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貴族街の娼婦の館

王都最高級の娼婦の館『ゴールデンタワー』。

その中の薄暗い広いロビーを通る。

娼婦待ちのイヤラしい貴族や商人が、高級シャンパン片手にソファーでくつろいでいる。

シャンパンは無料である。が、只だからといってがぶ飲みするような客はいない。

接待している娼婦は基本、見習いであるが気に入った場合はそのまま部屋へ連れて行くこともできるらしい。

完全な見習い……娼婦になって間もない者や礼儀作法が出来てない者などは、裏方に回されるので、客を取ることはできないようになっている。


大勢の娼婦がいてもトリアンナはとりわけ美しい。

彼女自身が娼婦としても働くこともあるが、それはよっぽどの大口のときのみで普段は表に出てこない。

後輩を教えているわけではない。それは他の娼婦に任せても十分である。

彼女は政治の裏側や大商人ギルドなどに顔を突っ込んでいる。

さすがに、これを任せられるのは人数が限られる。本当に信頼できる4~5人だけだ。

手広くやるつもりはないが、店が大きくなれば否応なしにあらゆる方面に首を突っ込まなければならない。

一人の美しい娼婦とデップリとしていて禿げあがった身なりのいい男が軽く足を引きずりながらやってくる。

禿げた男がみすぼらしい冒険者を見つけて話しかけてきたようだ。


「トリアンナさん……そちらの男性は誰ですかな?」


言葉を慎重に選んでいる。

デブでハゲだが頭の回転が鈍いわけではない。それだけで貴族ではないだろうと思ってしまう。

貴族でも頭の良い奴はいるだろうが……。


「こんばんは、エトリック様。こちらはゼディス様です。このゴールデンタワーのオーナーです。」

「えっ!? なんと……。」


エトリックと呼ばれた男は目を丸くするが、すぐに冗談だと思い大笑いをする。


「はっはっはっは! なるほど、トリアンナさんは仮のオーナーでしたか。

これはどーも、ゼディス様、以後お見知りおきを……。」


抜け目がない。相手の素性がわからない以上、下手にでるその手口。

冗談だと流しつつも、この場にいることにただの冒険者でないと思っている。


(王族か貴族か? いや違うな……。旅慣れているようだ。商人にしてもココに来れるほどではあるまい。まさか7人の勇者の血を引く者か? ありえん話ではないな……。トリアンナが持ち上げるほどの男だ。本物か?)


最近の魔族が増えてきたことは王都でも知られているが、エールーン王国が襲われたことを知っているのはごく一部である。

それでも、勇者の血を引く者を名乗る輩は何人も出てきている。真偽のほどはわからないにしても……。

握手を求められ、ゼディスもそれに応じる。右利きなのだろう。だが握手をしている手と反対の手に目を軽くむける。


「エトリックさんですか。商人の方ですね。しかも一代で莫大な富を稼いだみたいですね。

武器や防具を仕入れるのを専門にし戦争がらみで儲けてますね。

あぁ、それと最近、ご病気をなされませんでしたか?お酒を控えた方がよろしいかもしれませんよ?」


ゼディスの忠告に再び驚く。


「トリアンナさんから私のことをお聞きになられたのですな?」


それにしても大した記憶力だとエトリックは思った。

もちろん、今あったばかりなのに、そんなことを聞いてはいない。

笑ってごまかす。

そのあと忙しいと謝ってから、トリアンナとゼディスは会釈をするとそのまま立ち去る。


「良くご存知でしたね? それとも推測ですか?」

「感かな。握手したとき手にマメが出来ていた。武器や防具を良く使っている。それで反対の手も見てみた、右手も左手もかなりの豆と筋肉だった。

ただ、その割にゼイ肉が多い。手だけ使って動かない騎馬兵……という線も薄い。腰は使うからな。

あと馬に跨れ無さそうだった。それなのに足には傷があるだろう、足を軽く引き摺っている。

おそらく昔は自分の足で各地を回っていたに違いない。使用人がいなかったからだろう。その辺が一代で築き上げたと思われる要因の一つかな?あと、腹を押さえて酒を飲んでれば大体の人間は身体のどっかは悪そうだろ?もっといえば内臓だけどな……まぁ、最悪、引きずっていた足の話でもいいし全部適当だよ。」


トリアンナはクスリと笑ってしまう。適当でその人の素性を当てられたら堪ったものではないだろう。

占い師など商売あがったりだ。

長い廊下を歩き続けると一段と豪華な扉の前にくる。

トリアンナが扉を開ける。


「どうぞ、お入りください。ゼディス様専用のお部屋になります。」

「こんな部屋は前は無かったような気がするけど?」

「差し出がましいとは思いましたが、ゼディス様からご寵愛を頂いた後、早急に用意いたしました。

この部屋は特別な魔法を使用しており、外部へと音が漏れにくくなっております。」


普通に考えれば娼婦の館だ、どの部屋も防音はしっかりしている。

だが、わざわざ魔法をかけてまでの念の入れようは情報をやり取りしやすいようにとの配慮からだろう。


室内は広く、清楚な感じを受ける白を主体とした部屋になっている。

ベット自体も大きく10人くらいなら寝れそうなほどだ。

そのほかにも、大きいソファーに机、その上には新鮮な果実。

壁にはいくつかの絵画が掲げられており、柱も大理石で作られている。

床は赤のカーペットで細かい刺繍が施されている。

贅沢な作りではあるが、金や銀をあまり使っておらず、すっきりした感じも受ける。

ソファーに座り、トリアンナにも進めて早速、情報を交換していく。


トリアンナは自分の持っている情報を包み隠さず、全て曝け出す。ゼディスに隠し事をするつもりはさらさらない。さらに、城内のことを聞かれるとそれについても追加情報として、出来るだけ詳しく話す。

