自給、あるんですか。(永き夜の大陸小話)
※ 「小説家になろう」登録一周年記念として、活動報告に書いたものです。
しばらく小説を書いていなかったので、書き方忘れてしまっています。
とりあえず、リハビリ中。
……おバカさんな話は、ぽろぽろ出て来るんですが。次回予告劇場とか。
前の日記にも書いた、「いきなり次回予告」のサイトを使ったお遊びで。三人のキャラクターの名前を入れ、出てきた次回予告から、ショートストーリーを書くと言う。
すごい変な話になります。
何書いてんだ私。というカンジになります。
笑えるけど。
……。
まあ、一周年だし。記念という事で。内輪ネタSSになりますが。
『永き夜の大陸キャラで、次回予告劇場』
おヒマな方のみ、どうぞ。ただし、本編のイメージが崩れても、私は責任持ちません☆
☆★☆次回予告劇場☆★☆
「新・いきなり次回予告」サイト様から。
『時給、あるんですか』
ユーラとガイリスは遊園地でデート。お化け屋敷に入った2人はとんでもない目に…!!なんとそこにはユーラの元恋人氷玉の姿が!!恐怖のあまり声もでない2人、それを嘲笑いながら見ている氷玉。次回予告「氷玉は時給710円でバイト中」「鎖骨フェチなユーラ!!」「実は30代前半のガイリス!?」この3人の運命やいかに!?来週もみてね!!
……うわ怖。コレで話書けってちょっと(汗)
やってみよう(←
ちなみに登場人物は、
ユーラ…人族、薬師の娘
氷玉(月牙伯爵)…闇魔族
ガイリス…ユーラに従う半獣族の少年
紫忌(白男爵、人間名ローク)…人間の血を引く氷玉の弟
『時給、あるんですか』
「ねえ、ガイリス。遊園地って不思議な所ね。初めて見たわ」
珍しげに周囲を見回すユーラ。
「あっ、あれは何?」
「乗り物のようですね」
「なぜカップの形なのかしら」
「お気をつけ下さい、ご主人さま。何かのまじないかもしれません。妖獣が背後にいて、乗った者の生気を吸い取って、ぐいっと飲んでしまうのかも」
遊園地のコーヒーカップに、そんな能力はない。
「でも何だか、楽しそうに乗っているわよ? 家族連れの人たちとか」
「擬態して油断を誘う妖獣もおります。ああ、あれは!」
メリーゴーランドが、くるくる回っている。
「生きた馬を細胞レベルで木質化するとは、なんと酷い! しかもそれを、見世物にするとは!」
「ええと……コレ最初から、この形に作った人形じゃないかしら……」
遊園地初心者の二人は、それでもそれなりに楽しく過ごしていた。
「まあ。これは何?」
「きゃらめるあじ、のぽっぷん? だそうです」
「美味しいわ。ほら、ガイリスも食べて」
「えっ、あっ、あのっ、……ありがとうございます(真っ赤)」
何やら初々しい。
記念のプリクラも撮り(宝物にしようとガイリスはひそかに決意した)、さて、次はどうしようと思っていると、お化け屋敷が目に入った。
「あら? 何かしら、ここ」
「よお。カップルなら入るべきだぜ、ここは!」
「あら、ローク。何してるの」
呼び込みの兄ちゃんを見て、ざあっと青ざめるガイリス。
「ひえっ! は、白だんしゃ……」
「その名を口にするな、小僧(ぎろり)」
「あああ、すみませんすみません(あわあわ)」
「ちょっと、ローク! ガイリスを怖がらせないで! それで、何をしているの?」
「ああ、すまんな(←全然済まなそうじゃない)。俺はこれでも傭兵だ。今は雇われて仕事中! そういう訳で、呼び込みをやってる!」
そんな仕事までするのか、傭兵。
「入ってくれると、ヒッジョーにありがたいッ!」
「そう? それなら入ってみましょうか……ガイリス?」
「なな何だか、すっごい嫌な予感がします……」
「え〜? 作り物だぜ、中の化けモンは。半獣なら平気だろ。なあ、お嬢ちゃん? ……? どこ見てるんだ?」
「ローク」
「あ?」
「どうしました、それ」
「あ? ああ。コレか、たいしたことない……でうわっ!?」
いきなり紫忌の胸元をがばっと広げ、鎖骨を眺めるユーラ。
「うひえ!?」
「火傷? ろくな手当てもしないで、あなたという人は!」
「いや俺、回復は人族より早いのよ、生粋の魔族ほどじゃないけど……でえっ!? 触る!? そこで触る!? よ、よせ、ちょっぴりうれしいけど、兄上に殺される〜ッ!!!」
問答無用ではだけた胸に軟膏をぐいぐい塗られ、紫忌は涙目になった。
「入るんなら入ってくれえ! そして俺を一人にして〜ッ!」
「ご主人さま……薬師として見過ごせないのはわかりますが、もうその辺で……」
「ありがとう、坊主! おまえの気遣い、年期入ってるカンジで涙出る……」
お化け屋敷の中は、薄暗かった。
「足元、お気をつけ下さい」
「ガイリスは見えてるの?」
「多少は。半獣ですので……!?」
何だ。
ものすごいプレッシャーを感じる……ッ!
