09
「兄貴兄貴!見て下さい!俺も羽が生えたんすよ!」
「俺は角が生えたっす!」
仲間達が少しづつ強くなっていく。
「おお、すげぇじゃねえか」
「えへへ、これで兄貴に少しでも近付けてたらいいんすけどね」
「まぁ俺は特別みたいだから追い付くのは無理かもしれねぇけど、少しづつ力を付けな」
俺がこいつ等と違って特別なのはこいつ等を導くためだと感じ始めていた。
「主のためっすね!」
「そうだ。ああ、お前等あんまり獣を狩り過ぎるんじゃねぇぞ」
「なんでです?」
「倒さねぇと力尽かないじゃないっすか」
「倒し過ぎて居なくなったらどうすんだよ」
「「「「「あ・・・・・」」」」」
「まぁそう言うこった。確実に力を付けるにゃ頭も使わんとな」
「「「「「おお~」」」」」
「流石兄貴だ。俺達とは格が違うぜ」
そんな時だった、地面が微かに揺れているのを感じて立ち上がった。
「兄貴如何したんで?」
「・・・・・お前等、行くぞ」
「へ?何処にっすか?」
「主が来るのを待つんじゃ?」
「ああ、多分来た・・・俺達の主が、恩人がその姿を見せる時がな」
「ほ、本当っすか?!」
「じゃ、じゃあ急がないと!」
「何処っすか?!兄貴!何処に現れるんで?!」
「上だ、多分この山の上に現れる。行くぞお前等!俺達の主に挨拶しに行くぞ!」
「「「「「おおおぉぉぉぉぉ!!」」」」」
物凄い速度で地面の中を移動するなんて芸当は俺にだって無理だ。ならば俺を、俺達を超えた存在、即ち俺達の主に違いないと、仲間達と共に頂を目指して移動を始めた。
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赤竜殿を見送り東西への支援物資の振り分けを再開し、部隊の振り分けも終わりいざ出発と言う直前に一人の部下が不吉な台詞を吐いた。
「・・・あの、団長・・・・・」
「ん?どうした?」
「その・・・彼等は、赤竜殿は縄張りを見回ると言っておりましたが、もしかしなくても聖王騎士団とぶつかるのではないでしょうか・・・・・」
正直言って何故そこに気が付かなかったのか自分でも解らない。聖王は魔王討伐が最優先事項だと言っていたではないか。
「・・・・・うっ・・・わ、私は先行して聖王騎士団を止める!他の者も可能な限り急いでくれ!」
「「「「「は、はい!」」」」」
万が一にも彼等が争う事になれば帝国全土が、いや、大陸全てが焦土と化しても不思議ではないと、愛馬に鞭を振るい西の村へと向かった。
すまん・・・碌に休ませてやれない所か無理をさせる事になってしまった・・・だが今はお前しか頼れるものがおらんのだ・・・・・
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行き成り物凄い勢いで動き出して驚いたが、直ぐに慣れて落ち着いた。まぁ、身動き出来ないのは変わらないんだけど。
多分だけど今まで使っていた麓の出入口は発見される可能性が高いから塞いでしまって、不便にはなるけど上の方に出入口を作り直したんだと思う。
「・・・それにしても、グりむさんのどのへンに出るかくらいは書いとイてほしかったナぁ・・・・・」
グリム山の上の方には結構強い獣とか魔物が出るとか皆から聞いていたし、装備の殆どが出来てない現状で襲われたら勝てる可能性はかなり低いと思う。尤も自動修復機能が作動するから、そんな簡単に破壊される事は無いだろうけど。
まぁ皆の事だから行き成り俺が窮地に陥るような事が無いように柵とか壁か何かで囲って安全は確保してあるだろうし大丈夫だろ。
なんて楽観視してた数十分前の俺を殴ってやりたい出来事が起こった訳だが。
上昇する速度が徐々に緩やかになって行く。そしてガタンと音がして止まり、ガチャンと音がして部屋が落下しないように固定されたであろう直後に腰の固定具が外れて自由になった。
「・・・・・もういッかいすわったラけんきゅう所にもどるんだよね?まぁせっかく外に出られるみたイだし?きぶんてンかんにちょっと外のクうきでもすおうかナ・・・こきゅうはしてナいけど」
椅子から立ち上がって入口へと向かい、戴して考えもせず取っ手に手を掛けて何気なく扉を開いて直ぐに閉じた。
「・・・・・みまちがイだよね・・・そうそう、みまちがイみまちがイ・・・・・」
そうだよドラゴンとか空想上の生物だって所長も言ってたし、羽の生えた虎とか獅子?なんて聞いた事もないし?黄色くて猪位の大きさの兎とか一つ目で角の生えた狒々?なんて居る訳がない。
他にも沢山いたような?気もしたが、多分起きてから色々起こり過ぎて精神的な疲労で幻覚でも見たんだろうと深呼吸をしてもう一度扉を開けて後悔した。
居る。確かに目の前に居た。無数の、数え切れない夥しい数の怪物達が爛々と目を輝かせ口角を上げて此方を、俺を凝視していた。
そして、その先頭に立つ赤と白の二頭のドラゴンが同時に口を開いた瞬間に―――
あ・・・俺、喰われるんだ―――
俺は意識を手放し、ガシャンと大きな音を立ててその場に昏倒した。
主殿おおぉぉぉ―――
薄れゆく意識の中、大勢の叫び声が聞こえた気がした―――
ここまで読んで頂き有難う御座いました。




