ほのかにチェリー
バトンで比喩法と擬人法について、質問あったので、
「マグカップとトースターの桜色の恋?」
と書いたら、その話読みたいと言われました。
あ〜…ノリでしたがまあ、…やってみるか。
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『比喩法と擬人法の設問からの物語。
ほのかにチェリー』
桜色のマグカップは、トースターに片思いをしていた。
陶器の自分は、熱を放つ事はない。
しかし彼は、電熱線をたぎらせ、情熱をほとばしらせる、爽やかで熱い男だった。
どこか古風な、それでいてどこにでもいそうな、風景に埋没しがちな、無骨な男。
しかしひとたび熱くなると、その情熱で周りをも熱くする、一途な男でもあった。
がしゃん、とレバーが下がり、スイッチが入る。電熱線のうなりが低く静かに始まる。
そのうなりはやがて、ぶんぶんとした歌になり、大気を震わせながら響き、広がってゆく。
ゆるやかに大気の色が変わる。奇跡のような、その情景。
そんな彼の熱さは静かにマグカップに伝わって、冷たい彼女をも温めてくれていた。
はらはらと、ほろほろと。
日々、熱は伝わる。歌のように。
はらはらと、ほろほろと。
日々、熱は降り積もる。春の日に桜が舞い散り、降り積もるかのように。
マグカップの中に、暖かさと、切なさを降り積もらせる。
はらはらと。
ほろほろと……。
今日もマグカップは、ほのかな桜色に己を染める。
寄り添うようにトースターの側に並び、彼の歌を受け止めて、己が身を深く輝かせる。
静かに深く。
ただ、優しく。
はらはらと、ほろほろと。
花びらが、降り積もるように。
えんど。
比喩法+擬人法。まゆさん、書いたよ〜
2010年 11月 16日活動報告「リクエストあったので」より。