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審判の実  作者: 葉月 涼
6/15

06

 山を下り麓の森の中を進んで行くと幾度も獣に襲われ、その度に倒し喰らいつつ更に進んで行った。


 夜を越え、森の切れ間が見えて来た時、我の前を飛ぶ羽の生えた緑色の虎が振り向きながら問いかけて来た。


「赤竜のダンナ、今迄みたいに襲われたら殺っちまっていいんですよね?」


 何故か知らぬが皆が我を旦那と呼ぶのだが、まあそれはよい。


「・・・いや、言葉が通じる相手ならば可能な限り対話をするつもりだ」


「「「「「えっ?!」」」」」


 我の回答に全員が驚き、足を止めて視線を向けた。


「ふむ・・・それ程に不思議か?」


「そ、そりゃまぁ・・・なあ」

「ああ・・・旦那の下に集わなかった時点で主以外は全て敵だって思ってたしなあ」

「俺もそう思ってた」


 我が元に集った五百近い者達は皆同じ考えだったようだ。これはきっちり話をしておかんといかんな。


「よいか、我等が目的は飽くまでも主が現れるであろう山とその麓の森、つまり我々の縄張りを護る事だ」


「そりゃそうですけど」

「ああ、でも対話なんて出来る相手がいるんですかね?」


「いる。皆気配を探ってみよ、この先に百近い者が集っているのを感じる筈だ」


「おっ・・・・・」

「た、確かに・・・・・」

「流石旦那だ。で、何で対話を?」

「戦っちゃいけねぇ理由って奴を聞かせて頂けるんで?」


「勿論だ。よいか、相手の数や戦闘力が未知数なのも有るが、我々の行動が主の不利になるような事が有ってはならんのだ」


「む、確かにダンナの言う通りだ」

「そおっすね、この先はあいつ等の縄張りって事ですもんね」

「こっちから攻め込んじまったらやり返されても文句は言えねぇしなぁ」

「だな。そんな事になったら主に面目がたたねぇ」


「うむ。理解してくれたようで何よりだ。よいな、余程の事が無い限り手は出さぬように。対話は代表者たる我が行う故、其方等は我の後ろに控えているのだぞ」


「「「「「へい!」」」」」

「「「「「解りやした!」」」」」


 説明を終え、全員が理解した事を確認し前へと進み始めると、正面に居た者達が左右に除け我に道を開けた。


 さて、強者は居らぬようだが何が有るか解らぬ。気を引き締めて臨むとしよう。


*


*


*


 只管金属を加工しては部品を作り、魔導回路を刻み込んでは組み上げて行った。


「・・・あとはこレをひだりうデとかたに・・・・・よシ!って、かナりかかったのにたてだけかヨ・・・・・」


 体感で一晩以上?時計が止まっていて正確な時間が解らない上に身体的には疲労も感じないからどれだけ掛かったのかすら解らない。


「・・・つってモせいしんてキにはひろうすルんだよナぁ・・・・・」


 ぶつぶつと独り言を溢しつつ、次は右手に装着する武器にでも取り掛かろうかと設計図を見上げると一瞬視界がちらついた。


「ぉ・・・・・さすがにスこしやすンだほうがいいかナ?」


 そう言えばまだ自室に行って無いし、もしかしたら皆からの手紙とかが有るかもと、息抜きも兼ねて休憩を取る事にした。


 鍛冶場を出て工房を抜け、廊下を進み所長の部屋の前で「とびらヲこわしちゃってすみませン」と謝罪して―――


「・・・・・なンだこりゃ?」


 一番奥の筈の自室の隣に何故か扉が付いていて首を傾げた。


 鍵は掛かっていないようだが開けちゃっていいのかと少し考えてから、どうせ俺しか居ないんだしと開ける事にした。


*


*


*


 震災から三日目となった午後、大臣達と会議を行っていた。


「炊き出しの方はどうだ?混乱は起こっておらんか?」


「衛士隊からの報告では多少のいざこざは有る物の大きな争いには発展してはいないとの事です」


 防衛大臣からの報告を聞いて一山超えたと内心胸を撫で下ろした。


「そうか、後は各町村の被害状況が上がって来ない事には動きようも無いか・・・・・」


「現在全ての町村への支援物資は騎士団が中心となって準備中ですが・・・・・」


「人手が足らん・・・か・・・・・」


「はい・・・申し訳ありません・・・・・」


「仕方ない、運搬と護衛には商業組合と冒険者組合に協力を要請せよ」


「かなり足元を見られそうですが宜しいので?」


「馬鹿もん!今ここで出し渋ってどうする!金なんぞ復旧が済めば返って来るであろうが!!」


 財務大臣の余計な一言でつい感情的になり声を荒げてしまった。私も疲れで感情の制御が出来なくなってきているのかもしれん。


「は、はい!申し訳ありませんでした!」


 こ奴等は国が如何言う物なのか理解しておらんのではないか?


「よいか、民が減れば税が減る。国の運営には民の理解が無くてはならん。我々施政者は民からの信用をなくせば立ち行かなくなるのだと心に刻め。私を含め、其方等も農家の真似事が出来るとでも言うのか?」


 俯く大臣達に溜息を吐き書類に目をやると、入り口の扉が開いた。


「陛下、騎士団長より伝令が参っておりますが如何致しましょうか?」


「うむ、直ぐに通せ」


 あ奴からの伝令ならば今一番欲しい情報に決まっておると中に入れるように衛兵に伝えた。


「・・・会議中失礼します・・・・・火急に付きお見苦しい姿をご容赦下さい・・・・・」


 そう言って入って来た伝令を見て会議室いた全員が息を飲んだ。

 何故なら彼の血色はとても悪く頭髪も乱れており、出動時には着ていた筈の鎧等も身に着けてはおらず、全身汗と泥に塗れていたのだから驚かない筈がない。


「そ、其方、一体何が有ったと言うのだ?!あ、いや、責めている訳ではないぞ・・・うむ、取り敢えず其方に問題が無いと言うのであれば報告を頼む」


「お心遣い感謝致します・・・では、報告致します・・・・・」


 そして彼からの報告を聞いた我々は憤怒の表情へと変わり一丸となって復興に全力で取り組む事となった。


 聖王め、一段落したら目にもの見せてくれるわ。


 ああ、伝令の彼には二日間の休暇を与えた。まさか震災当日から一睡もしていない上に馬を潰す訳にはいかないと途中で会った補給部隊に武具と共に預けて走って来たとは思わなかった・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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