BLに挑戦。(妖精たちのいるところキャラ)
煮詰まりました。
妙なギャグばかり出て来るのに、本編進まない。
そういう訳で、(どういう訳)BLに挑戦してみました。ただし、ゆずはらの書く物ですので、あんまり期待しないように。
『妖精たちのいるところ』キャラでBLに挑戦。
サブタイトル、「桂まゆさんデビュー良かったね記念SS」
……こんなのデビュー記念にもらっても、あんまりうれしくないかも。
登場人物
瀬尾隆志
トリスタン
触手
☆★☆
隆志は眉間に皺を寄せ、目の前でうごめく、ぬるつく群を見下ろした。
触手だ。
どう見ても触手だ。それが山ほどいる。
穏やかな日差しと緑美しい妖精郷に、それは恐ろしく不似合いに見えた。
「ってかこれ、どうしろって言うんだ」
「私の配置もよくわからないね」
トリスタンがにこやかに言った。白い妖精の騎士は、隆志と触手を見比べた。
「鬼畜、という役所らしいが。私の役はただ、君達を見ているだけのようだ」
「見てるだけ?」
「そうらしい。見るより、する方が楽しいと思うのだがね」
「するって何を……や、良いから。言わなくて。で、何なのコレ。俺は何すりゃ良いわけ」
「そこの触手と戯れれば良いらしい」
「戯れって……」
うねうねにょろにょろずるずる。
何かを期待するように、触手が一斉に震えた。隆志の眉間の皺が深くなる。
「ヤなんだけど」
「君が動かないと、話が終わらないよ」
「見てれば良いだけの奴は、楽で良いよな」
「私もそう思うよ。何なら、私と逃避行するかね? せっかく出て来たそれには悪いが」
「悪いなんて、微塵も思ってないくせに白々しい。放置して大丈夫なのか、これ。って言うか、何なの、こいつ」
「人の想念が凝った物さ。主に女性」
隆志が沈黙した。次の瞬間、愕然とした風に叫ぶ。
「女の子がこんなモン、何で想像するの!?」
おそらく、腐のつく女性たちの物であろう。しかし女性に何やら夢を抱いている隆志には、衝撃が大きかったらしい。
「はあ。まあ良いけど。でもさ、逃げられるの? なんか俺、ロックオンされてるっぽいんだけど」
触手は明らかに、隆志に狙いを定めていた。隆志が右に動けば右に、左に動けば左に、一斉にうぞうぞとうごめく。
「この想念が生まれた目的は君だからね。ああ、大丈夫。放置しても別の誰かを区別なく襲うだけで、満足したら消えるよ」
「それじゃ、逃げられないだろ!」
うがーっと叫んで髪を掻きむしると、隆志は顔を上げた。
「俺が相手してやりゃ良いんだな……ああもう仕方ない」
「相手をしてやるのかい」
「うん、もう良いや。考えるのめんどくさい」
そう言うと躊躇なく、ずかずか触手の群の中に歩を進める。
どかっ。
ぎゅむっ。
べしっ。
思いきり蹴飛ばし、踏み付けながら。
「容赦がないねえ……」
「コレに容赦する必要があるか」
どかっ!
押し寄せた触手を回し蹴りで地に這わせると、口の端を上げ、不敵な表情で隆志は言った。
「相手してやるとは言ったがな。優しくしてやるなんて言ってないぜ」
その瞬間。
ぶるぶるぶるぶるっ!
触手の群が一斉に震えた。
「何?」
「あ〜あ。スイッチ押しちゃったよ、君」
なぜか頬を染め、トリスタンが言った。
「は? スイッチ?」
「わからなくて良いから。がんばってね」
「え……うおわっ!」
いきなり勢いを増して押し寄せ出した触手を、隆志は蹴り倒し、踏み付けた。げしげし踏み付け、踏み付け、踏み付ける。勢いは良いのになぜか、触手たちは呆気なく倒される。
倒されてもまた起き上がり、踏まれに行くのだが。
「まだ来るかっ!」
どかっっ!
「しつこいんだよっ!」
がしがしっ!
「寄るな触るな気持ち悪ィィィィィッ!」
どけぐしゃがしっっ!
蹴倒され、踏み付けられ、罵倒されて触手は、ふるふると震えた。
「がんばれー」
生温い笑みを浮かべてトリスタンが言う。ぜえぜえと荒い息をつきつつ、振り向いた隆志は、ぎっと睨み付けて叫んだ。
「がんばりたくないわ、こいつら、Mかーッッッ!」
叫ばれ、隆志の足の下で触手が震えた。心なしか、恍惚としているようだ。
「だからさっき、スイッチ入ったって言っただろう? さっきの微笑がやっぱりねえ。色っぽくて」
「俺に色気なんかあるかーッ!」
「え〜? あるよ。私でもドキドキしたもの。免疫ないお嬢さんがたには、衝撃だったと思うよ」
「何の衝撃!? 何の!?」
「蔑む眼差しに冷笑。優しくしてやれない、なんてセリフ言われたらもう……お願い、もっと蔑んで〜! って言いたくなるよ」
「おまえらの趣味に巻き込むなッ! 俺はノーマルだーッッッ!」
げしげしげし。
悶える触手。踏み付ける美青年。眺める鬼畜設定らしい、妖精騎士。
「なんで俺の周りはMばっかりっ! 寄るなって言ってるだろ、馬鹿触手ッ! 何が楽しいんだ貴様らーッッッ!」
「君の資質の問題じゃないかね」
もう嫌だーッ! と泣きながら踏み付け続ける隆志に、トリスタンはぼそりと言った。だって君、なにげに女王様気質だし。
「まあ、あれだ。足の裏には、ツボがたくさんあるらしいし」
「青竹踏みかいっ!?」
「体には良いのではないかね?」
「精神には大打撃だよ! 自発的に踏まれに来る青竹の群だぞ、しかも喜ぶんだぞ、踏むと!」
確かにあまり、見たいと思うような物ではない。
トリスタンはちょっと、首をかしげた。
そして、言った。
「ファイト〜」
「それだけか!?」
何気に鬼畜である。方向性がちょっと違っているが。
「そういう奴だよおまえは! だあもう、寄るんじゃない泣くぞ俺はああああああッ!」
げしげしげし。
「平和だねえ」
トリスタンは微笑んだ。妖精郷はとりあえず、今日も平和だ。
fin.
※禁断の、触手受け。
そういう訳で! 桂まゆさん電子書籍デビューおめでとう(^O^)/
存在意義が健康サンダルな触手ですが、もらって下さい!
2009年12月18日活動報告「突発小話。BLに挑戦。~桂まゆさんに捧ぐ」より