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魔法の矢

炎の矢がゼディス腹を貫いていく……ように見えた。

いや、実際に貫いている。そしてそれとわずかな差で身体が回復していく。


「リ・キュアか!?」


自動回復魔法・あらかじめ魔法をかけておくと一定量のダメージを受けたとき自動回復する。

便利ではあるが、魔力の消費量がただのキュアに比べると30倍近い。

それに有効時間は10分程度、一回の戦闘で、一回かけておく程度の回復魔法。


相手の神官はリ・キュアをかける暇も魔力もないだろうから関係ない。

ドンドランドと遅れて入ってきたのにはこの魔法をかけていたからだ。

それでも、炎の矢のダメージを全快させるほどではなかったらしく、腹から血が滴り落ちている。


「かなり魔力注いできたのにこの威力かよ……。」


ゼディスは腹から出る血を抑えながら痛みに顔を歪めるが、次の行動にでる。

ダークエルフは当然、この男は回復すると思い立て続けに精霊魔法を叩きこもうとした。

が、ゼディスの指先に魔力が集まっていき真っ赤に染まる魔法の矢が組み立てられていた。


「貴様! 相打ち狙いか!?」


リ・キュアをすでに相殺している。

次の精霊魔法が当たれば致命傷になりかねない状況なのに撃ち込んでくるなど想像しなかった。

だが、それでもダークエルフは自分の勝ちを信じて疑わなかった。

ダークエルフは「右手の口」から精霊魔法の矢を放ち、「左手の口」と「普通の口」で二重の魔法防御壁を作る。


「敵を撃ち滅ぼせ! ファイアーアロー!」「矢の進行を妨げよ! ウインドシールド!」「外敵から我が身を守れ! アースプロテクション!」


互いの矢が、互いを狙う。

ゼディスの胸に当たりそうな瞬間、ショコが飛び出していた。

炎の矢はゼディスの肩に当たり、肩当てと肩の肉を飛び散らせる。


ゼディスの赤い矢はダークエルフに向かい飛んでいく。

ウインドシールドは物理系の飛び道具を全て受け流すことが出来る。飛んできたのは魔法の矢だが魔法で物理的なモノを作り出していれば有効だと考えたが、予想通りウインドシールドは突破される。


