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活動報告小話集。  作者: ゆずはらしの
ストレス発散による小話
5/6

異文化は美しく交流する。

レポート山積みです。ちょっと体調崩して横になっていたら、山になっていた。


……文字を見ると、めまいと吐き気が止まらない状態だったんだよ……。


ちょっとずつやろう。ちょっとずつ。


それでも気持ちを新たにしたり、決めた事とかあるので。まあ、何とか。立ち直れそうです。


棚をつけよう! 


とかね。必要だよ、棚。


と、いう訳で、ストレス発散小説。連載中のものに取り掛かれないんで、そっちのストレスもあったりする。横になっていた間、頭の中でぐるぐる考えていたネタでもありますが……、


おバカさんな話が書きたい! の一心で出来た話です。ではどうぞ~。



☆★☆



 美しい緑に囲まれたそこは、のんびりとした校風がうたい文句の、中高一貫教育が行われる私立の学校だった。


 私立A花えいか学園。


 山田やまだ圭子けいこ15歳は、この学園の高等科一年D組に所属する、ごく普通の家庭で育った、平凡な少女だった。運動神経はそれなり。成績は可もなく不可もなく。自分ではちょっとは可愛いのじゃないかと思っているが、アイドルのような美人という訳でもない。

 それなりで普通。

 それが彼女の、自分自身に対する評価だった。それで良いと思っていたし、そんなものだとも思っていた。

 毎日は、少しばかり退屈で、けれど平穏に過ぎてゆく。

 そんな日々が続くのだと思っていた彼女に転機が訪れたのは、とあるニュースを友人から聞いてからだった。


「おはよ~、ケイちゃん、知ってる? 交換留学生が来るんだって!」


 朝、登校して教室に入ると、友人の田原たはら直美なおみが近寄ってきてそう言った。


「おはよ、ナオ。交換留学生?」

「うん、うちの学園、どっかの国と姉妹校じゃない? で、時々、生徒を交換で留学させるの。うちから何人か向こうに行って、向こうから何人か来るわけ」

「へ~……」


 高校からこの学園に入った圭子には、初耳だった。


「うちのクラスだったら良いね~。ハンサムな男の子だったらウレシイな☆」

「そんな小説みたいな話、あるわけないじゃない」


 そう言いつつ笑っていると、チャイムの音が響いた。HRの時刻だ。慌てて自分の席につく友人を見やり、圭子も席についた。


 やがて、担任の教師が入ってくる。


 ざわっ。


 教室内が、ざわめきで満たされた。彼に続いてもう一人、白人の少年が入ってきたからだ。


「え、ウソ!」

「おお、留学生!?」

「うちのクラスだったの?」

「いや~、カッコイイ!」

「ってか、カワイイ!」


 男子生徒は珍しげに、女子生徒は興奮気味に、声を上げている。たたずむ少年はすらりとして背が高く、白っぽく見える金髪をした、いわゆる美形だった。どこかの王子様みたいだと圭子は思った。


 ざわめきは収まらず、次第に大きくなってくる。担任の日向ひゅうが正人まさと35歳は気にせず教壇に立ったが、ざわざわとして収まらない教え子たちの様子に苦笑した。


「日直。号令はどうした」


 無精ひげの浮いた、どこかヨレた服装の彼が、だるそうに言う。慌てて今日の日直が、号令をかけた。


「あ、あ、はい、起立! 礼~!」


 声が裏返っていた。


 がたがたと音を立てて立ちあがった生徒たちは、礼を取ると椅子に腰かけた。その時、留学生の目がきらりと光り、頬がわずかに紅潮したのを、圭子は見たような気がした。


「出席を取るぞ~。休んでる奴はいるか~? いたらその隣のやつ、名前を言え」


 面倒臭そうに言う担任に、『今日は全員出席です』と、クラス委員の太田おおたつとむが答えた。


「そうか。じゃ、お待ちかねの紹介だ。うちの姉妹校の、セント・Pター学院からの交換留学生。今年は三人がこっちに来た。

 ジョナサン・マクファーリーだ。んじゃ、ジョナサン、自己紹介」


 日向の言葉に、ジョナサンが前に進み出た。このとき圭子は、彼の目が綺麗な緑色をしている事に気がついた。


(うわあ……エメラルドみたい)


 きらきらのプラチナブロンド。

 神秘的な緑の瞳。

 どこか冷たく感じさせられる、整った顔立ち。


(マジで王子さま……)


 こんな人もいるんだ~、と、ぽけっとしながら圭子は思った。


「綺麗……」


 女子の誰かが思わず、といったふうに言う。

 ジョナサンは、背筋をまっすぐに伸ばした。

 そうして、きらきらのプラチナブロンドをきらめかし、

 白い頬をわずかに紅潮させながら、唇を開いて言った。


「オッス! オラ、ジョナサン! オラ日本好きじゃ、ガハハ、ダッセエ、よろしくな!」


 …………。


 針が落ちたらその音が聞こえるのではないかというぐらい、圧倒的な沈黙がその場を支配した。


「アニメとマンガで、日本語を学んだそうだ」


 日向が言った。ジョナサンは続けた。王子さまな美貌をほんのりと色づかせ、色香を感じさせるほどの表情で、嬉々として。


「ジャパニメーション、サイコウ! ニンジャ、サムライ、オラ大好きじゃ! カ~○~ハ~メ~ハ~!」


 しぐさまで、忠実に再現していた。

 そうして王子さまなのに残念な彼は、きらきらしい笑顔を浮かべると、手を合わせ、すんなりとして美しい指を組み、両の手の人差し指だけをぴんと立てる、忍者がよくやる例の印を組んだ。

 まさか。

 教室中が緊張した。まさか。

 やるんじゃないだろうな、やるかもしれないけど、いやでもやめてくれ!

 そんな生徒たちの思いを踏みにじり、晴々とした顔で、彼は手を前につきだし、

 そして言った。


「……カ○チョー!」


 誰か彼を止めてくれ。生徒たちは切実にそう思った。



終わる。



☆★☆



 以前、イタリア人の美少女に、「オッス! オラ、クリスティーナ!(だったかな、名前忘れた)」と、挨拶されたと、どなたかが本に書いていて、それが強烈に印象に残ってました。




2010年 11月 25日活動報告「ストレス発散小説。名前はまだない。」より

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