表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/100

復活の代償

 最悪な状況といえた……ゼディスにとっては……。


 レクサを復活させるメリットが無いわけではない。が、代償が大きい。できれば先程の7魔将が女性だったので自分の部下にしたかったが、レクサの復活は時間が経てば不可能になってしまう。シルバを『奴隷にする』とは言ったが、当然そんなのは口約束だし、一国の王女、しかも勇者の生まれ変わりを奴隷にするなどできるわけもないので却下だ。


 リザードマンを倒したシルバ達が近寄ってくる。そして驚き口を押さえる。


「だ、大丈夫なんですか!?」

「……。」


 残念ながら、ゼディスに答える余裕はなかった。レクサを治すため右手で呪文を送っているが、すでに皮膚が剥がれ宙へと散布され蒸発していく。次第に爪もビキビキと剥がれていく。血や肉がゼディスの手から引きちぎられていくように失われていく。痛くないわけがない。激痛もいいところだ。だからやりたくはなかった。

 ゼディスは脂汗を垂らしながら、復活呪文について語りはじめる。


「復活の呪文には代償がある。死体の損傷具合と腐敗具合により代償の大小が決まる。駄洒落だ……」

「お前、余裕あるな……」


そうしている間にも筋肉の筋がブチブチと嫌な音を立てて空中に舞い蒸発していく。


「死んでから間もないが、損傷が激しい。今回の復活でかかる代償は、俺の右腕の指先から肘までの骨以外全てを神に捧げなければならない。これは回復呪文で回復できない。なにせ、回復呪文は神の力なわけだから、捧げたモノを奪い返す行為になってしまう。唱えたところで神も腕の回復には力を貸さない。見ても分かる通り滅茶苦茶痛い。激痛で死ぬに神官もいる。だが、そもそもがこの魔法を唱えられるのが大神官、大司祭クラスなので精神力の強い者に限られる。そして、二度目の復活を行おうとすれば、俺の違う部位……例えば左手、足、頭、内臓……などになるから、次は死ぬ可能性が高くなるわけだ。最高司祭でもせいぜい1、2回やったら瀕死といってもいいだろう。ましてや腐敗がひどく、損傷も激しい死体なら身体全部を捧げなければならないだろうから、まず呪文の完成はありえないだろうな。」


 すでにゼディスの右手は白い骨が見え始めていた。ココで初めてシルバは自分がゼディスにとんでもないことを頼んだのだと気づいた。彼は自分の右手を犠牲にしているのだ。


「そ……それは、他の者が代わることは……。」

「できない。術者本人だけの神聖魔法だ。それが出来てしまったら、殺したい奴を殺し、蘇らせたい奴を蘇させる最悪の禁呪になっている。」


 代われるならシルバが『代りに……』とか言い出すのだろうとゼディスはわかっていた。いや、ぶっちゃけ代われるなら代わって欲しい。本当に痛いんだって……。さらに、この痛みは治らない。だからやりたくなかった。さすがにその説明まですると罪悪感を植え付けすぎるだろうから説明しない。


 すでにゼディスの肘から先は骨だけになっていた。爪も、肉も、血すら付いていない真っ白な塊だ。そこから再生の光だけがレクサに降り注いでいる。彼女の致命傷となっている傷がふさがっていく。この神聖魔法は、まずは肉体を捧げ堪えきったところから始まる。逆に言えばそこで苦痛に堪えかねて中断したり、死んでしまっては失敗となる。痛みが続いているのだから中断したくもなる。再生されていく時間もかかる。


 すでにあたりは暗くなっていきている。


「ここで野宿の準備を始めてくれ……一晩くらいかかる。」


ゼディスにそう言われて、初めて3人は辺りが暗いことを認識した。慌てて野営の準備を始める。エデットが当然ながら手際が一番よく、二人に指示を出す。シルバが王女だからといってこの状況では特別扱いするわけにもいかない。もちろん、初めから互いにそれくらいのことは当たり前だと思っているから問題は起きない。火を起こし食事などの用意をする。

 ゼディスに食事はどうするか聞くと意外にも食べるらしい。空いている左手で干し肉やパンなどをムシャムシャ食べる。ひょっとしたら骨になってからは右手は痛くないのではないかと思わせる。会話も普通に行っている。たまに愚痴ったりしている。


「本当に余裕あるな、お前」

「結構大変な儀式なんだぞ。城に帰ったら何か褒美出せよ、おっさん」

「私が奴隷になるだけでは駄目ですか?」

「いや、奴隷に出来ないから……。」

「ゼディスもさすがに常識はあったか。」

「さすがにな。あんときはとっさに良いもんが浮かばなかったから、そう言っただけだ」

「ですが! 私は!」

「シルバーニ王女。あなたの意見は残念ながら聞き入れられません。」


 たぶん、シルバーニは本気で奴隷になることを覚悟していたのだろう。だが、そんな簡単にことは進まない。たぶんそんなことをすれば、この場でエデットとフィンに100%殺される。それだったら初めから復活できないことにしておけば良かった。良かったのになんで引き受けちゃったんだろうとゼディスは再び後悔。7魔将を得られたチャンスも逃す。色々と失敗してるなーと思う。なにせ次に誰か死んだときに復活させることは、ほぼ不可能なわけだ。左手犠牲にすればもう一人くらい行けるか? とも思わなくもないが右手の激痛がありつつとなると難しいだろうし、やりたくない。

