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審判の実  作者: 葉月 涼
7/15

07

 おそるおそる扉を開けて隙間から室内を覗き込んだ。


「・・・・・なんかずィぶんかんそなへやだナ」


 だだっ広い部屋の中央にちょっと大きめで背凭れに魔法陣が書かれた金属製の椅子が置いてあるだけの部屋だった。


「なんダろう・・・つくりかけだッたとかかナ?」


 室内へと入り中央の椅子へと向かい椅子を調べてみたが、書かれている魔法陣は魔力を供給するための物でそれ以外の事は何も解らなかった。


「う~ん・・・いすナんだし、すわってまりょくをナがせばわかるかナ?」


 研究所内だし、危険な物じゃないだろうと椅子に座って魔力を流すと魔導核が反応して全身に刻まれた魔力回路を魔力の光が走った。


「えっ?!ナにこれ?!ちょっ!うごけナあああァぁぁああぁァぁあぁぁぁ・・・!!」


 魔力を流すと椅子から固定具が飛び出し腰を完全に固定され、状況を理解する間も無く椅子と言うか部屋ごと?物凄い速度で上昇して行った。


*


*


*


 部下十人を町に残して聖王騎士団の後に付いて北へと向かう。残してきた部下達には町の復旧支援とここを補給部隊の拠点にするように告げた。


 当然聖王達には反対されたが後方支援には中継地点は必須だと説いて認めさせた。まぁ散々嫌味を言われたが。


 聖王達との押し問答で多少は休めたが馬の限界が近い。この先の分かれ道で休憩を進言するつもりだ。


 おそらくはまた揉めるだろう。だが馬を潰してしまえば移動もままならなくなる。最悪彼等と別行動になるとしてもこれ以上の無理は出来ない。


「またですか、今の私達には貴方達の我儘を聞いている暇は無いと言っておいた筈ですが?」


「では東西のどちらに向かうつもりです?東西に二つづつある村の何処を拠点にするのかも聞かされていませんし、何処の村が襲われるのか、それとも全てが襲われるのかも分からない状況で無暗に移動し手遅れになるならばここに簡易な拠点を築き偵察を出すか東西半々に分散すべきだと思いますが?」


「で、東西に分け更に村ごとに分けると?」


「当然そうなります」


「・・・・・もういいです。貴方達は居ないものとして扱います。まったく、何のための緊急事態条項なのだか・・・・・」


「先程も申し上げましたが、全ての国民のための緊急事態条項ですが?」


「フン!好きになさい。私達は西へ向かい、次の村を拠点に御山へと向かいます。補給物資をそこに集めておくように」


「は?たった今我々は居ない者として扱うと仰いましたよね?全ての物資は四つの村に均等に分配致します。と言いますか、聖王騎士団は遠距離行軍をするのに補給部隊を御用意していないのですか?信者の方々から大量の御寄付が御座いますよね?帝王陛下はこう言った災害に備えて全ての国民が半年は食い繋げるだけの備蓄をしておりますが・・・聖下はしておられないので?」


 言われっぱなしなのは癪なので嫌味たっぷりに言い返してやるとアルベルトが私と聖王の間に割って入り捲し立てて来た。


「貴様あ!いい加減にしろ!聖下に対して不敬であろうが!!」


「私は相手が帝王陛下であっても言うべき事は言っておりますが?貴方こそ側近であるならば、言いなりになるのではなく最低限の意見具申はするべきかと」


「貴様・・・死にたいらしいな・・・・・」


 アルベルトが腰の剣に手を掛けると聖王がアルベルトの肩に手を掛けて止めた。


 まぁ単なる脅しでしかない事は理解している。私に斬りかかればたった三百人しか居ない聖王騎士団と一万に届く帝王騎士団が争う事になるのだから。


「そこまでにしておきなさい。私達には下らぬ議論で時間を無駄にしている暇は無いのです。行きますよ、アルベルト」


「ハッ!総員転進、進路西へ!」


 走り去る聖王騎士団を見送りながら鼻を鳴らし部下達に命令を出した。


「総員十五分の休息を取れ。その後はここに簡易拠点を築き、補給部隊の到着を待って東西に分かれる」


「「「「「ハッ!」」」」」


*


*


*


「兄貴兄貴!飯持って来やしたぜ!」

「白竜の兄貴!こいつは昨日のよりずっと美味かったぞ!」

「兄貴にも食って欲しくて捕って来たんだ!」


 あの日、自分を自分と認識した日から俺に仲間が出来た。


「ん~・・・俺はいいからお前等で食いな」


「・・・兄貴、そう言って皆に配っちまって何も食ってねぇじゃん・・・・・」

「俺達兄貴が心配なんだよ・・・・・」

「ずっとそうして横になったままじゃん・・・具合悪いんじゃないのか?」


 仲間思いの優しい奴等だ。唯の獣だった頃には感じた事の無いこの暖かな感覚を何と表現したらいいのだろう。


「心配いらねぇよ。俺はお前等と違って飯を食わなくても腹は減らんし死にもしねぇ」


「そ、そうなのか?」

「本当か?俺等のために我慢してるんじゃねぇのか?」


「ああ、俺を慕ってくれるお前等に嘘なんか吐かねぇよ。こうして横になっているのはな、力を溜めてるんだ」


「力を溜める?」

「何のために?」


「近い内に現れる俺達の主のためにさ」


「あるじ・・・・・」

「俺達の・・・・・」

「俺達に自我と力を与えてくれた・・・・・」


「そうだ・・・俺達は俺達を獣から別の生物に変えて下さったお方に恩を返さなきゃいけねぇ。だからその時が来るまで力を溜めておくのさ」


「おお~」

「成程」

「流石白竜の兄貴だ!俺には思いつかなかったぜ!」


「ま、お前等は俺と違って食わなきゃ生きていけねぇんだ、気にせずたらふく食え、そして―――」


「「「「「力を溜める!」」」」」

「「「「「主のために!」」」」」


 ああ、そうか―――


 この暖かく切ない気持ちは〝幸福〟だ―――


 有難う主よ―――

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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