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審判の実  作者: 葉月 涼
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08

 帝都各地から送られてきた報告書に目を通している時にふと思い出し呟いた。


「・・・本来ならば記念式典を執り行っていたのだったな・・・・・」


「そう・・・でしたね・・・・・」

「帝都民も楽しみにしていたでしょうに・・・・・」


 私の呟きに大臣達が悲痛な顔をして答えて行く。


「・・・む・・・そう言えば各家庭に配る予定だった酒は如何なっている?」


 確か記念祭の一週間後から順次各家庭に小樽を送る事になっていた筈だ。


「あっ!頼んでいた商会に止めるように言いませんと」

「流石に『祝』と焼き印の押された樽を届けるのは不謹慎過ぎますし」

「暴動が起きかねませんし、直ぐにでも止めませんと!」

「誰か直ぐに連絡を!」


 大臣達も思い出し、直ぐに止めるように使用人に告げたが私はそれを止めた。


「待て!そう急がんでよい」


「なっ!」

「へ、陛下何故・・・・・」

「暴徒と化した帝都民が城に押しかけてきてもおかしくありませんぞ!?」


「まぁ聞け、通達は出す。が、配送は復興が一段落した後だ」


「おお・・・帝国再建の証としてですか・・・・・」

「成程・・・それならば民達も喜びましょう」


「いや、そうではない・・・民を虐げた聖王を糾弾し求心力を削ぎ追い落とす!そして年号を皇帝歴から帝王歴へと変え、真の意味でのグランバート帝国へと生まれ変わった証とするのだ!!」


「なっ!なんと!?」


「クライブへ密偵を送れ!魔王の、いや・・・グリム山を統べる存在を確認次第会談を申し込むぞ!!」


「「「「「えええぇぇぇ!?」」」」」


 困惑する大臣達を説得し、諸々の懸案を話し合い一日を終えた。


 筈だった―――


「陛下、寝室の片付けをしておりました所このような物が・・・・・」


 震災で一番被害の大きかった寝室を片付けていた使用人から一冊の本を手渡され頭を抱える事になった。


「・・・この事は他言無用だ・・・解るな?」


「は、はい!勿論で御座います!」


 壊れた壁の中に隠されていたこの本の著者は初代帝王。そして本の内容は建国の際に犯した罪の告白だった。

 この内容が明るみになった時、王家の信用は地に落ちるだろう。


 聖王・・・貴様と王家は一蓮托生と言う訳か―――


*


*


*


 簡易拠点を作り終え補給部隊が合流して物資を分けている時の事だった。

 馬達が一斉に暴れ出し、北の森から草を搔き分けて近付いてくる音が聞こえ何事かと腰の剣に手を掛け身構えて誰何の声を上げた。


「何者・・・だああぁぁぁああぁぁあぁぁぁ?!」


 直後に現れた存在を目にして後半は悲鳴のような裏返った声に変わってしまった上に取り乱してしまった。

 まぁそれも仕方のない事だと思う。何故なら空想上の生物とされるドラゴンを筆頭に見た事も聞いた事も無いような魔物達が数え切れない程現れたのだから。


 ああ、私の周囲に居た部下達は腰を抜かしたり気絶をしてしまったので変な声だけで済んだ私はまだましな方だと思う。


「む、どうやら驚かせてしまったようで済まない。悪意あっての事ではないので如何か許して欲しい」


 先頭に立つ赤黒いドラゴンが軽く頭を下げて見た目に反した丁寧な口調で謝罪をしてきて呆気に取られてしまい暫く固まってしまった。


「我々はそこに見えるの山とその周囲を縄張りとするものだ。この先は其方等の縄張りだと言うのならば我々はこの先に進む気は無い。お互いの縄張りを明確にし、無駄な争いの無いようにするのが目的なのだが、そちらの代表は何方であろうか?」


 なんだこれ?縄張り?争いの無い?代表・・・・・


 驚きのあまり彼?の台詞を理解するのにどれだけ時間が掛かっただろうか。


「・・・・・え、あ・・・し、失礼した・・・い、今ここに居る部隊の責任者は私になりますが・・・あ~・・・縄張り・・・縄張り~・・・ああっ!この周辺を治めているのは私の主になりますが、会談の申し込みと言う事で宜しいか?」


 会談の申し込みだとしてもこの連中を帝都に連れて行く訳にはいかんよなぁ・・・如何したものか・・・・・


「おおっ!我も其方と同じくこの者等の代表でな、主はまだ現れてはおらんが別に居るのだ。主が現れ次第連絡を取る故、其方の主と話が出来るか問い合わせておいて貰えぬだろうか」


 主が現れて無いとは如何言う・・・・・いや、まてよ・・・彼等の、魔物達の主と言う事はだ・・・もしかしなくても魔王なのでは?!


「・・・・・そ、その・・・あ~・・・と、取り敢えず主には伝えておきます・・・あ、重ねて失礼した、私の名はクライブ・バルドレン。主の名はマルクス・グランバートと申します。宜しければ貴殿の名をお聞かせ願いたい」


「む・・・済まぬ、我等には名は無いのだ。ここに居る皆には赤竜の旦那と呼ばれている故、取り敢えず赤竜と呼んでくれ」


「では赤竜殿と呼ばせて頂きますので、私の事も気軽にクライブとお呼び下さい」


「うむ。ではクライブ殿、我等は縄張りの見回りをするのでまた後日。皆の者失礼するぞ」


「「「「「へい!クライブ殿、失礼します!」」」」」


「はい・・・あ・・・そ、総員敬礼!」


「「「「「ハッ!」」」」」


 聖王の言っていた魔物が山を下りて来ると言うのは間違ってはいなかった。だが、赤竜殿は言っていた『主はまだ現れてはいない』と。

 それが真実だとすると『魔王が生まれた』と言う聖王の言は間違っている、或いは嘘を吐いていると言う事になるが・・・・・


「何にしても陛下に報告をせねばな・・・誰か!急ぎ陛下に報告を~・・・・・おい!貴様等何時まで転がっている気だ!!帝王騎士団とあろう者が何たる為体だ、恥を知れ!恥を!!」


「「「「「も、申し訳ありません!」」」」」


 部下達に活を入れ、溜息を一つ付いて伝令を出した。


 陛下、冷静な判断を願います・・・あれは・・・いや、彼等は騎士や魔法使い如きが叶う相手では御座いません・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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