分からないとしか言いようがありませんが、出来るとすれば賢者ローロットの力を受け継いだ者が可能かもしれませんね」

「可能性がないわけでもないんですねぇ」

「でも、私はみなさんにゼディスの魔力を取り除いてもらおうとは思ってませんけどね」

「!?」


 シンシスの発言に一同唖然とする。

 それに対しエイスが立ち上がり抗議する。


「自分がかかっていないモノだから面白がっているのか? それなら、趣味が少々悪すぎやしないか?」


 他の者も似たり寄ったりの意見だろう。だが、それに答えたのは以外にもドンドランドだ。


「ワシも取り除くことに反対じゃな。理由は簡単じゃ。もし、取り除いたら、このパーティーは真っ先に血の海になるじゃろう。今まで不思議でならなかったんじゃ。ドキサがエイスの寝息を襲わないことが……ワシはラー王国の生まれじゃが……」

「そう、私はユニクス王国で生まれた。確かに『ゼディスため』と思ってエイスに刃を向けなかっただけね。それじゃなけれは7魔将より先に殺しているわ」


 エイスを見つめるドキサの目は氷より冷たい。


「あの国はドワーフを奴隷にしてますからね……」


 ショコが何とか口を開き、雰囲気の多少の中和を試みる。だが、ドキサは今度はショコを睨み付ける始末。


「それは助かる。私は見ているだけで、勇者の力を引き継いだ奴が死んでいってくれるわけか」


 カラカラ笑うのは7魔将のダークエルフ。椅子に座りながら今の雰囲気を快く思っている。


「そうならないように、ゼディスさんが考えた結果、手に入れた力が『自分に好意を抱かせる能力』だったわけです……ですが」

「『ですが……』、何か問題でも?」

「この能力は神から授かった能力なんですよ」

「確か、ゼディス様もそんなこと言ってましたね?」

「私の記憶が正しければシンマ級……つまり『邪神』の能力……それなりの対価を払ったのではないでしょうか? そこまでして、勇者たちを集めようとしていたと考えるのが妥当かと思いますが、いかがでしょう?」