 夜も真っ暗になるとゼディス以外は睡眠をとることになる。シルバが最後まで起きていることを主張したが見張りを交代しなくてはならないし、万が一、7魔将ベグイアスが襲ってこないとも限らない。その時に万全の態勢をとれていないことはあってはならない。シルバはどちらにしろしばらくは寝つけないとの理由で最初の見張りを申し出た。順番はシルバ、エデット、フィンだった。

 エデットと見張りを交代した後も結局は横になっていてもしばらくは寝られなかったが、エデットとフィンが交代したあたりからは、シルバの疲れがピークに達し、ついに夢の世界へと誘われてしまっていた。


 次の朝、みんながガサゴソと動いている音で、シルバは目が覚める。ガバッと起きると真っ先にレクサの様子を見るが、いない。ゼディスが壁に寄りかかって寝ている。右手は白骨化しているので夢でなない。助かってみんなと朝食の用意でもしているのだろうか……それとも失敗して埋葬されてしまったのだろうか。

 ビシッ! と後ろからチョップが、かまされる。何が起きたのか気付かず後ろを振り返る。


「なにボーっとしてるんですの!? 起きたならやることがたくさんあるでしょ!」


 レクサが後にいる。助かったのか理解ができない。思い出してしまう……焦げてしまった姉の姿を……今目の前にいるのが夢か現実か区別がつかない。再びガツン! とチョップが振り下ろされる。シルバは叩かれた頭を撫でる……痛い……涙があふれてくる。思わず強く抱きついてしまう。


「ちょっと! やめなさいシルバ! 私はそっちのケはないんだから!!」

「よかったっぁ!! 本当によかったっぁあ!!」


大声で泣くシルバを諦めたように、レクサがシルバの頭をポンポンと撫で『仕方ないか』とため息を吐く。さすがに生死を彷徨ったのだ。妹に泣くなという方が無理かと諦める。何気なく横を見るとゼディスがニヤニヤ笑っている。


「なんですの!? 何か文句でもありますの!!」




 ひとしきりシルバが泣き終わった後、朝食を終えマンティコアの(忘れそうになっていた)部位を回収し、下山しようとするがゼディスが提案する。


「頂上に上らないか?」

「バカですの?」


一言で一刀両断。

色々とおかしい……何がって、レクサの命の恩人で魔力も注いでいるはずなのに、なんでこんな態度?


「待て待て! 話を聞け7魔将が上へと逃げて行った。」

「追いかけようって言うのか? それこそ無謀だろう。援軍を呼んだ方がいい。次、上手く追い返せるかわかったもんじゃない」

「!!」


 エデットの言葉に不意にフィンがあることに気づく。


「転移の魔法陣がココにもある!?」

「その可能性が高いんじゃないかと思われる」

「転移の魔法陣ですか?! あの古代魔法の?!」


 シルバが本当にあるのか疑問に思う。知っているのはゼディス、フィン、カロン王のみであるから当然と言えば当然。カロン王でさえ実物は見ていない。


「ホントにそんなものが存在するんですの? さすがに、にわかには信じがたいですわ?」


 疑り深い……フィンが今まであった経緯を、この場のみんなに話すと「なるほど」と納得してもらえる。なんとなく自分のときと反応が違うと思ったのはゼディスの僻み根性のせいだろうか? とりあえず納得してもらえたので頂上を目指してみる。ついでに怪しいところも探してみる。途中、大洞窟もあったが今回はスルー。残念ながら全員、そんなに余裕はない。

 結局は頂上まで来てしまう。さして高い山でなかったのが良かった。いや、高い山ならさすがに登ろうとは思わなかっただろう。

 少し探すだけで魔法陣を発見する。


「ビンゴ!」

「『生きてる』のか?」


 魔法陣が動かせるときに王もそういう言い方をしていたのでフィンも、それに倣ってみる。


「いけそうだな。少しいじくって……」


 呪文を書き換えている。その間に転移魔法陣のことを他の人に言わないように注意する。書き換え終わると、これで王都へひとっ飛びできることを知らせる。


「それってすごい便利ですわね! 私でも使えるようになるのかしら?」

「性格が悪くなければ!」

「じゃぁ使えますわね!」


 レクサは、だいぶポジティブだ。

 とりあえず5人、魔法陣の上に乗り、使い方を教える。方角と魔力の注ぎ方で現在ある位置と、次に移動できる場所が宙に浮かび上がって選択できる。レクサは手際よくこなしていく。


「これって、結構、大変なことじゃありません?」

「どういうことだ?」


 レクサが宙に浮かんでいる画面を色々触りながら確認して驚いていると、その理由をエデットが求める。

色々な場所に転移できる。具体的には戦争しているユニクス王国の真ん中とか……。他にも数多くある。


「これが戦争に使われたら、一気に大量の軍勢が押し寄せてくる可能性もありますね」

「だから秘密にしてある」


 シルバが真剣なまなざしで画面を見る。フィンが秘密の理由を漏らす。

 そうしている間にもレクサが準備を完了して、王都の前へと移動を選択する。一瞬風景が歪んだと思ったら、次の瞬間、見覚えのある王都まで数キロの距離の場所に出た。


 ただ、それに対する感想はない。と、いうかそれどころではない。5人全員口をあんぐり開いて驚いている。

 怒号が飛び交い、城門が大勢の魔物に攻め込まれ、城から煙が上がっている。


「転移魔法陣が戦争に使われた!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