「しかし、アースプロテクションは物理も魔法も遮断する!」


アースプロテクションは術者に危害のある攻撃を全て遮断する。

このプロテクトを破る方法は魔力量の問題である。

攻撃の魔力が多いか、プロテクションにかけた魔力が多いか……。

相手も同じ量の魔力を見せたとはいえ7魔将ほどの魔力を有しているとは思えない。

この矢を打ち消せると確信していた。


「な……んだ……と……。」


アースプロテクションは破られていない。

それなのにプロテクションをすり抜け、赤い矢はダークエルフの胸へと流れ込んでいく。

痛みはない。そしてすぐに理解した。この矢が外傷を与えるものではない。

精神に攻撃するモノだと……。

それでも、精神を傷つけるならアースプロテクションが効果を発揮する。

精神攻撃も防げるはずなのに……。







理解できないだろうな……と、ゼディスは思っていた。


トランスファーという魔法。

神聖魔法の一つ。攻撃魔法ではないのでプロテクトで防ぐことはできない。むしろ回復魔法の部類だ。

自分の魔力を相手に与える魔法。

要するに魔力切れになりそうな者に次自分の魔力を与え魔力を回復させるのである。


ただ、ゼディスの魔力は特殊でこの魔力を体内に取り込んでしまうと、自身の魔力とゼディスの魔力が同化し、ゼディスの愛の奴隷となってしまう。

そう、ピンクの魔力は人を恋に堕とす力を持っている。

その魔力を集中させ、凝固させることで赤にまで持っていけば恋では済まず、自分の全てを投げ出してもいいと思うほど愛してしまう。


エイスが前に「おかしい」と感じた違和感はゼディスの魔力を感じ取っていたからだ。

トランスファーをおこなわなくとも、纏っている魔力を浴び続けているだけで、だんだんと好意を抱いてきてしまう。

もちろん、ショコやドキサがなんとなく、ゼディスに惹かれているのもこの魔力を纏っているからだ。

娼婦が返り討ちに遭ったのは、トランスファーである。それでもピンク色のままの矢の形も取らないものである。

このピンク色の魔力は彼の神の祝福によるものだった…いや、呪いかもしれない。彼はこの魔力しか身に付けられないのだから…。


そして今回撃ち込んだのは、硬く矢の形状を取らせ、赤に間で固めたトランスファー。

そこまでしたのは、相手が7魔将だったからだ。

なにせ、娼婦でも簡単に堕とすトランスファーを赤にしても、彼女は歯を食いしばって堪えているのだ。






「バカな! バカな! バカなっぁあ!!」


ダークエルフが顔を真っ赤にして叫び声をあげる。

彼女とゼディス以外はダークエルフが怒りに打ち震えていると思っていた。

半分は当たりである。ダークエルフは自分にかかった魔法が魅了(チャーム)の魔法だと思っていた。

矢を放った男を見るだけで心臓が高鳴るのがわかる。だが、自分の魔力でその感情を無理矢理抑えこむ。

さらに下等な人間の男になどに7魔将で気高く高貴なダークエルフが恋に落ちるなどプライドが許さなかった。

魔力とプライドと怒りで辛うじて堪えている状態だ。


もはや、攻撃することなどできない。脂汗をかきながらジリジリと後ずさっていく。

ドンっと壁の行き止まりまで行くと…なにか呪文を唱え壁の中へと沈んでいく。


「いいか……今回は見逃してやる。そのエルフもくれてやろう…だが、次はないと思え。

私の名は7魔将のルリアスだ。お前たちを殺すものの名だ。」

「ルリアス……か。」


ゼディスの言葉を聞くか聞かないかの間にルリアスは壁から外へと抜け出していた。

ルリアスはかなり危険な状態だった。ゼディスに名前を呼ばれた時、嬉しくて跳ねまわりそうだった。

跳ねまわるより先に壁の中に入ったことで、その行為は押さえることが何とかできたが……。


「厄介な呪いだな……。呪いを解ける奴がたしかいたな。」


この呪いを解かなければ、あの男に魅了されてしまうと思い急いでこの場を離れる。

だが、林の中を駆け抜けている間にもゼディスの魔力と同化した自身の魔力のせいで、チャームという呪いを解こうという意思が失われていく。


「そういえば、チャームは1時間程度で効果が薄れるはずだ…特殊なチャームだとしても数時間で解呪されるだろう。なら、あの男にさえ合わなければ、問題あるまい。……そういえば、名前をきいていなかた。」


走っていた足に急ブレーキをかけ、戻って名前を聞きに行きたくなる。が、頭を振って再び他の7魔将の元へと駈け出して行った。





ダークエルフのルリアスが去った後、ぐったりと休んでいた。

神官は生け捕りにして猿ぐつわを噛ませてある。


「身体中が痛いです~。」

「筋肉が切れるー!!」


ドキサとショコは魔法の副作用で強烈な筋肉痛のような状態にグワワワっと叫んでいる。

ドンドランドは一通り見回り、室内に敵の残党や罠が無いか確認をしてから所定の位置で休憩を取る。

ゼディスは片手で気を失っているエイスにその辺の死体から拝借したマントをかけ、そのあと、しゃがみこんで壊れた方に治癒の魔法をかける。


「どうやら、ここは昔の魔王が住んでいた場所で間違いなさそうだな。」


グワワワワっと叫んでいたドキサが吃驚する


「まさか!? ここが!?」

「千年も前の事ですよ? そもそも本当に魔王なんていたんですか?」

「おったよ…ワシの爺さんがその時、生き残ったらしい。」


ドンドランドの話に興味が引かれる。実際に遭ったのはおじいさんだが……。


「私ならそのドワーフより、もっと面白い話ができるわよ」


意識を取り戻したエイスがマントで身体を隠すようにしながら、休憩の輪に加わってきた。

前に会ったような時のような強い口調はない。

体力も気力も現在は薄く、仲間がいない状態に途方に暮れている。

それでも、このメンバーに助けられたことは周りの状況を見れば一目瞭然だったのだろう。


「まずはお互い名乗った方がいいかしら?」

「そうね。私はドキサ。で……。」

「ショコです」

「ドンドランドだ。」

「ゼディスだ。」


だいぶ魔力を消費したが、なんとか肩は元通りになった。片を回しながら尋ねる。


「ユニクスの将軍エイス……だったよな?」

「その通りよ。それ以上の説明はいらないでしょ? ところで私は助けられたのかしら? それともラー王国に連行される途中かしら?」


エイスはこの連中に助けられたと思っていたが、よく見れば戦場で見たことのある顔だった。

だからといって、逃げる気力はない。

ドキサはエイスの言葉で「連れて帰れば大手柄」だとは思ったが、それはひとまず置いておくことにした。


「まずは情報交換といきましょうか? その上であなたをどうするか考えましょう。」

「それなら、囚われの身の私からお話ししましょうか。私のエルフの国にエリスという男がいました。」

「!?……。まさか、エルフの王、勇者エリスじゃぁ……。」

「意外ですね。ドワーフでもエルフの名前を知っているなんて……。」

「7魔将に対する7人の勇者の名前ならみんな知ってますよ。」


ショコがドワーフとエルフが話の腰を折らないように仲裁に入り、話を続けるよう促す。


「その男は私の師匠でした。私が人間社会に出る少し前に他界しましたが……。」

「勇者の弟子じゃっただと!?」

「たしかにエルフならありえます。」


まるで勇者に直接会ったような気分になっているようだ。


「その女が本当のことを言っているとは限らないんじゃないかしら?」

「いや、本当だろう。」


アッサリと肯定するゼディスに疑問の目をドキサは投げかけるが、今はエイスの話の方がさきだった。


「師匠の話では、魔王は生きています。」

「そんな馬鹿な!!」


誰が叫んだかわからなかった。いや、ほとんどのモノが叫んだかもしれない。

髭に手を当て、唸り声を上げる。


「それなら新しい7魔将というのも頷ける話だ。」

「7人の勇者の弟子の血を使って魔王を呼び出そうとしていた…ってことかしら?」

「この場所が元魔王の城だと考えると、なんだか変に辻褄があってくるわね。」


彼女は千年前の話を話していた。仲間に7魔将の一人がいたこと、魔王はそいつを連れて消えたこと。

その後、ここを監視するためにそれぞれが、この近くに国を建てたこと。

内容は大まかだった。だが真実味があるような気がする。

そして、7魔将が仲間だったことについてはどの国でも語られていない。

千年という時が魔族に味方がいたなどということを認めたくなく、歴史から抹消されていったのだろうと考えられた。

それから、ドキサがさっきまで起こっていた事実を説明をした。

そうすると、エイスがゼディスを見る。


「いまだにアナタからは違和感を感じる。」


それは魔力を放っているのだから当然であるが、おそらく見えてはいないだろう。

と考えていたが……そのことではないようだ。


「なんで新しい7魔将がいるとわかったの? そもそも人間のあなたが!?」

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