ゼディスの役に立てると思うとトリアンナは自然と笑みがこぼれてきて身体が熱くなってきてしまう。

自分に必要なのがお金や名誉などではなくこの男なのだと実感する悦びがトリアンナに浸透していく。


城内の派閥争いや街や物価などの情報を手に入れてから、ゼディスはトリアンナに最近起こったことを大まかに話す。もちろん彼女を信頼していないわけじゃない。魔力を与えているのだから、虜になっていることを確信している。ただの無精である。

トリアンナは愛おしいゼディスの言葉でも思わず聞き返してしまった。


「7魔将ですか!? そんな間違えではありませんか!? ……いえ……その……」


ゼディスを疑うような発言をしてしまったことを後悔する。

この世の終わりよりもゼディスの方が大切だと思っているのに、と自分が情けなくなってしまう。

落ち込んでいる様子を気にすることもなく話を続ける。


「まず、間違いないだろう。

あの魔力量で違っていたら勇者の力を受け継いでいる人間が何人いても手に負えなくなる。

それはともかく……。」

「分かりました! 武器商人ですね。買占め……は、マズイでしょうからいつも通りに……。」

「武防具はさっきの商人を10%くらい使うといいかもしれない。」

「エトリック大商人ですか? わかりました。 名前の方は?」

「あぁ、俺の名前を出しておいてもらうと助かる。そのうちアイツに頼みたいこともあるしな。」

「ですが、彼はあまり評判のいい商人ではありません。ご注意ください。」

「ありがとう、注意しよう。」



その後も情報をやりとりし、一段落するとトリアンナは娼婦を薦めてきた。


「どうでしょう。お話もひと段落つきましたので、ゼディス様に抱いていただきたい娼婦が5人ほどいるのですが? あっと、私を含めまして6人なんですが?」


すでにトリアンナの目つきトロンとして、愛する男へ寵愛を受けることしか考えられないというようにゼディスにしなだれかかり、その胸に指を這わす。

彼に5人もの娼婦をあてがうのは理由がある。本来なら自分が独占したいのだが、ゼディスの欲望を全て受け止める前に気を失ってしまう。何度か抱かれたが、とても1、2人で満足させることは不可能だった。そのため人数がどうしても必要になってしまう。

そしてもう一つの理由は信頼できる部下が必要なのだ。理由はわからないがゼディスに抱かれた娼婦はゼディスの虜になり、トリアンナにとって信頼できる娼婦となる。

前回、抱いてもらった時にゼディス好みと思われる娼婦を数人用意したがその者達は例外なく信用できる部下になっている。ゼディスの為といえば悦んで働く。もっともトリアンナがゼディスの為にならないことなどしないが……。

大きくなった娼婦の館には、新しく信頼できる幹部が欲しい。そういう理由もあるのだ。

もちろん、ゼディス好みで優秀な娼婦しかこの場に呼ぶことはない。

トリアンナは娼婦がゼディスの虜になるのは性的な技術が高いからだと勘違いしていたが……。


「あぁいいだろう。」


もちろん即O.K.

女大好きなゼディスが断るわけがない。

その後、結局、朝までの数時間5人の女性を何度も絶頂させ続けていた。

最終的には女性の方が限界になるまで……。






朝と昼の間くらいの時間にフィンの迎えが来る。

娼婦の館ゴールデンタワーでもこの時間は、ほとんどの客はいない。

交代して用心棒は違う人物になっている。


一台の馬車が止まる。フィンバロンネスの使いのモノだ。

ゼディスはトリアンナと前に抱いた幹部たちと新しく幹部になるであろう娼婦たちに見送られる。

その光景に理由を知らない交代した用心棒はどこぞの王族がお忍びで来ているのだと勘違いしていた。


貴族専用の宿屋へと到着するとフィンが出かけられる準備を完了していた。


「金はどうした? どうやら忍び込んだわけではないようだが?」


先程迎えに来た執事の一人が、フィンに逐一、出口での出来事を連絡したのだろう。


「蛇の道は蛇ってところですかね。情報商売ですよ。」

「娼婦の館で情報なんか重宝するのかね。」

「偏見ですよ。」

「まぁ、どちらでもかまわん。そろそろ入城するぞ。格好はそのままで構わん。冒険者として紹介するからな。もし、発言を許されたら例の話を頼む。この国一つの問題ではないからな。」


壁に耳あり障子に目ありといいたげに、7魔将の名前は出さなかった。

もし、誰かに聞かれれば騒ぎになるのは間違いない。できれば大ごとにならないように事を進めていきたい。気が付いた時には迎え撃てる態勢に……。


二人は馬車に乗る。

ここから城内までは短い距離だ。フィンはある程度の城内の注意をゼディスに聞かせる。

ようはむやみに喋るな。ということだった。


身分を明かし「フィンだ。宰相に緊急事態だと知らせろ。」と門番に言うと城へとさらに馬車を進めていった。

毎日更新より週一くらいの方がワクワク感がありますかね~?

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