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古民家カフェとVライバー 一ヶ原小春のさくら日和  作者: 優貴(Yukky)


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4/18

第3話 「雨の日の、さくら色マカロン」

桜が、少しずつ散りはじめた頃。

朝から空はどんよりしていた。

「……雨、ですね」

小春は窓を見上げる。

公園の桜は、濡れて少し色が濃くなっている。

ぽつ、ぽつ、と屋根を叩く音。

今日はきっと、静かな一日になる。

午前10時。

開店。

「いらっしゃいませ……」

声は出したけれど、店内はしんと静まり返っている。

雨の日は、公園に人がいない。

つまり、流れで入ってくるお客さんもいない。

「こういう日も、ありますよね」

自分に言い聞かせる。

でも、胸の奥は少しだけ重い。

厨房で新作を試作する。

「雨の日限定メニュー……どうでしょう」

桜パウダーを混ぜた、さくら色のマカロン。

ほんのり塩味をきかせたホワイトチョコガナッシュを挟む。

ころん、と小さくて可愛い。

「……うん、可愛い」

味見をして、少し笑う。

甘いだけじゃない、優しい味。

午後2時。

からん、と鈴が鳴った。

「やってますか……?」

ずぶ濡れの男の子。高校生くらい。

小春は慌ててタオルを差し出す。

「もちろんです。どうぞ……!」

彼は少し恥ずかしそうに座る。

「配信、見てます」

小春の目が丸くなる。

「雨で部活なくなって……帰り道で、寄ってみようかなって」

その一言で、胸の重さがふっと軽くなる。

「今日は、雨の日限定でマカロンがあります」

「限定……?」

「はい。まだ、誰も食べてません」

少し照れながら差し出す。

男の子は一口食べて、目を見開く。

「……うま」

その小さな声に、小春の心が跳ねる。

「ほんとですか?」

「甘すぎなくて、好きです」

それだけで十分だった。

夕方。

雨はまだ降り続いている。

店内には、その男の子一人。

でも、寂しさはなかった。

彼は静かに勉強をし、

ときどき桜を見て、

小さく笑う。

帰り際。

「また、雨の日に来ます」

小春はふわっと笑う。

「じゃあ、また限定メニュー考えますね」

その夜の配信。

背景には、雨に濡れた夜桜。

「今日はね、雨の日限定マカロンを作りました」

コメントが流れる。

《食べたい!》

《雨配信エモい》

《静かなのも好き》

小春は少しだけ誇らしい気持ちになる。

「満席じゃなくても……いいのかもしれません」

ぽつりとつぶやく。

「一人でも、誰かの居場所になれたなら」

雨音が、優しく響く。

桜は散っても、

想いは散らない。

小春のカフェは、

晴れの日も、雨の日も、少しずつ育っていく。

そして、次の季節へ――。

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