「ご主人さま! 俺の後ろに!」
「えっ!? な、何……ああっ!」
バリバリバリバリ、
どっかーんっ!
「雷!?」
「きゃ…ッ!」
「ご主人さまッ!」
ざあっと走る、黒い影。悲鳴と共に、ユーラの姿が消えた。
「ご主人……ああッ!」
ガイリスは青ざめた。
「ちょっと氷玉ッ! どこ触ってるの〜ッ!!!」
ぴしゃーん!
マントを広げてユーラをさらった月牙伯爵が、胸に触ったとか触らないとかで、真っ赤になったユーラから平手打ちを受けていたからだ。
「姫。私を置いて、そこな半獣と出かけるとは……」
ぎろり。睨まれてガイリスは震え上がった。怖い。無茶苦茶怖い。
「だってあなた、太陽の出ている時間帯は、外に出られないじゃない」
「姫の為ならば、この身が焼けただれても悔いはない。一言あらば、供をした」
「燃え出すあなたを横にして、楽しく過ごせる訳がないでしょう!?」
「瑣末な事は、気にするでない」
「気になるわよ!?」
「ふ。姫は優しいな」
「普通だから私の反応は!」
そこでユーラは、はたとなった。
「待って。日中よ、今。どうして眠らないで平気なの」
氷玉は「チョー強力! 日焼け止めMAX」を取り出した。
「まあ。成分は? 何で出来ているの!?」
いきなり目を輝かせるユーラ。
「欲しいのであれば、用意させる」
「えっでも高価な薬じゃ」
氷玉は胸を張った。
「ここの『ばいと』とやらの必要経費に入っているのだ。ちなみに時給は710円だ」
……。
ガイリスは耳を塞ぎたくなった。闇魔族の誉れたる月牙伯爵が、時給ななひゃくじゅうえん……。
「働く事は大切よ。頑張ったのね」
ユーラはしかし、にこりとして言った。
「うむ。紫忌が持ってきた仕事なのだが。なかなかに興味深い」
「そうなの」
「やって来る者に、雷を落として見せれば良いだけなのでな。つまらないほどだ」
「つまらなくても、必要としている人がいるのですもの。やり遂げるのは、大切な事よ」
「うむ」
何だか良い話になっているようだ。
うなずいた氷玉だったが、次の瞬間、いきなり胸元をはだけた。鎖骨を出してくる。
「!?」
ぎゃーッ! 伯爵さま、何コートマンしてるんですかーッ!
内心叫んだガイリス。しかしユーラは動じなかった。
「どうしたの?」
「私も怪我をした」
「そうなの?」
「紫忌ばかり、ずるいではないか。薬を塗って欲しい」
なんじゃそりゃ〜! ガイリスは声に出さずに突っ込んだ。生粋の魔族が怪我なんかしたって、一瞬で治ってるでしょうが〜ッ!
「どこ?」
しかしユーラは真剣な顔でのぞきこんでいる。騙されてる! 騙されてます、ご主人さま!
「暗くてわからないわ……」
「案ずるな。われらは回復力が強い。ただ、そなたの手で触れて欲しいだけだ」
「触ると痛いでしょう? ああ、そんな顔しないで。軟膏の残りがあるから」
「それで良い」
だから騙されてますってば、ご主人さま!
「だ、」
「まあ、あれだ。気にすんな」
ぽんと肩を叩かれ、振り向くと紫忌がいた。
「男爵さま」
「気にするだけ負けだ。ハゲるぞ。あれはあーゆーモンなんだと思っとけ」
「……そうですね」
ガイリスは深いため息をついた。
「バカップルにツッコミ入れても虚しいだけですものね……」
「すげえしみじみ言ったな。哀愁漂ってんぞ」
「ふふふ。ご主人さまはわが道を行かれるし、伯爵さまは俺様だし、間に挟まれた俺は、俺は、神経擦り減らすのが日常なんですよッ。今日は、今日だけは気楽に過ごせると思ったのに……」
ああ、でも俺には、このプリクラがある。うなだれてそうつぶやくガイリスに、まるで悲哀に満ちた中間管理職のようだと紫忌は思った。疲れて仕事から帰ってきて、一人でぽそぽそご飯を食べる、リーマンのお父さんのようだ。
とりあえず、生鎖骨を触ってもらって、氷玉は満足したらしい。バイト代から、記念キーホルダーやら、イチゴ味のチュロスやらを購入し、満足そうにユーラに貢いでいた。
一日限りだったえらいイケメンと、めちゃめちゃリアルな雷の演出は、その遊園地でその後、伝説になったという。
Fin.
2009年11月19日活動報告「リハビリ。一周年記念SS」より。