異文化は美しく交流する。
レポート山積みです。ちょっと体調崩して横になっていたら、山になっていた。
……文字を見ると、めまいと吐き気が止まらない状態だったんだよ……。
ちょっとずつやろう。ちょっとずつ。
それでも気持ちを新たにしたり、決めた事とかあるので。まあ、何とか。立ち直れそうです。
棚をつけよう!
とかね。必要だよ、棚。
と、いう訳で、ストレス発散小説。連載中のものに取り掛かれないんで、そっちのストレスもあったりする。横になっていた間、頭の中でぐるぐる考えていたネタでもありますが……、
おバカさんな話が書きたい! の一心で出来た話です。ではどうぞ~。
☆★☆
美しい緑に囲まれたそこは、のんびりとした校風がうたい文句の、中高一貫教育が行われる私立の学校だった。
私立A花学園。
山田圭子15歳は、この学園の高等科一年D組に所属する、ごく普通の家庭で育った、平凡な少女だった。運動神経はそれなり。成績は可もなく不可もなく。自分ではちょっとは可愛いのじゃないかと思っているが、アイドルのような美人という訳でもない。
それなりで普通。
それが彼女の、自分自身に対する評価だった。それで良いと思っていたし、そんなものだとも思っていた。
毎日は、少しばかり退屈で、けれど平穏に過ぎてゆく。
そんな日々が続くのだと思っていた彼女に転機が訪れたのは、とあるニュースを友人から聞いてからだった。
「おはよ~、ケイちゃん、知ってる? 交換留学生が来るんだって!」
朝、登校して教室に入ると、友人の田原直美が近寄ってきてそう言った。
「おはよ、ナオ。交換留学生?」
「うん、うちの学園、どっかの国と姉妹校じゃない? で、時々、生徒を交換で留学させるの。うちから何人か向こうに行って、向こうから何人か来るわけ」
「へ~……」
高校からこの学園に入った圭子には、初耳だった。
「うちのクラスだったら良いね~。ハンサムな男の子だったらウレシイな☆」
「そんな小説みたいな話、あるわけないじゃない」
そう言いつつ笑っていると、チャイムの音が響いた。HRの時刻だ。慌てて自分の席につく友人を見やり、圭子も席についた。
やがて、担任の教師が入ってくる。
ざわっ。
教室内が、ざわめきで満たされた。彼に続いてもう一人、白人の少年が入ってきたからだ。
「え、ウソ!」
「おお、留学生!?」
「うちのクラスだったの?」
「いや~、カッコイイ!」
「ってか、カワイイ!」
男子生徒は珍しげに、女子生徒は興奮気味に、声を上げている。たたずむ少年はすらりとして背が高く、白っぽく見える金髪をした、いわゆる美形だった。どこかの王子様みたいだと圭子は思った。
ざわめきは収まらず、次第に大きくなってくる。担任の日向正人35歳は気にせず教壇に立ったが、ざわざわとして収まらない教え子たちの様子に苦笑した。
「日直。号令はどうした」
無精ひげの浮いた、どこかヨレた服装の彼が、だるそうに言う。慌てて今日の日直が、号令をかけた。
「あ、あ、はい、起立! 礼~!」
声が裏返っていた。
がたがたと音を立てて立ちあがった生徒たちは、礼を取ると椅子に腰かけた。その時、留学生の目がきらりと光り、頬がわずかに紅潮したのを、圭子は見たような気がした。
「出席を取るぞ~。休んでる奴はいるか~? いたらその隣のやつ、名前を言え」
面倒臭そうに言う担任に、『今日は全員出席です』と、クラス委員の太田勉が答えた。
「そうか。じゃ、お待ちかねの紹介だ。うちの姉妹校の、セント・Pター学院からの交換留学生。今年は三人がこっちに来た。
ジョナサン・マクファーリーだ。んじゃ、ジョナサン、自己紹介」
日向の言葉に、ジョナサンが前に進み出た。このとき圭子は、彼の目が綺麗な緑色をしている事に気がついた。
(うわあ……エメラルドみたい)
きらきらのプラチナブロンド。
神秘的な緑の瞳。
どこか冷たく感じさせられる、整った顔立ち。
(マジで王子さま……)
こんな人もいるんだ~、と、ぽけっとしながら圭子は思った。
「綺麗……」
女子の誰かが思わず、といったふうに言う。
ジョナサンは、背筋をまっすぐに伸ばした。
そうして、きらきらのプラチナブロンドをきらめかし、
白い頬をわずかに紅潮させながら、唇を開いて言った。
「オッス! オラ、ジョナサン! オラ日本好きじゃ、ガハハ、ダッセエ、よろしくな!」
…………。
針が落ちたらその音が聞こえるのではないかというぐらい、圧倒的な沈黙がその場を支配した。
「アニメとマンガで、日本語を学んだそうだ」
日向が言った。ジョナサンは続けた。王子さまな美貌をほんのりと色づかせ、色香を感じさせるほどの表情で、嬉々として。
「ジャパニメーション、サイコウ! ニンジャ、サムライ、オラ大好きじゃ! カ~○~ハ~メ~ハ~!」
しぐさまで、忠実に再現していた。
そうして王子さまなのに残念な彼は、きらきらしい笑顔を浮かべると、手を合わせ、すんなりとして美しい指を組み、両の手の人差し指だけをぴんと立てる、忍者がよくやる例の印を組んだ。
まさか。
教室中が緊張した。まさか。
やるんじゃないだろうな、やるかもしれないけど、いやでもやめてくれ!
そんな生徒たちの思いを踏みにじり、晴々とした顔で、彼は手を前につきだし、
そして言った。
「……カ○チョー!」
誰か彼を止めてくれ。生徒たちは切実にそう思った。
終わる。
☆★☆
以前、イタリア人の美少女に、「オッス! オラ、クリスティーナ!(だったかな、名前忘れた)」と、挨拶されたと、どなたかが本に書いていて、それが強烈に印象に残ってました。
2010年 11月 25日活動報告「ストレス発散小説。名前はまだない。」より