「こいつがそんなこと考えてるわけないわ。ただ単に女好きだからよ。ほら起きろ、いつまで気絶した振りしてる! そんなことで言い逃れできると思ってるのか!」


 ドスドスッ! っとドキサが倒れているゼディスに蹴りを入れる。そんな事情があったにしろ、自分の心を操られて不快な思いがしないわけがない……約一名を除いて……。


「なら、お前たちは賢者ローロットの力を持つものを探せばいい。私はこのままで一向に構わん」


 そう言い放ったのはご存じルリアス。


「あんた、7魔将なのにこんなクズ男にいい様に心を弄ばれて悔しくないの!」

「悔しい? 何を言っている? むしろ嬉しいくらいだ! 私の心を操れるほど優秀な能力者だ、お前たちはいらないわけだろ。早速、私がお持ち帰りだ!」

「「ダメ!!」」


 四人がルリアスに牙を剥く。当然、そんなもので怯むルリアスでもない。だが、雰囲気は一触即発。


「お前たちは魔力を解きたいのだろう? ならこの男はいらないだろ!」

「『それはそれ、これはこれ』です!」


 鼻が付きそうなほどルリアスとシルバが睨みあう。


「あらあら、それでは、私たちの仲間になるのはどうでしょう?」

「7魔将が勇者の仲間になるわけないだろ!」

「あら? そんなこと言ってよろしいんですか? 仲間になればいつでもゼディスさんと一緒にいられますよ」

「くっ!? 卑怯だぞ!」

「シンシス! 7魔将なんて仲間にする必要はないわ。そいつは仕方ないから魔力が解けるまで、私たちのオモチャにするんだから!」


 ドキサはルリアスを仲間にすることを反対し、気を失っているゼディスの顔をムニムニして遊ぶ。『ずるい!』といってショコもゼディスで遊びだす。ほとんど、操り人形状態。


「待て! そもそも、そいつはお前たちのモノでもないだろ! 本人の意思を尊重したらどうなんだ!」


 このままでは、自分が楽しめないと理解したルリアス、抗議の声を上げるが逆効果になることを忘れている。


「ゼディスさんはそもそも、私たちの意志を尊重しないで勝手に『好意』をもたせたんですから、私たちもゼディスさんで遊ぶ権利があります!」


 キリッとした顔でさも当然のようにシルバが訴える。それなら、ルリアスにも権利があるはずだが、仲間にならないと駄目だとシンシスに断られる。


「ぐぬぬぬぬ……納得いかん」


 体中を引っ張られて、途中で目が覚めたゼディスがルリアスに、


「ひょれなは……そう、話てる時はほっぺたから手を離してドキサ。それなら、ルリアス提案がある」


 ゼディスに名前を呼ばれただけでキュンとしてしまうルリアス。

 赤い矢の形をした魔力受け渡し(トランスファー)は凝縮された魔力を体内の一番深いところに送り込むのだから、ドキサやショコ達よりもゼディスに対する想いは遥かに大きいのだ。ゼディスのちょっとしたことに感動したり、ときめいたりしてしまう。かなりの恋愛末期症状、自らこの状態を解きたいとは思わないのも、このせいでもある。


「他に7魔将で女性がいたら、引き合わせてくれにゃひきゃー」


 後半は怒ってエイスがゼディスのほっぺたを思いっきり引っ張っていた。


「お前はこの期に及んで、まだ、魔力で女性の心を弄ぶつもりか!」


 だが、ドンドランドがゼディスの誤解を解いておく。どうやら嫉妬の方が強くなりすぎて冷静な判断が出来なくなってきている女性陣。


「違うじゃろ!。7魔将が数人でもこちらの仲間になれば、勝ったも同然ではないか。ゼディスの力を使えれば使えるほど人類にとっては有利で魔族にとっては不利になるのじゃぞ?」

「確かにそうですけど……」


 納得いかない顔のショコ。納得いかないのはルリアスも一緒だ。


「私に仲間を『売れ』というのか断る!」


 当然の結果だが……意味合いが違う。


「そんなことしたらゼディスを独り占めする時間が減ってしまうだろ! それでなくともコイツラまでいるのに!」


 ダメだ、話がおかしな方向に流れていく。

 シンシスとドンドランドはゼディスの手法を快く思ってはいないが、合理的で平和的解決方法だと思っていたが案外上手くいかないし、さほど平和的解決にならない。ゼディスをかけて争ったりする。この方法は魔力を浴びた人間、魔族が合理的に考えられない所に欠点がある。


 ゼディスはルリアスの肩を掴む。


「仕方ない。小一時間説教してくる」

「え!? ちょ、ちょっと待て! 私がお前に説教などされる覚えはないぞ。夫にしてやろうというのに説教など許さんぞ! 立場をわきまえろ!」


 と暴れるが、ゼディスは構わずズルズルとルリアスを連れて別室へ連れて行く。一瞬、そのまま逃がすのかと、ドキサ達は考えた。そうすれば修羅場レベルが下がると企んだのかと思い、テレサに逃がさないように監視しに行かせる。

 一時間前後すると二人は戻ってくる。テレサの顔が赤い。


「わ、わかった。ゼディスの言う通り他の7魔将とも会えるように都合をつけ……る。そ、その代り、また……説教をしてくれ」


 ルリアスは体が上気し、ゼディスにしなだれかかり、何とか立っていると言った感じだ。ときたまゼディスを艶めかしい目で見ている。


「みんな! なんとか説得に応じてくれたぞ」


 ドキサを皮切りにゼディスを殴る、殴る殴る! ショコの爪が肉を引き裂く! シルバのアルスの剣が掠めていき、エイスが精霊魔法を詠唱する。さらにルリアスがその情景を見て『プッ』と笑うと一層、攻撃が悪化する。


 ドキサの雷が落ちる。


「お前は何をやっているんだっぁあっぁ!!」

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